【連載コラム】「日々のあわい」(第4回)お変わりありませんか

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連載コラム「日々のあわい」(第4回)
お変わりありませんか

万年筆とPILOTの色彩雫というインク

第4回

手紙を書く時や、
趣味で続けている短歌の歌稿を作る時、
最近万年筆を使うことにハマっている。
字があまり上手くないので、手書きは気が進まないのだが、
万年筆を使うとちょっとはマシな字に見える気がする。
安物の万年筆だが、ボールペンより紙に引っかかる感じがなくて、
書いていて断然心地よいし、疲れない。

インクには、PILOTの色彩雫というシリーズを使っている。
同じ青色でも数種類の色味のボトルがあり、
それぞれ「月夜」、「紫陽花」、「深海」などと、
素敵な名前が付けられていて、
文房具好きの心をくすぐる商品なのである。
これがきっかけで、自分が苦手なことや、億劫なことに、
ささやかな投資をするのってアリだな、と最近思い始めた。
好きなことや、得意なことについついお金を使いがちだが、
苦手なことでも、どうせやるなら楽しくできた方がいいから、
ツールにお金をかけるのだ。
そうやって、自分のご機嫌を取ってやれば、
苦手なことに使う時間も、ちょっと楽しみな時間に変わる。

しかし、LINEやメールで事足りてしまい、
字を書く機会なんかもうほとんどない、という人も多いだろう。
私もその一人だが、
字を書くことは苦手でも、手紙は昔から好きなのだ。
送るのも、もらうのも。
手紙を送る相手や、シーンによって、
どんな便箋で書くか、どんな封筒を使うか、選ぶのは楽しいものだし、
受け取った手紙からは、送り手の心遣いやセンスが垣間見える。

筆跡を見るのも結構面白い。
字と本人のイメージって、結構違う場合が多い気がするんだけど、気のせいだろうか。
仕事先に、すごく頭が良く、仕事ができて、対応もいつもスマートな男性がいるのだけど、
その人の字を見た時、本当にミミズがのたくったような子供みたいな字で、
なんだか逆に好感度が上がった。
長年お付き合いがある人でも、その人の書く字を初めて見て、
「あ、こんな字を書くんだ」と、
相手の隠された一面を見たような、新鮮な驚きを覚えることもある。
字を見ると、その人との距離が縮まる。
親近感が湧く、そんな気がする。
なので、私も字の下手さはさほど気にせず、
折々に手紙を書こうと思う。

コロナ禍で人と会う機会が減り、
一時期はオンライン飲み会なんてのもやったし、
仕事のミーティングなどもオンラインで行うのが主流となった。
都会まで出るのに数時間かかるような地方に住む私としては、
便利で助かっていることの方が正直多い。
でも画面越しのコミュニケーションの味気なさを感じているのは、
きっと私だけではないだろう。
じかに会うというのは、かけがえのないことだと、
改めて思う日々であった。

手紙は、じかに会って話すことの代わりには到底ならないし、
また別物だけれど、
コミュニケーションツールとして、
画面越しやSNSよりは、上等かなって気がしている。
手紙には、送り手が、それを書くのに費やした時間が染み込んでいる。
それに、自らの意思を相手に伝えようと苦心して選ばれた、
使い捨てでない言葉たちがある。
それらによって、手紙には送り手の気配が宿るように思う。
その気配こそが、手紙特有の魅力なんじゃないだろうか。

最近は、手紙の書き始めに、
「お変わりありませんか」と書く。
以前は「お元気でいらっしゃいますか」と、何の気なしに書いていたのだけれど、
最近の「お変わりありませんか」には、なんかこう・・・重みがある。
なんの変哲もない日常のありがたみを痛感する出来事が、最近多いから。
「変わりなく過ごしていますよ」と笑うあの人の顔を想像しながら、
思いを込めて、「お変わりありませんか」と書く。

プロフィール

秋山聡子

シンガーソングライター、文筆家(文芸思潮現代詩賞 奨励賞受賞)

1980 年生まれ。1 児(1 歳)の母。
父、母、息子、犬のルーク(ラブラドールレトリバー)、猫のグリ(元ノラ猫)と、兵庫県の田舎のほうに住んでいます。

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