2017.09.01皮膚・被毛のケア

獣医師がおすすめする犬のシャンプー選びとおうちシャンプーのコツ

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最近では、プードルやヨークシャーテリアなどのこまめなトリミングが必要な犬種でも、シャンプーと被毛のカット・爪カットなど全て行ってしまう、というプロ顔負けの飼い主さんが増えてきています。おうちでのシャンプーやケアは、予約が要らず都合の良いときに行え、愛犬も大好きな飼い主さんにシャンプーをしてもらえるので安心できる、などの利点がたくさんあります。そこで今回は、シャンプー剤の成分の見方や選び方、適切なシャンプー方法などについてGREEN DOGの獣医師伊東が説明します。

シャンプー選びのポイント

愛犬の皮膚と被毛に付いている汚れは、皮脂や表皮が剥がれおちたフケ(タンパク質)、尿、便、唾液、血液、その他外部から付着したものなど、さまざまな成分からなっています。そして、水溶性や油性、固形などいくつもの形があります。

シャンプー剤とは、皮膚や被毛からあらゆる成分、形の汚れを取り除き、綺麗で衛生的な状態にすることが期待されます。汚れを落とす働きのあるものは酸やアルカリ、漂白剤などありますが、シャンプー剤で使われる主役は、界面活性剤です。

シャンプー剤には、石けんをはじめ、さまざまな界面活性剤が必ず含まれています。逆にいうと、一般的なシャンプーで界面活性剤が入っていないものはありません。

界面活性剤とは、2つの異なる物質の境界面(界面)に作用し、混ざりやすくする物質のことを指します。例えば、水と油は混ざりませんが、界面活性剤を利用すれば、混ぜ合わせることができます。なぜならば、界面活性剤は、ひとつの分子の中に、水になじみやすい親水基と油になじみやすい疎水基(親油基)の両方を併せもっているためです。

また、界面活性剤は水の表面張力を低下させることによって、水を物に染み込みやすくさせる働きを持っています。これらの性質によって、界面活性剤は皮膚・被毛の汚れを落とす役割を果たすのです。

シャンプー剤に含まれる主な3つの成分

1) 主成分…界面活性剤。皮膚・被毛の汚れを落とす主役。
2) 補助剤…界面活性剤の働きを強化するもの。
3) 添加剤…洗剤の性能を向上させるものや香り・質感など付加価値をつけるもの。

シャンプー剤を選ぶ際にはどのような界面活性剤が使われているか、が一番のポイントになります。なぜならば、界面活性剤は愛犬の皮膚・被毛に最も影響を与える成分だからです。

皮脂や汚れを洗い流すためにはある程度の洗浄力が必要ですが、界面活性剤の洗浄力が強ければ必要以上に脱脂してしまい、皮膚に刺激を与えたり、被毛をパサパサにしてしまったりします。逆に、洗浄力が弱いものを用いると、皮脂の分泌が多い、もしくは汚れがひどい犬では、何度もシャンプーをしなくてはならなくなります。

シャンプー剤を選ぶ際には、まず界面活性剤の種類を確認することが大切です。そうすることによって、愛犬に最適のシャンプーを探すことが可能になるのです。

界面活性剤の種類

界面活性剤にはいろいろ種類がありますが、水に溶かしたときに電気を持つ形になるイオン性界面活性剤と、イオンにならない非イオン(ノニオン)界面活性剤の2つに大きく分類されます。さらに、イオン性界面活性剤は、どのようなイオンをもつかで3つに分けられます。シャンプー剤は、さまざまな特徴を持たせるためにいくつもの界面活性剤を組み合わせます。主に使われるのは、アニオンと両イオン界面活性剤の2種類です。

1)イオン性界面活性剤

アニオン(陰イオン)界面活性剤
水に溶けたときに、親水基が陰(-)イオンに電離する界面活性剤。油や汚れを浮かせて落とす力に優れ、泡立ちも良いため、多くのシャンプーに使用されています。

アニオン界面活性剤はさまざまな種類があり、石けんをはじめ、合成の界面活性剤など多く開発されています。主なアニオン界面活性剤の中には、高級アルコール系、石けん系、アミノ酸系があり、刺激の強さや洗浄力などの特性がそれぞれに異なります。

