東京にきた被災動物たちの今東京都動物救援本部を訪問して

東京にきた、被災動物(犬・猫)たちの今

2011年3月11日14時46分、日本の観測史上最大のマグニチュードを記録した東日本大震災の発生により、多くの人、そして動物が被災しました。震災発生後、GREEN DOGでも多くのお客様にご協力をいただいて、緊急災害時動物救援本部への寄付などを行ってきました。

今回、震災から1年が経とうとしているなか、東日本大震災東京都動物救援本部(以下、東京都動物救援本部)の動物救援センターを訪れる機会をいただけたため、2012年2月21日、GREEN DOGスタッフが東京都日野市にあるセンターを訪問し、センター長の山口千津子さんにお話を伺ってきました。

東日本大震災東京都動物救援本部

※多摩川沿いの、東京都動物愛護相談センター多摩支所の隣接地に東京都動物救援本部があります。

東日本大震災東京都動物救援本部とは?

東京都動物救援本部は、東京に動物を連れて避難してきた被災者を支援するため、2011年7月に発足しました。東京都家庭動物愛護協会、東京都獣医師会、日本動物愛護協会、日本動物福祉協会、日本愛玩動物協会の5団体によって運営されており、東京都が活動場所の提供などで活動に協力しています。

また緊急災害時動物救援本部は運営資金や物資、人材の派遣などの運営サポートを行なっており、全国の皆さんから寄せられた寄付や物資は、東京都動物救援センターを含む、各地の団体に振り分けられています。

各地の団体に振り分けられています。

センターの活動について、山口さんにお話をお伺いしました。

GREEN
DOG

このセンターが発足した経緯を教えてください。

山口さん

震災2日後ほどから、東京へ同行避難された方から一時預かりをして欲しいという問い合わせが出始めました。当時は、そのニーズに応える形で東京都獣医師会に属する獣医師の有志が一時預かりを行ったり、都が設けた避難所で同行避難を受け付けたりしていました。
そして時間が経ち、一時避難されていた方が都営住宅などに移りはじめたのですが、一緒に移れる方もいれば、やはり難しいケースも...。そういう方たちの犬猫を一時的に預かる施設として、この動物救援センターが立ち上がりました。

GREEN
DOG

現在の運営状況を教えてください。

山口さん

現在、犬15頭・猫11頭をあずかっています(2012.02.15現在)。ほとんどが先ほどお話したとおり、同行避難をされてきた方の一時預かりですが、福島県動物救援本部が運営しているシェルターから、飼い主が所有権を放棄した、または1ヶ月の公示期間を示しても飼い主が現れなかった犬4頭を引き受けてもいます。

GREEN
DOG

センターを運営する上で気をつけていることは何ですか。

山口さん

まずは清潔に保つことです。このような施設で一番怖いことは感染症が発生すること。そのため清掃は徹底して行なっています。また預っている犬や猫を逃がさない、怪我をさせないことにもすごく注意を払っています。

GREEN
DOG

センター運営ではやはり犬猫の世話が中心ですか?

山口さん

実は掃除・洗濯や大工仕事など、犬猫の世話以外の仕事も多いですよ。例えば猫舎の窓には逃走防止用の網を設置しており、猫が外を見ながら窓を開けることができるような工夫をしています。これは最初から設置されていたものでなく、ボランティアの方たちと協力し、資材を自分たちで買ってきて設置しました。ただ犬舎は猫舎よりも丈夫な枠が必要ですが、建物を傷つけずに丈夫な枠を設置する方法がまだ見つかっていません。夏に向けて、暑さ対策をどうするかということと併せて考えていく必要があります。このように犬猫が過ごしやすいように設備を変えていくことも重要な仕事です。

これらの窓枠や、部屋の中の間仕切りは全てボランティアの方が設置したもの。

これらの窓枠や、部屋の中の間仕切りは全てボランティアの方が設置したもの。あちらこちらに動物が快適に過ごせるような創意工夫が見られます。

GREEN
DOG

今回の大震災で何を感じられましたか?

