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2014年10月16日

犬の歯周病治療 ~無麻酔 / 全身麻酔の処置 それぞれのメリット・デメリット~

前回までは、家庭での歯磨きトレーニング方法(子犬編・成犬編)や、新しい口腔ケアである「オゾン歯磨きとオゾンオイル」についてお話しました。今回は歯周病になってしまった場合の治療方法についてお話します。


歯周病の治療方法について

日々、歯磨きをして口腔内を常にきれいにしておくことで歯周病を予防することが出来ます。ただ歯磨きがうまく出来ないワンちゃんの場合、プラークコントロールが出来ないために歯周病が進行しやすい傾向にあります。

※歯周病については、過去記事をご覧ください。
犬の歯周病について1 ~歯肉炎と歯周炎、歯石ができるまで~
犬の歯周病について2 ~歯肉炎・歯周炎・歯石の症例~
犬の歯周病について3 ~歯周病が進行すると~


犬の歯周病治療における、無麻酔下の処置と全身麻酔下の処置のメリット・デメリット比較

もし歯周病になってしまった場合は、動物病院で治療をする必要があります。どのように治療するかは口腔内の歯石の量や歯肉炎の重症度、歯周病の進行度合いによって選択されます。
大きく分けると、無麻酔下の処置全身麻酔下の処置に分けられますが、それぞれにメリットとデメリットがあるので、何を優先するかは獣医師と相談の上、オーナー様に決めていただきます。

それぞれの方法における、メリット・デメリットをまとめましたので、次の表をご覧ください。

なお、歯周病による合併症を併発してしまった犬は、全身麻酔下での処置が必須になりますので、麻酔リスクのご同意をいただいてから処置になります。
※歯周病がもたらす合併症については、こちらをご覧ください。

麻酔下、無麻酔下での歯周病治療のメリットデメリット比較表


「無麻酔下」での歯周病の処置

無麻酔下での処置は、歯周病が進行していない歯が対象となります。これは、主に歯石除去で処置完了となる場合に当たります。


無麻酔下の処置方法

1.犬を診察台の上で保定する。

2.犬の様子を見ながら(暴れたりしないか、咬もうとしないか、呼吸状態は安定しているか、など)ゆっくりと唇をめくる。

無麻酔下処置での犬の保定 無麻酔下処置での犬の確認1

無麻酔下処置での犬の確認2 無麻酔下処置での犬の確認3


3.消毒をする。

4.歯の表側についている歯石を、ハンドスケーラーや鉗子で取る。
ハンドスケーラーや鉗子で歯石を取る際は、歯の表層(エナメル質)を傷つけないように気をつけます。

歯石取りの前の消毒 歯石を取るためのスケーラー・鉗子

鉗子で歯石を取る様子

取れた歯石


5.歯石除去後の歯 きれいになりました!

歯石除去の後の歯の様子


6.オゾン歯磨きを加える場合は、歯石除去をした後に行います。
オゾン歯磨きについてはこちらをご覧ください。


無麻酔下での治療にあたっての注意点

・歯石除去ができるところは主に上顎の歯が中心になります。下顎の歯は上顎と重なっているため難易度が高く、犬が協力的(とてもおとなしい性格)でなければ歯石除去は困難です。

・歯の裏側についた歯石の除去はできません。裏側まで厚い歯石が付いている場合は、全身麻酔下の処置をおすすめすることになります。

・歯根の露出があったり、動揺している(ぐらぐらしている)歯については痛みを伴うことが多く、犬も触られるのを嫌がります。歯周病が進行している歯については全身麻酔下での処置をおすすめすることになります。

・ハンドスケーラーの使い方には知識や技術が必要なため、一般の方が使うことはおすすめしません。


「麻酔下」での歯周病の処置


全身麻酔下による処置手順について

1.処置には予約が必要となります。
また処置日はオーナー様のスケジュールで一日空いている日を選んでもらいます。これは麻酔中に何かあった場合はすぐに病院に来ていただける日、という意味です。

2.当日は絶食絶水で午前10時ころまでに来院していただきます。

3.午前中に術前検査(血液検査&胸のレントゲン)を行います。
何か問題があれば電話にてオーナー様と相談します。

レントゲン写真例1 レントゲン写真例2

血液検査例


4.午前中から点滴を始めて、お昼に処置を行います。
処置方法についてはページ下部をご覧ください

5.処置時間は抜歯がなければ約1時間程度。抜歯がある場合は歯の状態や本数により少し延長します。

6.麻酔後は十分に覚醒してからお迎えに来ていただきます(だいたい夕方頃です)。
その後はお家でゆっくり過ごしていただきます。夜ご飯はいつもより少なめになりますが食べても大丈夫です。お帰りの際に詳しく説明をいたします。


全身麻酔下の処置方法

1.鎮静後、麻酔導入し、吸入麻酔を始める。

麻酔導入時の写真


2.超音波スケーラーで歯石を除去していきます。歯の裏側に付いている歯石もきれいに落とせます。

超音波スケーラー 超音波スケーラーによる歯石除去1

超音波スケーラーによる歯石除去2 歯についてしまった歯石

歯の裏側についた歯石


3.抜歯をする。

抜かれた歯


4.歯を研磨する(歯の表面のミクロの凹凸を滑らかにする)。
マイクロエンジンを使って、荒研磨、仕上げ研磨をします。

荒研磨のブラシ 荒研磨剤

仕上げ研磨のブラシ 仕上げ研磨剤


5.きれいな歯になりました!

治療後の歯の様子


以上が、無麻酔下、全身麻酔下における歯石除去や歯周病治療の手順となります。以前の記事でもお伝えしましたが、歯石が原因で歯肉炎や歯周病が発生します。
ついてしまった歯石についてはご家庭でのケアは困難です。状態が悪くなる前に、動物病院の獣医師にご相談下さい。



この記事のお問合せ先

写真

自由ヶ丘動物医療センター
獣医師 寺村 靖史

  • 2010年3月 北海道大学獣医学部 卒業
  • 2010年4月~2015年2月 ルカ動物医療センター 勤務
  • 2015年4月 代官山動物病院、GREENDOG東京ミッドタウンクリニック 勤務

メッセージ

小さい頃から動物と接することが大好きで、生き物の「からだ」の不思議や科学にとても興味がありました。病気を治すだけが獣医の仕事ではないですが、病気を治すのが獣医の一番大切なことです。 常に新しい情報や治療を探し、それぞれの動物にとって一番良い選択について誠心誠意をもってお話をし、飼い主様と一緒に選択できればいいなと考えています。 軟部外科、画像診断、免疫疾患が得意です。
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自由ヶ丘動物医療センター

〒152-0023
東京都目黒区八雲3-24-9自由が丘キューブ1F

TEL:03-5726-8440(直通)

営業時間(年中無休) 9:00~12:30/16:00~19:00
※12:30~16:00は手術対応時間になります。

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