【高級アルコール系界面活性剤】
植物油や石油から合成された高級アルコールを使用した界面活性剤です。アルコールの段階で炭素の数が6個以上のものを化学では高級アルコールといいます。
高級アルコールの<高級>は価格が高いものや品質の良いという意味ではありません。

植物やココナッツなどの自然素材から抽出されたものを良しとし、石油系は悪いと思われることもありますが、結局、抽出された高級アルコールは化学的に同じものになりますので、原料で良し悪しを決めるのは無意味なことです。

高級アルコール系界面活性剤は、非常に強い洗浄力が特徴です。しかし、洗浄力が強いため、必要な皮脂まで取り去ってしまい皮膚・被毛がパサパサになってしまう恐れがあります。また、タンパク変性作用があるため皮膚に対する刺激が強く、乾燥肌、敏感肌、あるいはアレルギー性皮膚炎がある犬には不向きでしょう。一方、脂漏症で皮膚・被毛がベタベタしている犬や汚れが激しい犬をすっきり洗いあげるには適しています
また、原料が安価なため、低価格なシャンプーに使われていることも多いです。

<代表的な高級アルコール系界面活性剤>
ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸アンモニウム、オレフィン(C14-C16)スルホン酸ナトリウムなど

【石けん系】
石けんを主成分にしている界面活性剤は、生物分解(※)が早いため環境にやさしい成分といえます。しかし、石けん系の界面活性剤は、洗浄力も強いため、皮脂を取りすぎてしまう恐れがあります。またアルカリ性の性質は、タンパク変性作用があるため、皮膚に対する刺激もあります。キューティクルを開かせ毛髪の摩擦を生み、きしみやすくしもしますので、シャンプー後には酸性のコンディショナーで中和が必要になります。

石けんシャンプー=安全、という考え方があるようですが、環境にはやさしいものの、全ての犬に適してとは言えません。高級アルコール系と同様、皮膚が弱い、あるいはアレルギー性皮膚炎があるパートナーにはあまり向いていません。
※自然界で分解を受けやすい性質のこと

<代表的な石けん系界面活性剤>
脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウムなど

【アミノ酸系】
アミノ酸系界面活性剤は、アミノ酸の一種であるメチルアラニンやグルタミン、タウリンなどから作られたものです。比較的新しい界面活性剤であり、低刺激で皮膚にも被毛にも優しく、保湿力も高いという特徴を持っています。洗浄効果がやや低いため、さっぱりと洗い上げたい場合には、物足りないと感じるかもしれませんが、皮膚にやさしい界面活性剤の代表格と言えるでしょう。
中には、ラウロイルメチルアラニンNaのように、皮膚にやさしく、洗浄力も高いという優れた性質をもっているものもあります。

アミノ酸系界面活性剤は、他の界面活性剤よりも原材料が高いため、高価格なシャンプーに使われていることが多いです。

<代表的なアミノ酸系界面活性剤>
アミノ酸系界面活性剤にはたくさん種類がありますが、「ココイル~」や「ラウロイル~」などの表記があればアミノ酸の成分が含まれているということになります。
ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ココイルグリシンナトリウム、ウラロイルグルタミン酸TEAなど

カチオン(陽イオン)界面活性剤
親水基が陽(+)イオンに電離する界面活性剤。柔軟作用や静電気防止作用、殺菌作用を持っています。
カチオン界面活性剤は、シャンプー後にマイナスに帯電した髪に吸着し、ゴワつきをなくし、被毛に柔軟性をもたらします。主に、トリートメントやコンディショナーに使用されています。皮膚への刺激性は強いので、直接皮膚につけないほうが良いでしょう。

<代表的なカチオン界面活性剤>
塩化ベンザルコニウム、ベヘントリモニウムクロリド、ステアラミドエチルジメチルアミン、ラウラミンオキシドなど

両イオン界面活性剤
親水基に陽(+)と陰(-)の両方の電気を持っている界面活性剤。
酸性の水では陽(+)、アルカリ性の水では(-)に帯電するので両イオンと呼ばれます。髪の汚れを落としつつ、保護成分を髪に付着させるという性質があります。洗浄力は弱いのですが、アミノ酸系よりもさらに低刺激のため、薬用シャンプーやベビー用シャンプーなどに使われたりします。

