辛いくしゃみや目の痒み?犬も花粉症になるの?症状と対策
花粉症のヒトは、春のスギやヒノキの花粉飛散予測はとても気になりますよね。くしゃみや鼻水、目の痒みといった花粉症の症状はとても辛いものです。
とくに鼻は犬にとってとても重要な感覚器。犬にも花粉症でくしゃみや鼻水が止まらないというケースはあるのでしょうか。今回は、犬の花粉症についてGREEN DOGの獣医師伊東が解説します。
犬も花粉症になるの?
犬の花粉アレルギーの症状は?
アレルギーの交差性にも要注意
花粉アレルギーになりやすい犬種
犬の花粉アレルギー対策とは?
犬の花粉アレルギー対策5つ
花粉アレルギーに強い身体をつくる
腸内環境を整える食品やサプリメント
オイルを厳選して与える
まとめ
犬も花粉症になるの?
犬にも花粉によるアレルギーはあります。しかし、ヒトでみられるくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎の症状を示す、いわゆる花粉症というものは、実は犬ではあまりみられません。
花粉症のヒトの鼻や目の粘膜では、IgEという抗体*が肥満細胞**に結合して待機しています。粘膜に特定の花粉が付着すると、肥満細胞の中から炎症を引き起こす物質が放出されます。すると、鼻の粘膜が刺激されてくしゃみ、鼻水などのアレルギー反応が引き起こされます。
ではなぜ、犬はヒトのような花粉症の鼻炎症状をあまり示さないのでしょうか。
鼻の粘膜にこの肥満細胞の分布が少ないためにアレルギー症状がでにくくなっている、犬の鼻では様々なものに対し過剰に反応しない仕組みになっている、などと考えられていますが、その理由については明らかにはなっていません。
人間の花粉症の原因は、スギ・ヒノキなどが有名です。一方、犬では、地域や季節性によって花粉アレルギーの原因となる植物が異なるようですが、地面近くに生えているブタクサやオオバコなどが、最近の関東地方の傾向として多いようです。
*抗体とは、ウィルスや細菌などにくっつき、病原性を失わせる働きを持つタンパク質のこと
**肥満細胞とはアレルギーに関連する免疫細胞であり、ヒスタミンなどのアレルギー症状を引き起こす物質をたくさん含んでいます
犬の花粉アレルギーの症状は?
犬の花粉アレルギーの症状は、私たちヒトの花粉症とは違い、主に皮膚に現れます。いわゆるアレルギー性皮膚炎です。
具体的な症状としては、皮膚に湿疹や赤み、激しい痒みを生じ、体や顔を掻きむしったり、手の先を舐めたりします。眼の周りの皮膚が赤くなって、毛が抜けたりすることも。また、なかなか治らない外耳炎に悩まされることもあります。
アレルギー性皮膚炎の犬では、最初は季節的に痒みなどの症状がでてくることがあります。特に、春から夏にかけて悪化していくことが多いのですが、これは、この時期に花粉の量が環境中に増えることも関係しているのです。
アレルギーの交差性にも要注意
血液検査では、IgEの量を調べることで、アレルギーの有無や程度を数値化して確認することができます。
花粉アレルギーで落とし穴になりがちなのが、アレルゲンの交差性です。アレルゲンの交差性とは、あるアレルゲンに対するIgE抗体が、ある種の異なるタンパク質にも反応し、アレルギー症状を起こしてしまうものです。それは、両方のタンパク質の分子構造が似ていることによって起こる、と考えられていますが、犬ではまだ詳しくは解明されていません。
ブタクサと交差性があるものには、ウリ科のメロン・スイカやバナナ、りんごなどの果物、きゅうり、トマト、レタスなどの野菜、ラテックス(ゴム手袋などに使用)などがあります。このように、花粉アレルギーであったとしても、野菜や果物は慎重に選ぶ必要があります。
アレルギーの食事についてはコチラを読む→愛犬にアレルギーがあったら?体質で変わるドッグフードの選び方
花粉アレルギーになりやすい犬種
花粉にアレルギーを示す犬は、犬アトピー性皮膚炎であることがほとんどです。
犬アトピー性皮膚炎の犬は、複数の環境アレルゲン(花粉、カビやハウスダストなど)に対してアレルギー抗体IgEを作りやすい体質をもっています。また皮膚の乾燥によってそのバリア機能が弱いことも示唆されています。
犬アトピー性皮膚炎の症状は、強い痒みを特徴とし、主に皮膚の薄いところである、腋の下や肢の付け根、足の先、お腹、顔、耳に現れやすいです。原因となる環境アレルゲンを完全に排除することはできないため、完治が難しい病気です。
日本では、特に柴犬とシーズーをはじめ、次のような犬種が、犬アトピー性皮膚炎になりやすいといわれており、同様に花粉によるアレルギー症状も起こしやすいと考えられます。
花粉によるアレルギー症状を起こしやすいと考えられる主な犬種
柴犬、シー・ズー、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、シェットランド・シープドッグ、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ダルメシアン、ボストン・テリアなど
犬の花粉アレルギー対策とは?
