2017.05.01その他の体のケア

犬がフィラリアに感染したら治るの?犬のフィラリア症の症状や治療法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Dog Blood Sample

春になると、動物病院からワクチン接種とともに、フィラリア症予防についての案内を受け取る飼い主さんは多いのではないでしょうか。犬のフィラリア症は蚊が媒介する病気なので、蚊が出現し始める春からの予防が必要になります。フィラリア症は、その予防や治療をしないと、愛犬を死に至らしめてしまう怖い寄生虫病です。

今回は、このフィラリア症についてGREEN DOGの獣医師伊東が説明します。

フィラリアとは?

フィラリアとは、糸状虫と呼ばれる寄生虫の総称です。このフィラリアの寄生による病気をフィラリア症といいます。犬で問題になるのは、このフィラリアの1つである、犬フィラリア(和名:犬糸状虫、学名:Dirofilaria immitis)です。

犬フィラリアは、犬の肺動脈や心臓(右心系)に寄生し、全身の血液循環や呼吸器、肝臓・腎臓に深刻な障害を与える恐ろしい寄生虫です。

犬フィラリアは、乳白色のそうめんのように細長く、体長は雌成虫では約28cm、雄成虫では約17cmで、尾部が渦巻いている形をしています。犬が最も適した感染宿主であり、フィラリア症の流行地では予防対策をとらなければ一夏で80~90%の犬が感染するといわれています。犬以外にも猫やクマ科などの食肉目科の動物にも感染・発症します。また、ヒトでは発症はしませんが、感染をすることがあります。

犬フィラリアの感染について

犬フィラリアは、蚊の媒介によって感染します。日本では、アカイエカ、コガタアカイエカ、トウゴウヤブカ、ヒトスジシマカなど約16種の蚊が媒介することで知られています。

フィラリア症の犬の体内では、成虫が血液中にミクロフィラリアという幼虫を産みだしています。このミクロフィラリアは犬の体内で成虫になることはできず、一旦、蚊の体内で成長する必要があります。

ミクロフィラリアは、蚊が吸血する際に一緒に取り込まれ、その体内で感染幼虫となります。そして感染幼虫になると、蚊の吻鞘(ふんしょう、吸血針)で待機し、蚊が犬を吸血すると同時に、その体内に入り込みます。

犬の体内に入った感染幼虫は、犬の皮膚の下や筋肉、脂肪などで生活を始め、そこで、約2ヶ月間成長します。そして、その後血管内に入り、最終的な棲家となる心臓と肺動脈に移動します。成熟して成虫となった犬フィラリアは、雄と雌が揃うと、ミクロフィラリアを産み出すようになります。産み出されたミクロフィラリアが犬の抹消血管中に出現するのは、感染から約7~8ヶ月後です。また、成虫の寿命は5~6年といわれています。

このようなサイクルで犬フィラリアは成長し、周りの犬に感染を広げていきます。

犬フィラリアに感染している犬の症状とは?

症状は、犬フィラリアの成虫の寄生部位や寄生数、犬の肺動脈や肺の状態などで、現れ方や重症度が異なってきます。

犬フィラリアの感染幼虫が犬の体内に入り込んだ時点では、全く症状は現われません。心臓や血管を傷つけ、肝臓や腎臓に影響を与えて深刻な症状が現れるのは、感染から数年経ってからのことが多いようです。

犬フィラリア感染時の症状

 軽症では、平常時は症状を示しませんが、時々軽い咳をするようになります。
 中等症では、咳に加えて、栄養状態や毛艶も悪くなります。運動を好まなくなります。
 重症では、腹水が溜まり、元気・食欲がなくなり、痩せてきます。呼吸困難や運動時の
 失神もみられるようになります。咳に多量の血が混ざることもあります。

また、乾いた咳以外の症状は無いまま突然発症し、不整脈や呼吸困難、重度の貧血、血尿を示し、数日の内に死亡する急性症状を現すことがあります(大静脈症候群)。

フィラリア症の検査について

犬フィラリア感染の診断は、主に成虫抗原を検出する免疫学的検査血中のミクロフィラリアの有無を検査する方法で行われます。免疫学的検査は検査キットに少量の血液を垂らして数分で結果が分かるというものです。一方、ミクロフィラリア検査は、犬の抹消血を顕微鏡で観察します。この2つの検査を単独、もしくは併用して診断がされます。

感染が認められた場合、心電図やレントゲン撮影、超音波検査などで、成虫の寄生状況や各臓器の損傷などを詳しく検査していきます。

フィラリア感染を確認する血液検査の費用は、動物病院によって異なりますが、目安として1000~3000円程度ではないでしょうか。詳細はかかりつけの動物病院にお問合せください。

フィラリア症の治療法について

Mosquito sucking blood

犬フィラリアに感染すると大変

フィラリア症は、心臓や肺動脈に寄生している成虫が発症の原因になるため、成虫の駆除を行います。しかし、犬の年齢や全身状態、寄生状況などによって処置が変わってきます。

外科による成虫の摘出

外科手術で成虫を摘出するという方法があります。頸静脈から長い金属の鉗子を挿入して、肺動脈に寄生している成虫を釣り出します。大静脈症候群での緊急処置で、または大量寄生されている体力のある犬で行われることがあります。しかし、麻酔のリスクや手技の難しさがあるため、全ての犬に適応されるわけではありません。

