2017.08.04その他の体のケア

愛犬のお散歩コースは大丈夫?ノミ・マダニ対策[その2.マダニ編]

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前回のノミ編に引き続き、今回はマダニについてGREEN DOGの獣医師伊東が説明します。マダニに寄生されることによって生じる害は、症状によっては重篤になることがあります。特に春から秋にかけて活動が活発になるマダニからパートナーを守る予防対策を知っておきましょう。

※伊東獣医師によるノミ編の記事はコチラ→ 愛犬のお散歩コースは大丈夫?ノミ・マダニ対策[その1.ノミ編]

マダニってどんな虫?

ダニは蜘蛛の仲間であり、年々多くの種類が発見され、現在では約4万種類のダニが知られています。マダニは、ダニであっても食品等に発生するコナダニや衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなど、家庭内に生息するダニとはまったく種類が異なり、哺乳動物、鳥類、爬虫類などの体表に寄生吸血し、病気を媒介する害虫として問題視されています。主に森林や草むらなどの屋外に生息し、市街地周辺でも見られます。多くのダニが体長0.1~1mmであるのに対して、その中でもマダニは未吸血時で2~5.5mm、種類によっては吸血後30mmになることもある大型のダニで、固い外皮に覆われています。

マダニは世界に800種ほどいて、日本では8属47種類、未明名の約10種類も含めると約60種類のマダニが生息しています。その中で、日本で犬を好適宿主※1とするマダニには、ツリガネチマダニやクリイロコイタマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニなどが挙げられます。

マダニの成長
<卵→幼ダニ→若ダニ→成ダニ>
卵以外は血液を唯一の栄養源として、幼ダニ、若ダニは成長のため、成ダニは交尾・産卵のために吸血をします。

雄成ダニは血液をたっぷり吸うと体重が未吸血時の数倍になりますが、雌成ダニはなんと100倍以上の大きさに達します。マダニは吸血した血液を体内で濃縮するため、実際に吸血した血液は体重増加分の3~5倍にのぼります。

マダニは動物に寄生すると、まず唾液中に含まれる酵素で皮膚を溶かしながら、鋏角(きょうかく)と呼ばれる針状の構造物で宿主の皮膚を切り裂いたのち、口下片(こうかへん)と呼ばれるギザキザの歯のついた突起物を傷口に差し込みます。そして、さらにセメント様物質を分泌して自分をしっかりと宿主に固定し、吸血を始めます。

雌成ダニはおよそ数日~2週間かけて吸血しますが、10~12日目頃まではゆっくり吸血して体作りをします。そして最後の12~24時間で急激に大量の血液を吸い上げて飽血状態となり、大きな身体になります。飼い主が『イボのようなものがついている!』と気がついて来院するのは、この最後の時期が多いようです。

※1 宿主(しゅくしゅ)とは、寄生生物により 寄生される生物のこと。好適宿主とは、寄生生物の成長・繁殖などに最も適した宿主のこと。

マダニによる病害

犬についたマダニは人にも影響があります

マダニは、愛犬に貧血や皮膚アレルギーなどの直接的な害を与えるとともに、ウィルスや細菌、原虫などさまざまな病原体の媒介をします。また、日本で犬に寄生が認められたマダニのほとんど全てが、人のマダニ咬症の原因になっているようです。

直接的な害

     貧血

  • マダニに大量に吸血されることによって起こります。
     皮膚アレルギー

  • マダニの唾液がアレルゲンとなり、強いかゆみなどを引き起こすことがあります。海外に生息しているマダニの中には毒素を産出して犬にダニ麻痺を引き起こすものもいます。

病原菌の媒介によって生じる害

     バベシア症(ピロプラズマ症)

  • バベシア症は、バベシア属の原虫が犬の赤血球に寄生することにより生じます。犬において最も重要なマダニ媒介性の感染性疾患のひとつです。感染すると、溶血性貧血とそれに伴う発熱や黄疸、虚脱などの症状が引き起こされ、治療が遅れると多臓器不全に陥り、死に至ることもあります。
     
    バベシア原虫は、成ダニが感染犬を吸血した時に同時に吸引され、卵を介して幼ダニに移行します。そして、感染幼ダニが吸血した際に、唾液と共に他の犬に感染します。日本ではバベシア症が関西以西(西日本・四国・九州・沖縄)に多く発生していますが、近年では東日本以北での犬の感染例も報告されています。なお、一般的な犬に感染するバベシア種は、ヒトには病原性を示しません。
     エールリヒア症

  • 複数のエールリヒア属リケッチア(動物や人の細胞内で増殖する細菌)によって引き起こされる感染症です。これも重要なマダニ媒介性感染症のひとつです。感染した犬は無症状のこともあれば、急性の症状(急性期)を示すこともあります。急性期では、感染後約8~20日間の潜伏期間を経て、リンパ節の腫れ、高熱と平熱をくり返す間欠熱、脾腫、肝腫大、鼻出血、体重減少などの症状があらわれます。また、網膜や前眼房の出血、発熱などに加え白血球減少症などの症状を起こすこともあります。現在のところワクチンが開発されていないので、寄生されても直ぐに落ちるように、マダニ駆除薬の投与を行うことが一番の予防策です。
     ライム病

  • ライム病は、マダニを介してボレリア菌という細菌に感染して起こる病気です。発熱や食欲不振、痙攣、関節炎など全身性の多様な症状を示します。感染してもすべての犬に症状があらわれるのではなく、発症するのはごく僅かのようです。また、犬だけでなく人も感染する恐れがある人畜共通感染症です。
     Q熱