ヒトは春先の外出時にマスクやメガネ、花粉がつかない素材のコートを着るなどで花粉症対策をしますが、犬がヒトと同じようにするのは難しいですよね。しかも、犬では鼻や口から入ってくる花粉よりも、皮膚につくことのほうが問題になります。
できるだけ花粉に触れないための対策として、次のようなものが挙げられます。
ココがポイント
犬の花粉アレルギー対策5つ
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1. 散歩は花粉の多く飛来している時間帯を避ける
- 個体によってどの植物の花粉がアレルゲンになるのか異なります。また、地域差や気象条件によっても花粉の飛来時間は大きく変わりますので、インターネットなどでこまめに花粉情報を確認するのが良いでしょう。
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2. 草むらに立ち入らせない
- 犬の花粉アレルギーの原因となるブタクサやオオバコといった植物は草むらに生えています。できる限り草むらに立ち入らせないようにしましょう。
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3. ウェアを着て散歩に出かける
- 散歩のときはウェアを着させて、身体に花粉がつかないように保護します。全身を覆うような特殊な生地でできている犬用のアレルギー対策用のウェアなども市販されています。ウェアは外で脱ぎ、花粉を家に持ち込まないようにします。
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4. 散歩から帰ったら花粉を落とす
- 散歩から帰ったら全身を固く絞ったタオルでよく拭き、ブラッシングをしてから家に上げるようにします。ドライワイプ(吸じん性・多孔性の不織布)の使用も有効です。薬剤のついていない市販の使い捨て床拭き用のドライシートは、ブラッシングと違って花粉が飛び散らず、また手軽にできるのでおすすめです。
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5. シャンプーの回数を増やす
- アレルゲンをこまめに皮膚や被毛から落とすために行います。シャンプー剤をよく泡立ててシャンプーには5~10分以上の時間をかけます。最後には皮膚に潤いを与えるような保湿剤 を塗布すると良いでしょう。回数は週1~2回が理想的です。
花粉アレルギーに強い身体をつくる
花粉アレルギー対策としては、花粉を避けるというのが基本ですが、次のような食品やサプリメントで、アレルギーに強い身体をつくることも大切です。
最近の研究では、腸内細菌とアレルギー疾患が密接に関わっていることが分かってきています。ヒトの花粉症でも、ある種の乳酸菌が良いとされていますよね。
犬にとっても腸内環境を整えることはとても大切。気をつけてあげることでアレルギーに強い身体づくりに役立ちます。
腸内環境を整える食品やサプリメント
善玉菌である乳酸菌やそのエサとなるオリゴ糖、そして第三の腸内環境に作用する物質であるバイオジェニックス などで腸内環境を整えましょう。
オイルを厳選して与える
オメガ-3脂肪酸
魚油や亜麻仁油などに多く含まれています。オメガ-3脂肪酸は、皮膚の炎症を和らげる働きをします。アレルギー性皮膚炎の犬では、積極的に摂取したい栄養素です。
γ(ガンマ)-リノレン酸
ルリジサ油やボラージ油に多く含まれています。γ-リノレン酸が不足すると、皮膚が乾燥しやすくなります。ヒトの研究において、アトピーの方の多くはリノール酸をγ-リノレン酸に変換する酵素が少ないことが分かってきています。γリノレン酸の補給により、潤いのある皮膚に導いてあげましょう。
まとめ
春先に愛犬が皮膚を痒がるようになった、外耳炎がなかなか治らない、などの症状がみられるならば、もしかしたら花粉アレルギーかもしれません。くしゃみや鼻水などの症状がでないため、花粉が原因とはなかなか気がつきにくいものです。
皮膚の痒みは、犬にとっても不快で苦痛です。少しでも気になることがあれば、できるだけ早めに動物病院に相談するようにしましょう。
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