教えてトレーナーさん!引っ越しによる犬のストレスと新居に早く慣れる方法とは
犬を連れて新居に引っ越した後、「トイレトレーでおしっこができなくなった」「犬がストレスで夜寝なくなった」「留守番ができなくなった」など、今までは普通にできていたことができなくなってしまうことがあります。愛犬に何がおきているのでしょう。
今回は、引越しによる犬のストレスと新居に愛犬が早く慣れるためのコツをGREEN DOGのトレーナー遠藤さんにお話を伺いました。
引っ越しによる犬のストレスとは?
・気をつけてあげよう!犬の引っ越し後のストレスサイン5つ
引っ越しによる犬のストレスを軽減する方法
・トイレトレーでおしっこができなくなったら?
・夜、寝なくなったら?
・留守番ができなくなったら?
・吠える、夜鳴きをするようになったら?
・食事を変えたわけではないのに、引っ越し後から下痢をしているときは?
引っ越しによる犬のストレスとは?
住み慣れた家から引っ越しすると、新しい環境に順応するまでの間、犬にも大きなストレスがかかります。どの程度のストレスでしょうか。
見知らぬ土地、初めてのにおいのする住まい、あるいは、同居する人間の家族の数が増えたり減ったり…そのような環境の変化に加えて、乗り物酔いする犬は、車、電車、新幹線、飛行機などの移動によるストレスもあります。引っ越しは一大イベント。飼い主さんも気忙しく疲労が溜まりイライラすることもありますね。ただパートナーも敏感にその気持ちを察知し、同調して不安が増すことでストレスになることも考えられます。
忘れてはならないのは、住み慣れた場所から新しい土地に引っ越しする事情や理由は犬には理解できません。犬には、引越しに対して心の準備はできないまま、このような移動や環境の変化がやってきます。犬にとっては相当なストレスだと想像できます。
適度なストレスは良いのですが、ストレス過多になると心身に悪い影響がでます。ストレス性の下痢になったり、神経過敏になり問題行動を起こしやすくなったりします。
気をつけてあげよう!犬の引っ越し後のストレスサイン5つ
トイレトレーでおしっこができなくなった
夜、寝なくなった
留守番ができなくなった
吠える、夜鳴きをするようになった
食事を変えたわけではないのに、引っ越し後から下痢をしている
引っ越しによる犬のストレスを軽減する方法
引越しによる犬のストレス。どうしたらパートナーのストレスを減らし、普段どおりの生活に戻れるようになるのでしょうか。お悩みが多いストレスの対処法をあげてみます。
トイレトレーでおしっこができなくなったら?
トイレのリトレーニング(トレーニングのし直し)をする必要があります。改めて新しい条件(引越し先の環境)のもとでのトイレを教えるのです。今までできていたのですから、初めて教えたときよりは早く覚えるでしょう。その際、新居でも同じ条件、同じような配置にしてあげると、より早く覚えるはずです。たとえば今まで特定の家具のとなりにトイレトレーを置いていたのなら、そうしてあげましょう。また犬自身が一番戸惑っているので、トイレを失敗しても叱ったりしてはいけません。
夜、寝なくなったら?
今まで使っていた犬自身のにおいのついたベッドやケージをそのまま使いましょう。それでも寝ない場合は、そばで一緒に寝てあげるとよいでしょう。子犬を初めてわが家に迎えたときと同じ要領です。
留守番ができなくなったら?
知らない場所に置き去りにされたと感じてしまうため、新しい家で留守番ができなくなる犬がいます。その場合は、もう一度トレーニングをします。新しい環境に慣れるまでは、なるべくひとりぼっちにしないようにし、慣れてきたらちょっとずつ離れ、パートナーがひとりになる時間を増やしていきましょう。引っ越し後、しばらく自宅で一緒にいてあげられるように、ゴールデンウィークやお盆休みなど、長期休暇のタイミングに引っ越しするのがおすすめです。
吠える、夜鳴きをするようになったら?
ストレスで過敏になっているために、吠えたり、夜鳴きをすることがあります。リトレーニングが必要です。ちょっとした刺激でも吠えてしまうので、刺激を避けるように環境を整えます。たとえば、外の音に反応するのなら、なるべく往来から離れた奥の部屋で過ごすようにさせたり、テレビやラジオをつけて外の音を聞こえないようにします。また視覚的なモノが刺激となり吠えてしまうのなら、カーテンをして外が見えないようにしたり、ケージにバスタオルや毛布をすっぽりとかぶせてしまい、外が見えないようにするとよいでしょう。
犬が夜鳴きをするときは?詳しくはコチラを読む→子犬の夜泣きの原因と対策、していいこと&いけないこと
食事を変えたわけではないのに、引っ越し後から下痢をしているときは?
移動の疲れか、ストレスか、引越し後に下痢をする犬がいます。そういうときは、迷わず動物病院へ。小型犬や子犬はとくに脱水症状や低血糖などで重篤な症状になりかねません。ただでさえ環境変化でさまざまなストレスが強くかかっているときです。軽く考えず、できるだけ早く獣医師の指示を仰ぎましょう。
その他、引越しの移動日当日は、嘔吐を防止するために食事は少なめにするとよいでしょう。移動直前に食事をさせるのは良くありません。絶食させる場合もありますが、空腹すぎても吐き気をもよおす犬がいますので、一概には言えません。普段から移動の練習をしておいて、パートナーにとってベストな食事量やタイミングを見極められるのが理想です。
犬の輸送方法で気をつけることは?
