2017.11.21一緒に。もっと、

子犬の遊びとすくすく育つの関係

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文と写真:藤田りか子

日本に多いビビリ犬?

何があっても動じない大胆で適応力を持つ犬がいる一方で、すぐに怖がる「ビビリな犬」というのもいます。ただしビビリと一言に言っても、環境に対するビビリ、そして社会的なビビリがあります。例えば新しい場所に来ると、毎回それを苦痛に思う犬が前者に当たります。環境ビビリ犬は、周囲になかなか適応できず、何か起こるのではないかと常にビクつくのが特徴です。一方社会的ビビリ犬というのは、対人、あるいは対犬に対する恐怖感を抱く性格の犬のことです。この性格は遺伝も大いに関わっています。

ビビリ犬の話をするのは他でもない、私が住むスウェーデンから久しぶりに日本を訪れた時に 、なんとも怖がり屋さんの犬をよく見かけるのだろう!と驚いたからです。 もっとも 社会的ビビリ犬というのはスウェーデンでもたまに見かけるものですが、日本の犬の中には、両方のビビリを兼ね備えた犬が珍しくありませんでした。スウェーデンでの状況との明らかな違いに、改めて「何でだろう?」と少し考えてみました。

子犬時代の大事な遊びが欠けている

もちろん統計を取ったわけではなく、あくまでも私の推論に基づくものであることをご了承くださればと思います。血統犬種の家庭犬に限れば、一つ考えられるのは、犬たちの子犬時代の過ごし方にあるのではないかということです。ブリーダーから直接子犬を得るのがほぼ当たり前であるスウェーデンの 犬文化と異なり、日本では多くの人がペットショップで犬を求めます。この違いが、のちの犬の性格やその行動の違いを生んでいるのではないか、と私は睨んでいます。店で売られる場合、子犬は早くから親犬や兄弟から離されます。のみならず店にやってきたら、大抵一人ぼっちでペットショップのショーケースに入って新しい飼い主の出会いを待ちます。

遊びが安定した気質を作る

実はこのときに子犬はその成長の中で多くのものを失います。兄弟や母犬と過ごす時間、そしてその中で繰り広げられる「遊び」の機会です。特に社会化期以降(生後3週目以降)における犬同士の遊びというのは、運動神経を作り上げるなど脳の成長そしてその神経回路を作る上で大事な機能を果たします。

アメリカの進化生態学の教授でもあり動物行動学研究者、特に動物の遊びについての研究で有名なマーク・ベーコフは、

「社会的な遊び、身体的コンタクトを伴う喧嘩遊びは、子犬の脳のあらゆる部位の正常な発達になくてはならないものであり、そのおかげで犬は成犬になった際、たとえ今まで経験したことがない新しいものを見たり聞いたりしても、過剰に反応してストレスに陥ることなく、落ち着いて臨機応変に対処することができるようになる」

と「犬の遊びの恩恵」というエッセイで述べています。遊ぶことで 運動神経が鍛えられるのは言うまでもないことですが、精神面でもそれほど幼犬の成長に影響を与えるものなのですね。ペットショップにいる 時間は人間の時計の尺度にしてみればほんの僅かな期間かもしれません。が、一生が人間の8分の一ぐらいしかない犬にとってみれば、実はないがしろにできない時間の長さです。その間の脳の発達というのは目覚しいはずでしょうし…。

生涯続けよう、犬との遊び

もちろん乳離れしても、子犬はまだまだ遊び続けます。遊びの中で遊ぶ時の手加減などを覚え、延いてはそれが自制心の形成を促します。相手の表情を読む読解力、そして自分を理解してもらえるよう正しい言葉使い(犬は振る舞いで言葉使いを駆使するものですが)も、遊びの中で磨いてゆきます。こうして社会的に(少なくとも対犬において)自信が植え付けられ、ビビりにくい犬に成長してゆきます。

というわけで8週目に新しい家庭にやってきても、飼い主は引き続き子犬が遊べるよう、その機会を与えなければいけません(もちろんのべつまくなし他の犬に引き合わせて遊ばせる必要はないのですが) 。大事な時期を失っているペットショップから来た犬たちには、なおさら必要なプロセスとも言えるでしょう。パピーパーティなるものが最近は日本でもだいぶ一般的になってきましたが、子犬に楽しい思いをさせてあげるため、というのはもちろんですが、正常な脳の発達や 社会性を促すのが本当の意図です。

そして忘れてならないのは、人も子犬と遊ぶ必要があるということ。いえいえ、子犬時代だけではなく、犬の生涯を通して遊ぶべきです。一緒に遊ぶ中で犬は人とのコミュニケーションの仕方を覚えます。絆も結ばれやすくなります。犬に自信も与えます。どうやって犬と関わったらいいかわからない場合、まず手始めに「遊ぶ」というところから関係を作っていくのはどうでしょう?

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藤田 りか子(ふじた りかこ)

藤田 りか子(ふじた りかこ)

ドッグ・ジャーナリスト。レトリーバー二匹と自然豊かなスウェーデン・ヴェルムランド県の小さな村に在住。スウェーデン農業大学野生動物管理学科にて修士号を得る。犬の繁殖管理や福祉の先進国スウェーデンはじめ北欧の犬情報はもとより、ヨーロッパ各地の純血種の知識に詳しい。著者に『最新世界の犬種図鑑』。 現在ノーズ・ワーク(嗅覚を使うドッグスポーツ)に夢中、コンペティターでもある。
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