2016.12.05介護

【犬との暮らし】 シニア犬と暮らす 2 ~椎間板ヘルニアと介護

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【犬との暮らし】 シニア犬と暮らす 2 ~椎間板ヘルニアと介護

ドッグトレーニングインストラクターの三井です。前回は自分で飼った初めての犬スコット(シベリアン・ハスキー)について書きました。

前回の記事はコチラ→犬との暮らしコラム ―シニア犬と暮らす 1

今回は、椎間板ヘルニアを患ったスコットの介護生活、晩年の様子を詳しくお伝えします。

椎間板ヘルニアとは

「椎間板ヘルニア」は人間の疾患としても良く知られているもので、背骨の間に挟まっている椎間板というクッションの役目を果たす部分が圧迫されてつぶれ、中からはみ出てしまった髄核と呼ばれる組織が近くの神経に触れて痛みや機能障害を引き起こしてしまうもの、と主治医から説明を受けました。

原因は肥満や、外部からの圧迫、あるいは発症しやすい犬種、と理由はさまざまですが、スコットの場合は体重もかなり制限しており、特に激しい運動をしていたわけでもなく、また好発犬種でもないので、おそらく老化が原因ではないかと言われました。

スコットは、背中ではなく頸椎にヘルニアが出てしまったので、前脚に症状が現れました。いつまでも若いと思っていたのに、気づけばもうすぐ10歳でした。りっぱなシニア期だったのですね。

最初の症状は散歩中に

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生後7か月で我が家にやってきたスコットはオスでしたが、性格はとても温厚でした。当時シベリアン・ハスキーはまだ珍しく、私にとっても自分が管理する初めての犬でした。

何から何まで初めてづくしの犬でしたが、性格の良さが幸いして、生後1歳の人間の子供に対しても穏やかに接し、ご近所のイギリス人はわざわざ散歩に連れ出してくれるほどのスコットファンでした。

もちろん、普段の散歩は朝晩私が自転車で伴走していましたが、公園に行けば犬友達とも仲良く接することが出来ました。また、当時まだ珍しかった犬種だったことから声をかけてくる人も多く、そんな時も彼は大人しく触らせてあげるジェントルマンでした。

そんなスコットに異変が見られたのは、9歳を過ぎた頃。散歩の途中で前足がつまずき、よろめくようになりました。しかし、長くは続かずすぐ復活したので、道の凹凸に足を取られたのだろうと思っていました。けれど、また数日すると同じようにガクッとつまずいてしまうので、自転車での散歩は少しお休みして歩いて行くように。つまずきも少なくなり、いつもの元気なスコットに戻りました。私は「年齢のせいだろう。これからは歩いて散歩に行こう」というぐらいにしか思っていませんでした。

それから数か月したある朝、玄関のマットで寝ていたスコットに声をかけたところ、いつもなら立ち上がって朝の挨拶をしてくれるのに、彼は全く動こうとしなかったのです。最初は寝ぼけているのかと思って、更に声をかけ、体をさすって刺激してみましたが、首だけあげるものの、立ち上がろうとはしませんでした。

一体何が起きたのかわからず、どうすることも出来ませんでした。動物病院の開院時間までがとても長く感じました。スコットの体重は25キロ以上あり、必死で抱えて車に乗せ病院へ。そして、頸椎(けいつい)の椎間板ヘルニアと診断されました。そのときの治療は、ステロイドを投薬し様子を見ると言うものでした。

その後、丸二日間、スコットはまったく立ちあがれませんでした。トイレには連れ出してやらなくてはいけません。体を抱きかかえるようにして庭に連れ出すのですが、私が抱えているとまったく排泄しようとしません。何度連れて行っても排泄せず、体調が悪化するのではと心配でした。

二日目の夜、また抱きかかえて庭に出た時、薬が効いてきたのでしょう。私の手を振り払うようによろよろと自力で歩き出し、彼なりのプライドなのか、自分で立たないと落ち着いて出来ないのか、自分でトイレを済ませました。介助されながらのトイレは嫌だったのかもしれません。とにかくやっと寝たきりから解放されたのでした。

シニア犬のトイレトレーニングはコチラ→シニアになったら知っておきたい、やっておきたい「トレーニング」

スコットの介護

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ステロイドが効いてからは、とりあえず一時的に症状が緩和し、彼はまた自力で歩けるようになりました。しかしどうしても前足をこすってしまうので、外を歩くたびに爪の付け根を流血してしまいます。

初めは子供の靴下を履かせてみたりしましたが、前足の甲を擦って歩くため、すぐに脱げてしまいます。犬用の靴を探して履かせてみたのですが、丈夫そうな反面素材が硬く、フィット感が無いのでますます歩きづらくなって転んでしまいました。