山口さん

平常時から飼い主が自らの責任をしっかり果たしておくことがとても重要と感じています。同行避難の受け入れについては飼い主の方にとって大きな問題ですが、もし同行避難ができても避難先でトラブルが絶えないようであれば、それ以降、同行避難は広まっていきません。

ワクチン摂取・フィラリア予防・不妊去勢手術・ノミダニの予防などの健康管理、また犬であれば人と共生できるようにしつけを行なっておく。これらは緊急時の防災グッズを用意するのと併せて、平常時に行なっておくべきことです。飼い主の皆さんが普段からしっかりと責任を果たした上で、国や自治体に働きかけ、同行避難を受け入れてもらえる環境を整えていくことが重要と思います。

また今回の広域大規模災害で、迷子札やマイクロチップの重要性を改めて感じました。これは実際に起こっている大きな問題ですが、当時の大きな混乱の中、また広範囲にわたる被災状況も相まって、どこの家・地域から保護したのかわからなくなっているケースもあり、元の飼い主にたどり着くことが困難な状況も生まれています。
迷子札やマイクロチップをもし装着していれば、このようなケースも減るはずです。ただ迷子札も自然に外れてしまうこともあります。今回のような災害に備え、マイクロチップの装着を飼い主の方にぜひ考えていただきたいです。

GREEN
DOG

福島の現状について教えてください。

山口さん

まだ300頭以上が保護されている状況です(2012.02.01現在、犬249頭・猫72頭を預かり中とのことです。福島県動物救護本部のHPより)。20km圏内は引き続き立入禁止で戻ることができず、それでもそこに一緒に帰りたい飼い主の方たちの犬猫の預かりが続いている状況です。ただそんな中でも飼い主の方が所有権を放棄した犬猫については、東京都動物救援本部など、移動先の救援本部で新たな飼い主を見つけるケースも増えてきています。移動先で新たな飼い主を見つけることが進めば、その分またそこの救援本部では受け入れ枠ができるので、福島の救援本部の負担も改善されていくはずです。

GREEN
DOG

最後にまだ必要としている支援を教えてください。

山口さん

まだまだ資金が必要です。運営資金は緊急災害時動物救援本部に集まった寄付金の交付と、東京都動物救援本部へ直接寄せられた寄付金でやり繰りしていますが、地震から日が経つにつれて募金額は大きく減ってきています。
運営をボランティアだけで回していくことは難しく、スタッフを雇用し、ボランティアの方がゼロの日でもしっかりと運営できる状態をつくる必要がありますし、施設運用や動物たちの医療費の確保も必要です。資金面での支援を引き続きお願いできればと思います。またボランティアや、物資支援も喜んで受け付けています。もしご協力頂ける方は、東京都動物救援本部のホームページをまずご覧いただければと思います。

あとは福島からきた4頭の犬について新たな飼い主探しをしています。譲渡時に審査はさせていただきますが、犬を飼う予定がある、または周りに犬を飼うことを検討している方がいらっしゃる場合は、ぜひ候補先として検討してください。この4頭に新しいお家が決まれば、いま福島で新たな飼い主を待っている犬猫たちをこちらに連れてきて、チャンスを与えることができます。こちらもぜひお願いできればと思います。

犬舎・猫舎の中を見せていただました

犬舎・猫舎の中を見せていただました

① プレハブの犬舎・猫舎は整理整頓されており、清掃を徹底しているという言葉どおり、においも全くしませんでした。動物の世話に使うものの洗浄や洗濯はこまめに行われています。

② 逃走防止のため犬舎の入り口は2重になっており、各部屋にも内ドアが設置されています。右はバーニーズのバニラのお部屋です。

③各部屋のドアにはスタッフの方の愛情あふれる手書きの似顔絵が。

③各部屋のドアにはスタッフの方の愛情あふれる手書きの似顔絵が。またドアの横には注意点が細かく記載されたホワイトボードがあります。

④部屋は相性や大きさなどによって割り振られます。

④部屋は相性や大きさなどによって割り振られます。

⑤ 猫舎にはケージの部屋に加え、プレイルームという日中過ごせる場所が併設されています。プレイルームにはスタッフの方が手作りされた「外覗き時の足場」となるダンボールのアスレチックがあります(写真右、窓際のもの)。

⑥ 外にはパドックと呼ばれるスペースが3つあり、そこにはウッドチップが敷き詰められています。日中はここで過ごすこともあるそうです。

今回の訪問を終えて

災害特集を行うにあたって実施したアンケートに寄せられた声、そして今回の訪問を通じて思ったことは、普段からの準備が何よりも大切ということです。アンケートに寄せられた声では、今回の震災でクレートトレーニングを普段から行うことの重要性を感じられた方が多く見られました。また山口さんからも緊急時のために防災グッズを用意すると共に、普段の健康管理やしつけなどの準備がとにかく重要で、それをぜひ伝えてくださいというお言葉をいただきました。

東海・東南海・南海連動地震や首都直下型地震の発生が叫ばれており、また地震以外の災害も含め、今後も数多くの大規模災害が起こると思われます。自然の上に私たちの生活が成り立っている以上、これらの自然災害は避けることができません。いつか起こるであろう災害に備えて、自らのパートナーを守るための準備ができるのはオーナーである皆さん自身だけです。この特集を見て、ご家庭での災害への備えを改めて考えなおしていただければ幸いです。