【連載コラム】「日々のあわい」(第6回)田舎暮らしのススメ 冬の花火に思うこと

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連載コラム「日々のあわい」(第6回)
田舎暮らしのススメ 冬の花火に思うこと

のどかな田園風景

第6回

なにわ淀川花火大会が三年ぶりに開催予定らしい。今年はまだ開催中止の花火大会も多いだろうけど、こうして段々と日常が戻ってくるんだろう。
コロナ以前から、私はしばらく夏の花火は見ていないのだが、実は先日、めずらしい冬の花火を見ることができた。しかも自宅のすぐ近くで。
今回はその時のことを書こうと思う。

今年の一月、村の自治会の有志が企画し、コロナ禍の地元を盛り上げるため、冬の花火を打ち上げたのである。
企画は春ごろから始まっていたようだ。企画を知るのは自治会員のみ。事前にカンパを求める連絡が回ってきたので、我が家もいくらか協力した。冬の花火なんてなかなか見られないから、楽しみにしていた。

花火の日の当日、だんだんと日も暮れかけてきた頃だった。
「・・・・から花火を打ち上げます」と町内放送でアナウンスがあった。
しかし、音声にノイズが混じって、一体何時から始まるのか聞き取れない。一旦子どもを連れて外に出て、冬の寒さの中、待ってはみたものの、一向に始まる気配もない。近所の人もわらわらと出てきたので、「何時からですかね~」などと、白い息を吐きながら言い合う。
皆の中に秘密を共有しているというワクワク感がある。ちょっと浮ついた雰囲気もなんだか楽しかった。

しかし、待っている間にも体は冷えてきてしまう。どうしよう、子供が風邪をひいたらいけないし、一旦戻ろうか・・・などとぐずぐず考えていた時。
ドンと大きな音がして、眼の前の田んぼから火の粉が散り、次の瞬間、頭上に大輪の花が咲いた。そして次々と、鮮やかな花火が冷たい夜の空を彩った。
花火は思っていた以上にたくさん打ち上げられた。後で聞いたところによると、百発も打ち上げられたそうだ。

冬の花火は美しかったし、勇気づけられるものだった。通りがかりに偶然花火を見た人を除けば、実際あの瞬間に花火を眺めていたのは、数十人てとこだろうか。ただ皆で同じ夜空を見上げている、それだけのことだったが、なんともいえない良い時間だった。
連帯感にも似た、横の繋がりをとても強く感じた。この小さなコミュニティの中に、自分は属しているんだという実感。ひとりじゃないんだな、皆で生きているんだなと思い、心がじんわり温かくなった。

田舎、都会、といっても色々あるだろうから一概には言えないけど、私の暮らす地域では、やはり都会と比べて、人々が関わり合い、皆で協力し合って暮らしているように見える。
土手の草刈り、公民館の清掃、地元の神社や地蔵尊の行事、すべて皆で交代で、もしくは協力してやる。定期的に集会もあるし、役員や係も当番制でもれなく回ってくる。
はっきり言って面倒だな・・・と思ってしまうけど、そうして、なにかにつけてご近所さんと関わる機会があるので、一人一人が孤独になりにくいという環境が出来上がっているように思う。

私はずっと、ご近所付き合いは得意じゃないと思っていたし、一人の時間が好きで、できるだけ一人がいいなと思っていた。でも四十代になって、遅ればせながら気づいたことがある。一人がいいけど、孤立したいわけではないのである。自分が望みさえすれば、いつでも交われる人間関係がある。 そういう安心感があって、その上での孤独がよいのであって、本当のひとりぼっちは嫌なのである。自分勝手な言い分ではあるが、でも、誰しもそうなんじゃないだろうか。

なので、人との横の繋がりを感じながら暮らすというこの環境を、恵まれているなあと感じるし、今の自分にとてもフィットしていると思う。それに、こういう環境で子育てできることも、とてもありがたい。これから息子が成長していく中で、ひとりじゃないって感じられることは、結構大切なんじゃないかと思うから。

ここに暮らしはじめて二年目になるが、冬の花火は、田舎暮らしの良さを、改めて私に感じさせてくれるものだった。
そういえば、田舎暮らしには「皆の目がある」と、村の人はよく言うのだが、これには二つ意味があると最近気づいた。

皆が見ているから煩わしいという意味と、皆が見ていてくれるから安心という意味。

もしかしたら、煩わしさと安心感というものは、常に表裏一体なんじゃないだろうか、と思ったりしている。

プロフィール

秋山聡子

シンガーソングライター、文筆家(文芸思潮現代詩賞 奨励賞受賞)

1980 年生まれ。1 児(1 歳)の母。
父、母、息子、犬のルーク(ラブラドールレトリバー)、猫のグリ(元ノラ猫)と、兵庫県の田舎のほうに住んでいます。

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