薬剤による成虫の駆虫

薬剤で成虫を駆除する方法もあります。しかし、死滅した犬フィラリアが肺の血管に詰まって状態が悪化することが懸念されます。また、投薬前の肺動脈の状態によっては重度の循環不全に陥って犬が死亡することがあるため、投薬には慎重な判断が必要となります。なお、フィラリア駆虫薬(イミトサイド)は数年前に、日本での販売は中止になっています。

対処療法

外科手術や駆虫薬に耐えられないと判断された場合は、新たな犬フィラリアの感染を予防しつつ、対処療法を施します。寄生している成虫の自然な減少を期待することになりますが、犬フィラリア症から回復したとしても、血管や肺、腎臓などに与えられた障害は残ってしまいます。

家庭では、心臓や血管に負担をかけないように、安静に過ごし、高品質の栄養価の高いバランスの取れた食事を与えるようにします。循環不全や肝臓障害、腎不全などが起きている場合には、状態に合わせ調整した食事や療法食を与えます。

犬フィラリアに感染すると様々な障害が現れ、命が脅かされます。最善の選択は、犬フィラリアを寄生させないことに尽きます。

フィラリア症の予防について

フィラリア症は、きちんとした予防によって防げます

フィラリア症は、きちんとした予防によって防げます

予防には、蚊の防除と投薬があります。しかし、蚊を環境から全排除したり、絶対に刺されないようにしたりすることは現実的には無理なことですので、毎年、必ず定期的に投薬することが、確実なフィラリア症の予防法なのです。

薬には、内服薬、塗布薬(体に滴下するスポットタイプ)、注射薬、の3種類があります。
これらの薬は、フィラリアの感染幼虫を体内に侵入させないためのものではなく、体内に進入したフィラリアの幼虫を殺すための薬です。そのため、きちんと定期的に投与する必要があります。

最近では、犬フィラリア以外にノミ・ダニも一緒に駆除できる薬やジャーキータイプで嗜好性の高い内服薬、1ヶ月効果が持続するスポットタイプ、1年間効果が持続する注射薬など、さまざまな薬が開発されています。それぞれのタイプには、利点・不利点がありますので、愛犬の好みや投薬のしやすさなど併せて、かかりつけの獣医師に相談して選択しましょう。

忘れてはいけないことは、投薬開始前に犬フィラリアに感染していないか確認することです。前年にきちんと飲ませていたとしても、犬が薬を吐き出してしまっていたり、胃腸の調子が悪くてしっかりと薬剤を吸収できていなかったりすることがあります。万が一、犬フィラリアに感染していた場合、薬によってミクロフィラリアが大量に死ぬことによって犬がショック状態に陥ったり、大静脈症候群を発症したりする可能性があるため、必ず血液検査で感染の有無を確認します。

フィラリア症の予防薬の投与時期

いずれの薬でも、皮膚の下や筋肉、脂肪で生活している時期の犬フィラリアの幼虫を殺滅するものですので、次のように投与の時期が決まっています。蚊がいなくなったからといって投薬を止めてはいけません。

投与時期

 始める時期:蚊が飛ぶようになってから1ヶ月後
 終える時期:蚊がいなくなってから1ヵ月

投与期間

暖かい地域の場合は投与期間が長く、寒い地域では短くなります。自分の住んでいる地域の気候に合わせた期間で投与する必要があります。

最後の1ヶ月後の投薬までしっかり行って駆虫をしないと、次の年に犬フィラリアの成虫が心臓や肺動脈に寄生している、ということになりかねません。注射薬であれば、この期間は効果が持続していなければなりません。

なお、指定された日に予防薬を投与し忘れた場合、数日程度であれば、問題ありません。直ぐに飲ませるようにしましょう。しかし、半月以上ずれてしまった場合には、かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。

自然の多い場所でのお散歩やアウトドアのレジャーなどでは、投薬にプラスして虫除けスプレー を使用して、なるべく蚊に刺されないようにしてあげることもおすすめです。また、薬の処理で仕事が増えてしまう肝臓をいたわるハーブ をご飯にまぜてあげるのもよいでしょう。パートナーに合ったケアをみつけてくださいね。

おわりに

フィラリア症は、愛犬にとって命取りになる病気です。しっかりと投薬して、確実に予防することが大切です。

並行輸入品や通信販売で犬フィラリア予防薬が販売されていますが、フィラリア症の予防薬は、薬事法で獣医師の指示なしに処方することができない薬となっています。毎年、投薬を始める前には血液検査も必要ですので、必ずかかりつけの動物病院で処方を受けるようにしましょう。

GEEN DOG相談ルーム

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterでグリーンドッグ公式アカウントをフォローしよう!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
The following two tabs change content below.
伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー

伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー

1998年、日本獣医畜産大学(現在、日本獣医生命科学大学)獣医学科を卒業。動物病院や大手ペットフードメーカーでの勤務を経た後、GREEN DOGへ。現在は、スタッフ教育や商品の品質検証、オリジナルフードの製造に関わる。
伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー

最新記事 by 伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー (全て見る)

このエントリーにコメントする

必須項目は全て入力してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)