【連載コラム】「日々のあわい」(第2回)「ママ、サボってないから」と言ってしまった話

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連載コラム「日々のあわい」(第2回)
「ママ、サボってないから」と言ってしまった話

野原に咲くたんぽぽ

第2回

4月から息子が保育園に通い始めるので、入園準備を進めている。
靴下、歯ブラシ、オムツ一枚一枚にも、
持ち物には全てに名前を書かないといけない。
お昼寝用の布団にデカデカと、息子の名前をやっとこさ縫いつけ終わった。
自慢じゃないが、洋裁はもちろん、家事全般がニガテ。
自分が子供の為にいそいそと「お名前つけ」をする日が来るなんて、以前の私なら想像もしなかったことだ。

育児なんて、子供が生まれたらみんなやっていることなんだから、私にもできるでしょう。そう思っていた。
だけど、いざ子供が生まれると、日々のお世話の大変さに、自分の考えが甘かったことを思い知らされた。
本当に、世の中の全てのお母さんを私は讃えたい。
それでも、子供が寝っ転がっているだけの頃は私もまだ余裕があったのだが、自分で動き回ることができるようになり、自我も芽生え始めてくると、危なっかしくて、一日中かかりっきりである。
ふと見ると、道ばたに落ちている物を口に入れている。
ちょっとした隙に、段差によじ登ってたりする。
駄目と言いたくなくいのに、駄目を連呼してしまい、落ち込む。
子供が深夜に起きて、いつまでも寝ない時などは、疲れと眠気でイライラしてしまう。
ああ、なんて自分はキャパシティが小さいんだろう、
きっと母親に向いていないんだ、と思う。
しかし、大変なのはこれからだというのに、今からこんなことで、どうするんだ、私。

先日、夕食を作っていた時のことである。
相手をしてくれないのがつまらないのだろう。
息子はぐずり、金切り声を上げて、泣き叫びはじめた。
その時つい、
「ごめんね!ちょっと待ってて!ママ、サボってないからね」
という言葉が口をついて出た。
それで、ハッとした。
そうか、私、サボっちゃいけないって思ってるんだ、と気づいた。

ひとり親になることを選んだ時、息子にとっても、自分にとっても、これが幸せって思えるよう、精一杯努力すればいいんだと思っていた。
でも、いつのまにか、その「精一杯の努力」が、「サボっちゃいけない」にすり替わってしまっていたのである。
サボっちゃいけないから頑張るなんて、小学生の宿題みたい。
仕方なくやってるみたいじゃないか。
これではいかん、と思い直した。

とりあえず、自分のキャパシティが小さいことは素直に認めよう。
「おおらかで素敵なお母さん」にはなれなくてもいい。
自分のペースで「まともな親」になろうと決めた。その方が、自分にしっくり来る。
たまにはサボってもいいじゃないか。
今この瞬間の、目の前の息子をちゃんと見つめる為の余裕を持とう。
というように、自分の心の軌道修正をしたのである。

保育園から指定があった物を細々と揃え、概ね準備は完了した。
入園式用の子供の洋服や靴も揃えた。
息子は新しいローファーが気に入ったらしく、
何度も取り出しては、自分で履く真似をしている。

一年前には、自分で寝返りもできなかった小さい人は、
もうすぐ、はじめて社会の仲間入りをする。
知らない人、知らない場所、いろんな経験を経てどんな子に育っていくんだろう。
私も、焦らず焦らず、息子とともに成長していきたいと思う。

春本番が近い。
ピカピカの小さなローファーが、ちょこんと並んで出番の日を待っている。

プロフィール

秋山聡子

シンガーソングライター、文筆家(文芸思潮現代詩賞 奨励賞受賞)

1980 年生まれ。1 児(1 歳)の母。
父、母、息子、犬のルーク(ラブラドールレトリバー)、猫のグリ(元ノラ猫)と、兵庫県の田舎のほうに住んでいます。

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