気管虚脱を獣医師が解説!苦しい咳、呼吸の症状とケアまで
気管とは、喉から肺まで空気を通す柔軟なチューブのような管です。たとえるならば、掃除機のホースに似ており、小さなC字型の軟骨と膜性壁からなる輪(軟骨輪)が犬では35~45個ほどが連なっています。気管虚脱は、この軟骨輪の強度が足りずに気管が潰れ、かつ膜性壁が伸びて気管の内側に入り込む状態をさし、呼吸をする時に空気の通りを邪魔します。気管虚脱は慢性で、かつ進行性であり、自然に治ることはありません。悪化すると窒息死することさえあります。今回は、犬の気管虚脱についてGREEN DOGの獣医師伊東が解説します。
目次
気管虚脱の症状とは?
最初は軽い咳などの症状がみられ、急に症状が進行することもあります。悪化すると気管は潰れっぱなしになり、殆ど元に戻らなくなります。
ガチョウの鳴き声のようにガーガーという乾いた咳をする
興奮時や抱き上げられた時、首輪を引っ張られた時に激しく咳をする
空気を吸い込む時にゼーゼーと喘ぐような音がする
運動をしたがらない
酸素不足により粘膜が青くなる(チアノーゼ)
不眠
失神
窒息死
逆くしゃみ症候群や軟口蓋過長症、肺炎、気管・気管支炎、心臓病などでも激しい咳をします。それぞれ治療が異なりますので、気になる咳をしているようであれば、動物病院できちんと診断してもらいましょう。
各呼吸器系の症状についての記事はコチラ→発作?苦しい?犬の逆くしゃみの原因と対処法
気管虚脱は、気管内腔がどのくらい狭まっているかによってグレード分けがされます。
・ グレード1 : 25%
・ グレード2 : 50%
・ グレード3 : 75%
・ グレード4 : 軟骨輪が平につぶれ、殆ど内腔がなくなります。
気管虚脱が悪化することによって、心臓や肝臓など様々な臓器にも負担がかかり障害が生じます。
気管虚脱になりやすい犬とリスク
気管虚脱は中年齢以上の小型犬に多いとされていますが、幼犬や大型犬種でも発生することもあります。気管虚脱を誘発する要因などある程度は分かっており、次のような好発犬種では遺伝的な素因があると考えられています。しかし、気管虚脱がなぜ起こるか、ということは未だ分かっていません。
≪好発犬種≫
ヨークシャーテリア、ポメラニアン、ミニチュア・プードル、チワワ、マルチーズ、パグなど
誘発要因
肥満
散歩時の首輪の引っ張り
老化により気管周りの筋力の低下
高温多湿の環境
タバコの煙などによる気道刺激
気道感染
慢性気管支炎 など
気管虚脱を起こしている気管の軟骨輪において、硝子軟骨のグリコサミノグリカン、糖タンパク質、およびコンドロイチン硫酸の量が少なかったという報告があります。しかし、根本的な原因解明には至っていません。
診断と治療について
診断
症状と主にレントゲン検査に基づいて行われます。気管内視鏡検査を用いることによって、より正確な診断ができますが、麻酔が必要なため重症例ではリスクが伴います。
治療
≪内科的治療≫
鎮咳剤や気管支拡張剤をはじめ抗生剤、副腎皮質ホルモン、精神安定剤および酸素吸入などが用いられていますが、一時的な症状の改善はみられても根治することはありません。
≪外科的治療≫
根本的な治療のためには、外科手術が必要となります。いくつかの手法がありますが、従来のものでは長期的な治療効果は残念ながら期待できませんでした。しかし、最近では、日本で新しい方法(PLLP法)が発案され、長期的な治癒が実現されつつあるようです。
・プロテーゼ法
注射器の外套などを気管の外へ固定して縫いつける方法。しかし、装着した人工物の堅さや耐久性、異物刺激などの問題があります。
・ステント法
気管の内腔へ金属製の拡張器具を入れる方法で、短時間の手術で簡単に装着することができます。一方、敏感な気管に装着するため、刺激によって咳が酷くなり、また異物反応により肉芽が盛りあがることで気管内が狭くなるというリスクがあります。
・PLLP法
気管の外に立体的なジグザク状の円筒を縫い付けるものです。使用する素材は異物反応が起こりにくく、また頸の動きに適した柔軟性な構造であることなどから、良好な成績が得られているようです。
家庭でのケア
散歩時には、首輪ではなく胴体に装着するハーネスを使用する
肥満にさせない
高温多湿に注意する
特に、夏場には室内の温度・湿度の調整を行い、長時間の入浴は避ける
タバコの煙や排気ガスは避ける(空気清浄機を使用する)
安らかな呼吸をサポートするハーブ やアロマ を活用する。
★こちらもチェック⇒咳をすることが多くなったシニア犬におすすめの総合栄養食
まとめ
気管虚脱は呼吸がとても苦しくなる辛い病気であり、悪化すると手術ができなくなることもあります。咳は、軽いものから全身からくる重いものまでありますので、軽視することは禁物です。少しでも心配な点があれば、なるべく早く動物病院で診察をしてもらいましょう。
【獣医師監修】ずっといっしょ。快適なシニア期のために今からできること
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Follow @greendog_com監修:伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー
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