ストレスや問題行動になるの?犬の分離不安とは
独りぼっちにされたり、特定の誰かと離れたりすることに対し、過度の不安を感じる犬がいます。
犬は社会性が強く、私たち人間と同じように本来は家族を中心とした群れを形成して暮らす習性があります。ですから、愛着のあるものから離れることで生じる不安、いわゆる分離不安を感じるのはむしろ当然のこと。
ただその不安があまりにも強すぎるとストレスとなり、心身に悪影響を及ぼすことがあります。今回は、分離不安の原因や不安を感じるパートナーにしてあげられることについて考えてみましょう。
分離不安の原因
愛着のあるものから離れることで感じる不安。それは犬の社会性の強さに由来しています。
とはいえ、24時間365日、常に誰かが一緒に居られるようにしてあげることは不可能ですよね。実際、日常では何らかの事情で犬が独りになる機会というのはよくあることです。
実は、(たとえ飼い主が意識していなくても)犬はそういった日々の経験を重ねていくなかで、分離に対する不安を徐々に克服してくれています。
「独りになるのはすごく嫌だし不安だけど、ちょっと我慢していれば必ず帰ってきてくれる」ということを、いつのまにか犬は学んでくれているのです。
しかし中には分離の不安を克服することができず、むしろ不安を強めてストレスとなってしまう犬がいます。どんな原因があるでしょうか。
原因 1許容範囲を超えた分離不安にさらされる機会が繰り返されてしまうこと。
分離不安の克服度がまだまだ低い段階であるにもかかわらず、その犬にとって長すぎるお留守番などが何度も繰り返されると、分離不安に対して過敏になってしまうことがあります。特に、心理的な発達に重要な子犬期にそのような機会が多いと、その傾向はさらに強まってしまうようです。早い段階(月齢)で親元から離された犬は、そのリスクがあることを心得ておきましょう。
原因 2日頃の生活で十分に愛情を注がれないこと。
愛情不足は不安やストレスへの耐性を下げて、愛情が十分の場合に比べて分離不安を強めてしまうと考えられています。
原因 3飼い主の愛情のかけ方に歪みがある場合。
人と同じように、犬も心身の成長とともに自分の保護者である飼い主への依存の仕方やその度合いが変化していきます。成長とともに心理的な自立が徐々に促されるのです。
しかし、犬との関係の深め方が適切でないと、その自立を阻害してしまうことがあります。
特に人と犬が常にべったりと接している場合。愛情で結ばれているというより、お互いに依存しすぎている状態です。たとえわずかな時間でも離れたときに、日常の依存の分、犬には分離時の不安が大きく感じられ、ストレスにつながってしまいます。
分離不安による問題行動
犬は、不安やストレスを言葉で訴えることができません。
一緒にいる私たちが普段の様子から気づいてあげることが大切です。
犬の不安やストレスは、体調不良や問題行動によって表面化されます。
パートナーがあてはまるかどうか、リストでチェックしてみましょう。あてはまることが多い場合は、要注意です。
犬の不安チェックリスト
食欲不振
嘔吐
下痢や便秘
つきまとい
不適切な場所での排泄
手足や尻尾を過剰に舐める、もしくは噛む(自傷行為)
過剰な吠え
破壊行動
リストには私たちにとって不都合な行動もいくつかありますが、気をつけたいのは犬の心身の健康に関わるものがあること。気づいた時点で、できるだけ早急に対策をしてあげる必要がありますね。
分離不安のパートナーにしてあげられること
分離不安気味のパートナー。気づいたときに私たちがしてあげられることは何でしょうか。
ココがポイント
分離不安の対処は、犬の行動学に詳しい獣医師やドッグトレーナーに相談すること
すでに分離不安による症状や問題行動が見られる場合、早急な対処が必要です。まずは、犬の行動学に詳しい獣医師やドッグトレーナーを頼りましょう。最近は、行動療法の認定医の資格を有した獣医師もいます。
分離不安のようにストレスが深く関係しているものは、犬の心身の健康に大きな影響を及ぼします。また動物の問題行動に関しては「これひとつですべて解決!」というような魔法の公式はありません。
行動療法専門の獣医師に相談するメリットは計り知れないものがあります。GREEN DOG代官山動物病院では、まだ日本に*6人しかいない獣医行動診療科認定医が診療を行っています。
*2016年9月現在
分離不安の予防4つのステップ
これから犬を家庭に迎える方、犬を迎えたばかりの方、これから犬を独りにする機会が増える方は必見の分離不安の予防4ステップをご紹介します。
日頃から充分に愛情を注ぎ、犬の気持ちを安定させてあげることは必須。その上で以下のステップを試してみましょう。
- ほんの数分間(場合によっては1分未満)、隣の部屋などで犬を独りにしてみます。
- 慣れてきたら、犬の不安やストレスが過度にならないよう慎重に配慮しつつ、徐々に時間や離れる距離を延ばしていきます。
- 独りでいる犬には、何かしら楽しい経験を提供してあげましょう。与えっぱなしにしても安全なオヤツやおもちゃを用意してあげると良いでしょう。
- 短いお留守番から試してみましょう。初めは長くても15分~20分以内からスタートします。
ココがポイント
- いきなり犬を独りにしないこと、もしくは独りにしすぎないこと
- 必ず犬の許容範囲内で実践すること
- 初めは時間、次に距離、と別々にそれぞれの難易度をあげていきましょう。
- 独りでいるときに何かしら楽しい経験を提供してあげると良いでしょう。
- 与えっぱなしにしても安全なオヤツやおもちゃを用意してあげるのも良いでしょう。
- オヤツ、おもちゃの誤飲事故にはじゅうぶんに注意しましょう。
犬の許容範囲を超えてしまうと、分離に対する不安をかえって強めてしまうので要注意です。
犬の許容範囲内かどうかわからない場合は、一度は専門家の指導を仰いだほうが安心です。
おわりに
私たちは、日常的にどうしても犬の問題行動に目を向けがち。けれど、パートナーの不安やストレスはなぜ起こっているのか、という原因を知ることが早い問題解決につながります。なによりも家族の一員であるパートナーを守ることになります。
一般的によく言われている分離不安の対策として、適度な距離で接する(あまりかまわない)、甘やかしすぎたり、かわいがりすぎたりしないこと
私たちGREEN DOGは、そのような接し方は、家族の一員として犬を迎えたことと矛盾していると思います。
愛情不足は犬の情緒不安定につながり、分離不安を強めてしまう原因となります。依存しすぎるのは良くありませんが、犬は人間とは違う動物であることを理解して、ぜひ、かけられるだけの愛情をたっぷりとかけてあげてください。
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Follow @greendog_com遠藤 和義(えんどう かずよし) ドッグトレーナー、ホリスティックケア・カウンセラー
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