<代表的な両イオン界面活性剤>
ラウラミドプロピルベタイン、コミカドプロピルベタイオン、ココアンホ酢酸ナトリウムなど

2)非イオン性界面活性剤

ノニオン界面活性剤
水に溶けたとき、イオン化しない親水基を持っています。酸やアルカリ、また硬水の影響を受けにくく、使いやすい界面活性剤です。洗浄力は極めて弱いのですが、低刺激で安全性が高く、泡立ちが良いのが特徴です。他の成分と混合して利用されることが多いです。

<代表的なノニオン界面活性剤>
グルコースから作られた成分で、~グルコシドの表記になっています。
アルキルグルコシド、デシルグルコシド

このように、界面活性剤には様々な種類と特性があることがお分かりいただけたかと思います。シャンプー剤は、1つの界面活性剤しか入っていないというものはほとんどなく、目的に応じてさまざまな種類が混合され、そのバランスによって特性が決まってきます。例えば、皮膚にやさしい界面活性剤に少しだけ洗浄力の強いものを混合したり、保護成分のあるものを少し入れたり、とその目的によって多種多様です。成分表には量の多いものが先に書かれていますので、その種類と順番によって、○○系シャンプー剤とされます。

介護や外出時などで、水をつかったシャンプーを愛犬にできないケースがありますが、そのような時はドライシャンプー(洗い流さないシャンプー) を使うと便利です。ドライシャンプーは汚れを浮かせてタオルなどで拭き取るというものですが、界面活性剤が使われているもの、いないもの、様々な種類が販売されています。

なお、人用の化粧品をシャンプー剤の成分は全表記が義務付けられていますが、犬用のシャンプーは雑貨扱いになるため、全表記されていない場合があります。成分については、メーカーに問い合わせることをおすすめします。

<注意事項>界面活性剤についてさらなる詳細については専門書をご覧ください。

ノンシリコーンや無添加表記などについて

犬に人用のシャンプーを使ってもいい?

ノンシリコーンシャンプー
人では、ノンシリコーンシャンプーがもてはやされていますが、本当にシリコーンは悪者なのでしょうか。

シリコーンは、地球上に多く存在するケイ素という鉱物から合成された物質であり、その安全性も評価され、食品添加物、食品用器具類、化粧品、医薬器具などへ幅広く利用されています。シャンプー剤のシリコーンは、髪の表面をコーティングし、ツヤやサラサラ感を演出するために利用されています。

人ではパーマやカラーリングをしますが、それらの成分が残った髪に強い界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール系)のシャンプー剤を使用すると、ダメージを促進してしまう危険性があります。そしてその上をシリコーンでコーティングし、一時しのぎをすることがあります。

このように、シリコーンが悪いのではなく、シリコーンで髪のダメージをごまかし、さらにダメージが進んでいくという悪循環が、実は問題なのです。

犬においてはパーマやカラーリングなどをすることは、ほぼありません。トリートメントやスプレーにシリコーンが使用されていることはありますが、ダメージをごまかすため、ということでなければ、使用しても良さそうです。

無添加シャンプー
無添加シャンプーという文言も、よく目に留まります。シャンプー剤に限らず、ペットフード、化粧品などにも無添加と記載されているものがありますが、大切なのは何の成分が無添加なのか、ということです。例えば、“防腐剤が無添加だけれども、あまり好ましくないものが添加されていた”などということはよくあります。
無添加という響きは、何も添加されていないと勘違いされがちです。しかし、何も添加されていないシャンプー剤というのはあり得ませんので、しっかりと内容を確認することが重要です。

人用シャンプー剤を犬に使っても良いの?

犬用シャンプー剤に使われる界面活性剤は、人用と共通のものが使われています。そのため、一概に人用のものを犬に使ってはいけない、と言い切ることはできません。そこで3つの視点から検証をしてみました。

1)皮膚のpH(アルカリ性、酸性)について

最近、人の肌は弱酸性、犬は中性~弱アルカリ性のため、違うpHのシャンプーを使うべきだ、などと耳にすることもあります。しかし、調べてみると人用のものが全て弱酸性になっているわけでもなく、逆に犬用が中性~弱アルカリ性になっているわけでもありません。
犬において、弱酸性と中性~弱アルカリ性のシャンプーとを比較した時に、その違いによる皮膚への影響がどの程度なのかは、明らかになっていません。またシャンプーをした後に一時的にpHが傾いても直ぐに正常に戻りますので、皮膚pHにこだわってシャンプーを選ぶ必要はなさそうです。

