2017.04.03心のケア

犬の行動学専門獣医師が解説!犬が舐める理由とやめさせる方法とは

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犬の行動学専門獣医師が解説!犬が舐める理由とやめさせる方法とは

「犬がしつこく何かを舐める行為が心配なのでやめさせたい」「もしかして心の病気では?」などと心配する飼い主さんがいるかもしれません。

今回は、犬が何かをしきりに舐める行為の背景にある意味やそのときの犬の気持ちについて、代官山動物病院の獣医師で、獣医行動診療科認定医の藤井仁美先生が解説します。

犬はなぜ舐めるの?

犬の行動学専門獣医師が解説!犬が舐める理由とやめさせる方法とは

頻繁に、しつこく愛犬が何かを舐め続ける行為を見ると、飼い主としては心配になりますね。人の顔、人の口、飼い主の傷、犬(自分)の足、特定の物(カーペット、ソファーなど)を舐める犬が少なくありません。

犬はなぜ舐めるのでしょうか。それぞれの部位によって舐める意味は異なるのでしょうか。犬が舐める理由について、その対象物ごとに解説します。

  

犬自身の部位(足先など)を舐める

四肢の先や体の一部など、犬が自分の皮膚を舐めるのは、皮膚の表面の炎症や内部(神経など)の炎症などがあり、痛い、痒い、しびれる(疼痛)などの異常が気になって舐めている可能性が高いといえます。ほかには、舐めていることを心配した飼い主さんに声をかけられたことを学習し、飼い主の気をひくために舐める行為をすることもあります。

人間の部位(顔や口など)を舐める

人間のパーツを舐めるときにまず考えられる理由は、犬にとって怪しいにおい、気になるにおいがするということです。ハンドクリームのにおいが気になり、ヒトの手からきれいにぬぐい去りたいと思って舐めたり、食べ物のにおいがするので気になってヒトの口や顔を舐めたりなど。思い当たる節があるのではないでしょうか。

また、ときには人間の傷や病気のにおいを感知して、そこを舐めることもあります。ケガをしたときに愛犬に血を舐められた人もいるのではないでしょうか。近年ではイギリスなどで、ガンや糖尿病などを早期に発見する「ガン探知犬」などをトレーニングしている研究機関 もあります 。ガンなど人間の病気を犬が確実に発見できるかはまだ研究段階ですがいつかそんな日が来るのかもしれません。

それとは逆に、愛犬の体に異変があるときに、飼い主を舐めることもあります。例えば、犬に胃腸の病気があり、ムカムカする、胃痛がするときなどです。犬自身が「痛い」「気持ち悪い」と感じているとき、大好きな飼い主さんを舐めていると、気持ちが落ち着く、という理由から舐めることもあります。

また、飼い主が舐められるのを嫌がっていたとしても、困った笑い声やかまってくれる声を嬉しく感じ、それを学習し、「飼い主を舐めたら、かまってもらえる、気をひくことができる!」と舐める行為をすることもよくあります。


*参照元:Medical Alert Assistance Dogs https://www.medicaldetectiondogs.org.uk

モノ(ソファーやカーペットなど)を舐める

モノを舐める理由は、カーペットやソファーに食べ物が落ちていて、そのにおいが残っていて舐めている場合(においが気になる)や、舐めていると飼い主の関心をひくことができると学習したなどです。

病的に舐める場合とは?