引越し時の輸送方法では、車、電車、飛行機、ペット専門の引越し業者に委託するなどの方法があります。
車で引っ越す場合、犬のクレート をトランクや後部座席に固定してその中に犬を入れます。抱っこして車で移動するのは、自分たちだけでなく他者を巻き込む事故になりかねない危険行為です。車内ではクレートに入れるというルールを徹底し、引っ越し前から練習しておきましょう。引っ越し当日、遠距離ドライブになる場合は、2時間おき程度で休憩し、外の空気を吸わせて気分転換や水分補給をしてあげましょう。
電車移動も同じく、事前に練習しておくようにしましょう。車内でキャリーバッグから顔をだすのはマナー違反です。また乗車できる犬のサイズや乗車運賃の額は、JR、私鉄、新幹線などでルールが異なります。事前に調べておきましょう。
飛行機はいちばんストレスがかかる移動方法です。ごはんは絶食させるか、早めに少量を与える程度にとどめます。トイレも済ませてあげましょう。短頭種などは季節によっては搭乗できません。国内線ではほとんどが受託手荷物として犬を預けることになります。この場合、どの犬も頑丈な指定のサイズのクレートに入れなければいけません。国際線ではキャビンに犬と一緒に乗れる場合もありますが、各社によりルールが違います。いずれにしても、飛行機を利用して移動する場合には、移動による犬の命のリスクを良く理解したうえで、かかりつけ獣医師ともよく相談して選択するようにしましょう。
フェリーの場合、車の中に入れたままなら犬を乗船させてもよい、甲板までは出しても大丈夫など各社でルールが異なります。航行距離や季節によって、車内に入れっぱなしで移動するのは熱中症による命の危険もあります。別の移動手段や移動時期ではどうか再考しましょう。
日本ではまだすべての公共交通機関に犬を乗せることができないという現状があります。高速道路を走る長距離バスは、小型犬も乗せられないというルールが一般的です。自家用車がない家庭では、愛犬の輸送方法がないという事態になる可能性もあります。その場合、ペットタクシーのようなペット専門の輸送業者もありますが、愛犬を任せられるのかどうか、業者の実績などをしっかり調べることが不可欠です。
犬が新居に早く慣れるために
引っ越し前後は、飼い主さんも何かと忙しく慌ただしい日々を送りがち。けれど、できるだけ普段どおりにパートナーに接するようにしてください。とくに引っ越し後は、環境の変化に犬は戸惑い、不安も強く、神経過敏な状態にあります。「ママ(パパ)がいるから大丈夫!なにも心配しないでいいよ」という大らかな雰囲気でパートナーを安心させることができれば、新居にも早く慣れてくれるはずです。
以前の環境との落差を少なくすることも大事。新居に引っ越すタイミングで、新しい家具や犬用ベッドを新調したくなる気持ちはわかりますが、それは犬にとってはよいことではありません。犬用ベッド、トイレトレーなど犬の身の回りのものはもちろん、人間用の家具も引っ越し前と同じものを使用した方が、以前のままのにおいに囲まれることができ、犬の負担は減ります。さらに可能であれば、家具の配置やトイレトレーの場所などを引っ越し前の環境と似たようにするとパートナーの不安も軽減されます。
引っ越し後は、下痢をはじめ愛犬が体調不良を起こしやすい時期です。できれば引っ越し前から新居近くの動物病院を探しておき、いざというときにすぐに行けるようにしておきましょう。転居後は、なるべく早く信頼のおけるホームドクターを見つけましょう。公園などで出会った犬連れの人に口コミを聞くのも有力な情報になりますよ。
また移動中やまだ新居に慣れていない間に、パートナーが迷子になってしまう例が少なくありません。近隣への引越しなどで可能であれば、愛犬を新しい家の周りで散歩させるなどして慣れさせてあげるのもいいでしょう。
引っ越しが決まったら、迷子札、鑑札、そしてできればマイクロチップを入れて、万が一はぐれてしまっても再び会うことができるように万全の準備をしましょう。マイクロチップは動物病院に行けば、施術をしてくれます。どうぶつIDデータ登録申込書にマイクロチップ番号を書き、新しい住所で登録申請をしましょう。マイクロチップ装着済みの場合、新しい住所に変更することを忘れないようにしましょう。変更はオンラインなどで簡単に行えます。
引っ越し後は、新居のある自治体へパートナーの住所変更手続きも行いましょう。人間が住民票を移すのと同じようなもの。自治体により手続きする部署が異なりますので、手続き方法はそれぞれの役所に問い合わせましょう。
おわりに
犬と引越しをするのは、大仕事です。犬は荷物ではありませんから、心と身体の両方に気を配る必要があります。決して他の荷物と同じように扱うことはできません。
非常に残念で悲しいことですが、引っ越しや転勤が理由で、犬を捨てるという人もいます。大切なことは、犬にはそういう人間の事情は一切わからない、ということ。さまざまな事情があったとしても、ネットで情報収集をしたり、地元行政に尋ねたりして、一緒に移動できる方法をまずは考えてあげましょう。愛犬にとって頼れるのは飼い主のあなただけ、ということを忘れないでくださいね。
取材・ライティング:白石 花絵(しらいし かえ)/ドッグジャーナリスト
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Follow @greendog_com監修 : 遠藤 和義(えんどう かずよし) ドッグトレーナー、ホリスティックケア・カウンセラー
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