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- 【連載コラム】「日々のあわい」(第9回)余裕を生むワンアクション
連載コラム「日々のあわい」(第9回)
余裕を生むワンアクション
第9回
また風邪をひいてしまった。咳と鼻水、そして熱のせいか頭がぼーっとする。典型的な風邪症状である。今まで大きな病気はほとんどしたことがないが、疲れるとこうやってすぐ体に出てしまう。
私の場合、体調を崩す時はたいてい余裕のなさが原因だ。たとえば、寒い日に仕事に夢中になっていて、気づいたら足がキンキンに冷えていたり、外出中に雨に降られてしまった時、息子を乾かすのに必死で、自分もずぶ濡れなのを忘れていたり。そういうことから風邪をひいたり、体調を崩したりする。なにかに夢中になると、なにかがおざなりになってしまう性質なのである。
体調不良とは関係がないが、先日は右足の小指を扉の角でしこたまぶつけ、小指にヒビが入るという怪我をした。
その時は、父が「S(←息子)」が血を吐いた!」と言って大騒ぎしたので、私も動転し余裕がなくなって、部屋から出る際につまずいて大転倒をしてしまったのだ。結局、息子が吐いたのは、私が数時間前に飲ませた人参ジュースだったことが後から判明。とんだ慌てんぼう家族である。私も自分が飲ませたことを忘れていたわけで、未だに小指は痛むが、自業自得としか言いようがない。「余裕の無さ」は失敗を生むということである。
この余裕の無さはどうしたことだろうよ・・・と考えてみると、今はやはり子育ても仕事も忙しいし、仕方がないよなあという言い訳がつい出てしまう。しかし、だからといって、このように体調不良やら怪我やらも困るので、なにかこう、生活に余裕を生むワンアクションが必要だと思い始めた。とにかくお手軽にできることがいいな、と考えていた時に、以前、朝起きて白湯を一杯飲むことを続けていて、わりと体調が良かったことを思い出した。それで、また一日一杯の白湯習慣を再開してみることにした。
できれば朝起きた時に、それが無理な場合は、仕事前や、夜息子が寝ついた後に、一人でなるべく時間をかけて、ゆっくりと白湯を飲む。白湯って不思議な飲み物だ。ただのお湯なのだが味わって飲むとなぜか美味しい。
カップは、少し前に買った尾形アツシさんのマグカップを使っている。これでブラックコーヒーを飲みたい!と思って購入した渋いカップだが、サイズが程よいのでもっぱら白湯用になってしまった。力強い刷毛目が素敵なこのカップを眺めるたびに、少し贅沢な気分になれる。
ゆっくりと白湯を味わう時、ふうっと肩の力が抜けて、体がぽかぽかとし、ドタバタとしていた心が整っていくのを感じる。たとえ短い時間でも、温かい飲み物をゆっくり飲む、ということは、実は人間にとってすごく必要なことなんじゃないかと思えてくる。そういえば、しばらくこんな時間は取れていなかったな~と実感する。
「子供が小さいうちは自分のやりたいことができない」という話はよく聞いていた。けれど、子育ての知識がまるでなかった私は、それは例えば、本がゆっくり読めないとか、友達と気軽に出かけられないとか、そういう類の話だろうと思っていた。まさか、トイレに行きたい時に行けないとか、飲み物を飲みたい時に飲めないとか、そういうことだったとは・・・!子供が生まれてからようやくそのことに気づいたのである。
しかし、息子ももう2歳を迎える頃になり、段々と自分でできることも増えてきた。それに伴って私も、一人で温かい飲み物をゆっくり飲む、というちょっとした時間も取れるようになってきたのだ。同じように見える毎日でも、変化しているんだなあとしみじみとしてしまう。いずれ息子が大きくなったら、思う存分一人でゆっくりと過ごせる時間がまた増えてくるのだろうけど、たぶんそうなったら、私はこんなドタバタな日々を思い出して、少し寂しくなるんだろうなと思ったりした。
体調を崩したときには健康のありがたみが身に沁みる。健康は幸せの要であるのだから、心と体のメンテナンスはちゃんとしておかねば。本当は運動もしなきゃと思っているのだけれど・・・それは今後の目標として、とりあえず、一日一杯の白湯習慣を続けてみようと思っている。
皆さんはどんな風にご自分の心と体のメンテナンスをされているだろうか。
プロフィール
秋山聡子
シンガーソングライター、文筆家(文芸思潮現代詩賞 奨励賞受賞)
1980 年生まれ。1 児(1 歳)の母。
父、母、息子、犬のルーク(ラブラドールレトリバー)、猫のグリ(元ノラ猫)と、兵庫県の田舎のほうに住んでいます。