2)皮膚のデリケートさについて

犬の皮膚は人よりも薄く、1/3~1/5分程度です。犬の皮膚は人よりもデリケートであり、皮膚トラブルも頻繁に起こります。
人用の広く流通しているシャンプー剤には、洗浄力や刺激が強い高級アルコール系のものが多いため、安易に使用すると、犬では皮膚トラブルを起こす可能性があります。

3)香りについて

人用のシャンプー剤には、人工的で強い香料を使っているものがたくさんあります。犬には香りがきついかもしれません。

結論としては、人用のシャンプー剤も界面活性剤の種類や添加物、香料などをしっかり確認すれば犬に使用することもできますが、犬用シャンプーの中から愛犬の皮膚の状態に合ったものを吟味するのが良い、のではないでしょうか。

どのぐらいの頻度でシャンプーすればいいの?

愛犬の身体を洗わずに放っておくと、被毛の汚れや皮膚の脂などが目立ち、嫌なニオイの原因にもなります。皮膚や被毛を清潔に保つためにも、定期的にシャンプーをする必要があります。頻度は、1ヶ月1~2回程度が一般的です。あまりシャンプーの頻度が高いと皮脂が取れすぎてしまって、かえって皮膚・被毛の健康を損ないます。体調の悪い時やヒート中などは避け、心身ともに愛犬の状態が良い日を選ぶと良いでしょう。なお、アレルギー性皮膚炎や脂漏症など特別な状態であれば、シャンプーの頻度が1週間に1~2回ということもありますが、その場合はかかりつけの獣医師の指示に従いましょう。

子犬にシャンプーを始めるタイミングは?

シャンプー嫌いにならないように配慮しましょう

子犬のシャンプーはいつ頃から?ということをよく聞かれますが、特に決まりはありません。生まれたばかりの子犬がそんなに汚れているとは思えませんが、排泄物などで汚れてしまうことがあるかもしれません。美容院にはワクチンを済ませしっかりと免疫がつくまでは連れて行けませんが、家で洗うことは可能です。
しかし、シャンプー時に怖い思いをさせてしまうと、それがトラウマとなってしまう可能性があります。あまりにも小さいうちは、部分洗いやタオルで拭くという程度で十分だと思います。

一般的には、ワクチンプログラムが終わった頃に、シャンプーを開始するケースが多いです。

おうちシャンプーのコツ

愛犬を自宅でシャンプーする場合、シャンプーとドライヤーの時間を短縮するために、ブラッシングをして毛のもつれをあらかじめ取っておきます。また、毛玉は丁寧にほぐしますが、簡単にいかない場合には、愛犬の負担を少なくするために潔くカットしてしまうのも方法です。

また、シャンプー時の毛と毛が擦れ合う摩擦は被毛を痛める原因になります。シャンプー剤の原液をそのまま愛犬にかけるのではなく、あらかじめ、手の平で、もしくは少しのぬるま湯にシャンプー剤を溶かして泡立たせてから洗うようにしましょう。

おうちシャンプーのコツはコチラ→ コツさえつかめばかんたん おうちシャンプーに挑戦!

おわりに

シャンプー剤はいくつもの界面活性剤を混ぜ合わせて作られていますが、その種類を知ることによって、どのような性質をもっているものか理解することができます。愛犬の皮膚の健康維持のために、謳い文句を鵜呑みにするのではなく、しっかりとご自身の目でシャンプー剤を選んでみてください。

また、最近のペット業界では、ホリスティック・グルーミングという言葉が広がりつつあり、グルーミング時にいかに負担をかけずに健康に美しくするか、ということが課題になっています。

ぜひ、おうちでも愛犬に無理強いしない楽しいシャンプータイムを過ごしてください。

GEEN DOG相談ルーム

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伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー

伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー

1998年、日本獣医畜産大学(現在、日本獣医生命科学大学)獣医学科を卒業。動物病院や大手ペットフードメーカーでの勤務を経た後、GREEN DOGへ。現在は、スタッフ教育や商品の品質検証、オリジナルフードの製造に関わる。

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