そこで今度は人間のスポーツ用のテーピングテープを試してみることにしました。こすってしまう爪の上にはコットンを巻き、その上をテーピングテープで巻いていきます。ゆるいと外れてしまうので、伸縮性の無いものを選んで巻きました。ようやく転ばないで歩けるようになり、以前のように散歩に出られるようになりました。そのかわり、帰ってくるころには大分擦り減っているので、テープは散歩に行く度に巻かなくてはなりませんでした。でも、冬犬友だちみんなで雪遊びに連れて行くと、新雪の上では歩いても流血しないので、テープを巻かずに歩くことが出来ました。

テーピング装着の散歩はその後1年近く続きましたが、ある朝また起き上がれなくなってしまいました。今度はもうステロイドが効きません。残る道は手術のみでした。手術の成功率はさほど低くはないけれども、その後のリハビリテーションが大変だと言われました。体重25キロの犬のリハビリテーション、どんな風なのか想像もつきませんでした。

それ以前に、手術をするためには体調が万全でないと出来ません。二度目に倒れた時には、すでに体力もだいぶ衰えていたので、手術に耐えられるくらい体調を整えてからと言われました。

体力回復のために食餌の見直しや投薬が始まりましたが、寝たきりのスコットには別の問題が起きていました。床ずれです。時間を決めて寝返りを打たせてやるのですが、そのたびに彼は痛そうに声を上げます。自力でなければしないと頑固に決めていたトイレも、とうとう我慢できなくなりました。汚れた体を拭き、床ずれにならないように寝返りを打たせ、ご飯を口に運んでやるという状態が数か月続きました。しかし体力の回復は見込めないまま、とうとう手術に踏み切ることになりました。

犬の床ずれ予防はコチラを読む→寝たきりになったパートナーのために。清潔を保つ工夫と、床ずれ予防

スコットの最期

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手術は、車で1時間以上かかる大学病院へ。どれぐらいの時間がかかるかわからないこと、術後は入院するので、自宅で結果を待つことになりましたが、スコットを置いての帰り道は後ろ髪が引かれました。

夜9時を過ぎた頃、ようやく連絡が来ました。手術が無事に終わったとのことでした。何はともあれ一安心し、私もようやくゆっくり眠れる夜を迎えることが出来ました。

翌日はいつ見舞いに行こうかといろいろ考えていました。帰れないのがわかっているのに、すぐに行くのはかわいそうだろうとか、行かなければ寂しい思いをするのではないかとか、いろいろ考えあぐねていたその日の午後に電話が鳴りました。スコットは容体が急変し、旅立ってしまったということでした。言葉になりませんでした。

翌日彼を引き取りに行きました。病院までの車の中ではとめどなく涙が流れました。「もっとああしていれば、こうしていれば。」いろいろなことが頭を巡りました。

病院で彼の亡骸を引き取るとき、先生が一言慰めの言葉をかけてくれました。でも、どんな言葉をかけてもらったとしても、後悔しない飼い主はいないのではないでしょうか。

その晩、長年の犬友達がスコットにお別れを言いに来た後、翌日、スコットは空に帰っていきました。10年間ありがとう、という言葉で送りました。それからしばらくの間、車に乗るたびに前が見えなくなるほど涙が流れたことは言うまでもありません。

おわりに

愛犬との別れは言葉に出来ないほど辛いものです。その辛さを二度と味わいたくないと、犬との生活をあきらめる人もいますが、犬たちとの素晴らしい生活を再び送る人もいます。言わずもがな、私も後者の人間ですが、犬たちからのたくさんの贈り物を無駄にしないようにと思っています。

この記事の椎間板ヘルニアの治療のプロセスは、あくまでも我が家のパートナーのケースです。愛犬のいつもと違う様子に気づいたら、すぐに動物病院を受診してご自身のパートナーにあった治療を受けてくださいね。

次回は、その後やってくるボーダーコリーたちとの生活についてお話します。

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三井 惇(みつい じゅん) CPDT-KA、ドッグトレーナー/ドッグダンスインストラクター、ホリスティックケア・カウンセラー

1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけ に、犬の行動学や学習理論を学び、2006年WanByWanを立ち上げる。愛犬の出産、子育て、介護と様々な場面でも多くを学び、愛犬のQOLの向上を目指して2008年にホリスティックカウンセラーの資格を取得。2016年自身のトレーニング方法を再確認するために世界基準のドッグトレーナー資格CPDT-KAを取得。現在、4頭目と5頭目のボーダーコリーとドッグダンスの楽しさを広めながら、東京近県で出張レッスンを行っている。
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