  • コクシエラという細菌に感染して起こる病気で、細菌を含んだ排泄物を舐めたり、空気中に浮遊している細菌を吸い込んだり、また、コクシエラ菌を保菌しているマダニに咬まれることなどによって感染します。

    犬や猫の場合、感染しても軽い発熱程度かほとんど症状の出ない不顕性感染です。妊娠中の犬が感染すると、まれに流産や死産をしてしまうケースもあります。人にも感染する人畜共通感染病で、発熱や頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、インフルエンザのような呼吸器疾患を起こします。感染犬の便を触ることによって人に伝播することがありますので、注意が必要です。

ポイント 重症熱性血小板減少症候群について
昨今、日本でも人において重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)という、マダニが介在する病気が発生しています。主な症状は発熱と消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)で、時に頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸不全症状、出血症状(歯肉出血、紫斑、下血)が出現します。重症化し、死亡することもあります。

犬を含む多くの動物は原因となるSFTSウィルスに感染しても症状が現れない(発病しない)と考えられていましたが、一部が発症する可能性はあります。昨今、日本国内で、SFTSを発症した犬と猫の症例が確認されました。犬と猫では、発熱(39℃以上)、白血球減少症、血小板減少症、食欲消失などの症状が認められ、さらに入院が必要なほどの重症で、かつ既存の細菌・原虫・ウイルス(パルボウイルスなど)の感染が否定された場合に、SFTSが疑われます。臨床症状や血液検査などではSFTSの確定診断はできないため、特定の機関でウィルス学的検査を実施することが必要です。愛犬に発熱とともに食欲不振やぐったりするような症状が現れたら、直ぐに動物病院に相談しましょう。

特に春から秋にかけては、マダニに咬まれる危険性が高まります。現在のところSFTSウィルスに対して有効なワクチンはありませんので、防除が大切です。犬にマダニ駆除薬を投与しておくことはもちろんのこと、人においても山林や草むらなどマダニが多く生息する場所に入る時には、肌の露出を極力少なくした服装をするように心がけ、また、むやみやたらに野生動物に接触しないようにしましょう。

参考:厚生労働省 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169522.html

マダニはどこで寄生するの?

マダニは、新しい宿主への寄生待機の時期は自由生活を送っています。マダニの種類にもよりますが、主に春~秋にかけて活動が活発になります。マダニは、山林や民家の裏庭、キャンプ場、湿気の多い河川敷などの草むらであればどこにでも生息しています。葉の裏などに潜みながら獲物を待ち構えています。そして、動物が通りかった際、二酸化炭素、臭い、体温、遮光、振動などの刺激を1脚末節にあるハラー氏器官、触肢などの感覚器で感じ取って、その身体に飛び乗るのです。

見つけたときはどうすればいい?

口器を残さずしっかり抜くにはコツが必要です

マダニは、犬の目の周り、耳、胸部、内股部、肛門周囲など、体表面の被毛の少ないところに主に寄生します。吸血中のマダニは、セメントのような物質でしっかり固着しているため、なかなか取れません。無理に引っ張って取ろうとすると、口器だけが皮膚内に残ってしまい化膿などの原因となります。その場合は切開して口器を取り除く必要がでてきます。

動物病院で取り扱われているマダニ駆除薬を投与すると24~48時間以内に死亡し、簡単に取れるようになります。ピンセットでねじりながらゆっくり抜いたり、ワセリンで窒息死させたり、などいくつか方法はあるようですが、無理に家庭で除去しようとせずに、動物病院に相談するようにしましょう。

マダニの予防対策

飼い主が愛犬のマダニ寄生に気がついた時には、寄生されてから日数が経ち、感染症に罹っている可能性があります。そうならないためにも、定期的に予防薬を投与しておくことが大切です。

マダニよけの首輪など市販されていますが、正直なところ効果はあまり期待できません。確実にマダニを駆除するために、病院取り扱いで安全性の確立されている薬剤を使用しましょう。

動物病院で取り扱われているマダニの予防薬は、ノミ・マダニの駆除薬となっているものがほとんどです。さまざまな種類がありますので、投与のしやすさ、価格、ノミ・マダニ以外の害虫への効果など比較しながら選ぶといいでしょう。

ホリスティックケア

犬は草むらが大好きです。愛犬を山林や裏山などで散歩させたり、キャンプ場やレジャーに連れ出したりすることは、日常としてよくあることです。「マダニに寄生されるかもしれないから、そんな場所は行かない」と考えるのではなく、予防をしつつ、愛犬を楽しい場所に連れて行ってあげてほしいものです。

定期的にマダニ駆除薬を投与する以外に、草むらから帰ってきたら必ず、目の細かい櫛 でブラッシングをしてあげましょう。一般的なマダニ駆除薬が効果を表すまでは、吸血してから24~48時間程度かかります。しかし、ブラッシングすることによって、マダニが吸血を始める前に見つけることができるかもしれませんし、寄生から時間が経っていない場合には簡単に取れることもあります。

おわりに

マダニは刺されたときに少し痛みを感じるものの、その不快感が継続するわけではありませんので、比較的軽視されがちな害虫です。しかし、愛犬へウィルスや細菌などの病気を伝播するだけでなく、人畜共通伝染病の原因ともなります。家や庭、周囲の環境にマダニを持ち込まないためにも、愛犬へのマダニ駆除は、定期的にしっかり行いましょう。

GEEN DOG相談ルーム

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伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー

伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー

1998年、日本獣医畜産大学(現在、日本獣医生命科学大学)獣医学科を卒業。動物病院や大手ペットフードメーカーでの勤務を経た後、GREEN DOGへ。現在は、スタッフ教育や商品の品質検証、オリジナルフードの製造に関わる。

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