犬が病的に執拗に何かを舐める場合もありますね。その意味や原因は、舐める部位によって異なります。犬の体の異常(皮膚炎など)の身体的な病気のせいなのか、ストレスなどが溜まったために起きる心因性のものなのか、それとも舐める行為が自分にとってメリットになると学習しているものなのか、などを見極めることが必要となります。その見極めは専門家にしてもらったほうが良いでしょう。

舐めることをやめさせる必要性について

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では、何を、どのくらいの頻度で、愛犬が舐めるとき、その行為をやめさせたほうがいいのでしょうか。

頻度が少ない、または短時間の行動であれば、そう深刻なものではないでしょう。

また舐める原因がわかっているのなら、それを取り除いてみて、その後どうなるかを見るのも必要です。たとえば、ハンドクリームのにおいが気になるという理由かな、と思ったら、そのハンドクリームを使うことをやめてみると、それが原因かどうかわかりますね。理由を取り除いてあげれば、犬が妙なものを舐めることが習慣にならずすみますね。以下の点を注意して日頃からパートナーを観察することが、日常でしてあげられる大切なケアとなります。

要注意 舐めるのを止めさせたほうがいい場合

 舐め方が執拗である
 舐めるのが長時間に及ぶ
 1日に何回も何回も繰り返す
 今までもしていたものの、舐める頻度や激しさが増してきた

このような場合には、行動診療科認定医 のような動物行動学、動物心理学に詳しい獣医師を選んで診てもらうことをおすすめします。

やめさせるときは行動診療ができる獣医師へ

舐め続けるのは、しつけやトレーニングの問題かと考え、舐める行為をやめさせるためにトレーナーに相談する人もいるかと思いますが、行動診療ができる獣医師に相談することがベストです。

藤井獣医師によれば、舐める行動は、アレルギーを含め皮膚の問題といった身体的な病気の影響が、心の病の影響よりも多くある印象だそうです。けれども、もともと身体的な病気(皮膚炎など)があったから舐めていたのか、心の病の影響で舐めていたら、舐め壊してしまいその結果、身体的な問題が出てきたのか、あるいは単純に舐めることが癖になってしまったのか、などは、診察をしてみないとわからないことです。そこで、体と心、両方を診ることのできる獣医行動診療科認定医の診断を受けた方がよいそうです。

まずは、全体を診て、身体的な問題があれば身体的な治療を行い、仮に身体的な問題に加えて心因的な問題が絡んでいるのならば、同時進行で行動診療をしている獣医師に行動治療方針を立ててもらうよう相談するのがベストです。

行動診療科認定医であれば、「舐める」という行為が何らかのストレスによる心因性のものなのか、身体的な病気であれば何の検査が必要なのか、必要でないのかについても、消去法で選択することができます。

おわりに

愛犬が何かをしきりに舐める、というとき、なぜだろうと疑問に思いますし、ストレスなのか病気じゃないか、となにかと心配になりますね。また炎症がおきるまで舐めすぎてしまうと、その皮膚炎がますますひどくなり悪化してしまうこともありますので、放置するのはよくありません。

気になる場合は、まず動物病院へ行き健康診断をしてもらうことが大切です。かかりつけ医から行動医療診断のできる獣医師や適切なトレーナーを紹介してもらうこともできます。心と身体の両面から、問題があるのかどうかを診断してもらい、治療の方針と解決方法を決めていくことが大切です。

取材・ライティング:白石 花絵(しらいし かえ)/ドッグジャーナリスト

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監修: 藤井 仁美(ふじい ひとみ)  獣医師 代官山動物病院 行動診療科担当

英国ロンドンで10年間暮らし、伴侶動物の行動学を学び、その知識を生かして動物病院やドッグトレーニングスクールで幅広く活動してきました。GREEN DOG代官山内にある代官山動物病院でも行動問題の治療、しつけ方指導、病気のパートナーのメンタル面(精神面)のケアを専門に行っています。犬や猫が抱える多様なストレスは病気に大きな影響を与えています。病気のパートナーに心のケアを行うと治療効果も上がり、再発予防にもつながることを実感しています。心と体の両方から、パートナーの健康な暮らしをサポートいたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。 1990年 東京農工大学卒 2001年 英国応用ペット行動学センターにて研修、公認インストラクター資格を取得 2007年 英国サザンプトン大学院にて動物行動学を専攻 2009年 伴侶動物行動カウンセラーのディプロマを取得 2013年 獣医行動診療科認定医の資格を取得
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