犬の皮膚や耳に炎症!?マラセチアによる皮膚炎の治療法について
マラセチア症は皮膚の表在の感染症で、犬ではとても一般的な病気です。マラセチアという酵母菌(カビやキノコが仲間の真菌類の一種)が脇の下や爪で過剰増殖して、皮膚トラブルや外耳炎を引き起こします。
実は、マラセチアは正常な皮膚にもいる常在菌。しかし、何らかの理由で爆発的に増殖をしてしまうと皮膚に炎症やべたつき、フケ、独特な異臭をもたらします。そして、痒みが強いのが特徴で、患部を狂ったように掻きむしることで脱毛するなど、犬や飼い主を悩ませます。今回は、マラセチア症について詳しくお話をします。
マラセチアって何?
マラセチアとは、酵母菌という真菌の一種で、発育・増殖するために脂質を必要とします。動物の皮膚や口吻、外耳道、指間、肛門周囲の表面に常在し、通常はひっそりと生息しています。しかしながら、何らかの原因で皮膚の状態が悪くなったり、皮脂の分泌が過剰になったりすると、過剰に増殖し、炎症や痒みを引き起こします。
マラセチアはどんな症状を起こすの?
主に、皮膚炎と外耳炎を起こします。
皮膚では、特に口唇や鼻、肢、指間、わきの下、内股、肛門周囲部に炎症が起こります。症状としては、赤み、痒み、脂漏、フケ、独特の臭気があります。長引くと、皮膚が厚くなったり、黒っぽく色素沈着したり、角化が進んで皮膚が硬くなったり脱毛したりします。
爪に感染しているときには、爪の下に分泌物が生じたり、表面が脂っぽくなったりします。
マラセチアによる皮膚炎の原因3つ
マラセチアは、特に次の3つの要因によって過剰に増殖しやすくなります。
- 皮脂や耳の分泌物量が増える
- 皮膚の湿度が上がる
- 皮膚を過剰に舐めたり、掻き壊したりして皮膚の状態が悪くなる
マラセチアが分泌した脂肪分解酵素や、脂質を分解して産生した脂肪酸が皮膚に浸透し、刺激を与えて炎症を起こします。基礎疾患として、アトピーや食物アレルギーや脂漏症、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などの内分泌疾患、腫瘍などがある犬では、マラセチア症は起こりやすいとされています。
マラセチアは、皮脂を栄養源とするため体質的に皮脂分泌の多い犬や耳垢の多い犬に、何らかの皮膚トラブルが生じた場合に過剰増殖しやすい傾向があります。
季節にも関わりがあり、特に夏や梅雨などのジメジメした湿度の高い時期に発症しやすくなります。垂れ耳であったり、耳の中に毛が密集していたり、常に耳の中がジメジメしている状態である犬でも、マラセチアによる外耳炎が多いです。マラセチアは湿気を好むため、通気性を良くすることが大切です。
ココがポイント
マラセチア症を発症しやすい犬種は、ウェストハイランド・ホワイトテリアやコッカー・スパニエル、プードル、ダックスフンド、ボクサー、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、シーズー、ジャーマンシェパード・ドッグなどが報告されています。
マラセチア症は犬から犬へ感染しません。また、人でもマラセチア症はありますが犬の常在菌と人の常在菌が異なります。犬のマラセチアが人にうつるということはありません。
マラセチアの治療方法とは
まずは、基礎疾患の治療が基本になります。基礎疾患をせずマラセチアの治療だけをしても、改善はしません。マラセチアの治療をすると脱毛したところが発毛したり、赤みがなくなったり、ベタベタする耳アカが減ったりと、皮膚炎や外耳炎の症状は良くなりますが、治療をやめるとすぐに再発してしまうケースが多く、継続したケアが必要になります。
マラセチアの治療は、洗浄によってマラセチアを物理的に除去することが主になります。
皮膚炎では、マラセチアに効果のある薬剤が入ったシャンプーを利用します。マラセチアは油脂を栄養源とするため、皮膚表面の油脂はしっかり落とします。皮脂が多いときには強い界面活性剤のシャンプーも使用します。シャンプーは基本的には週1~3回必要です。シャンプーの頻度が多いように感じるかもしれませんが、最後にしっかり保湿剤を塗布すれば問題ありません。マラセチアに湿度は大敵です。シャンプー後は、しっかりと乾かしてあげましょう。特に指の間や足裏は忘れがち。タオルドライの後に毛を掻き分けながらドライヤーの風あてて乾かしましょう。外耳炎は、薬用クリーナーで定期的に外耳道を洗浄します。正しい洗浄方法は獣医師にかならず相談しましょう。
耳ケアについてコチラも読む→汚れや耳垢、においが気になる?犬の耳に本当に必要なホームケアとは
皮膚や外耳炎の症状が重度であったり、広範に及んでいる場合には、患部に薬を塗布したり、抗生剤や抗真菌剤を処方されることもあります。きっちり治療しても、再発を繰り返す場合には、継続的なシャンプーや耳ケアが必要になります。経過をみながらケアをしてあげましょう。
数週間シャンプーを続けると改善することもあれば、なかなか改善がみられないなど、治療期間は、犬の皮膚の状態や基礎疾患によって様々です。 マラセチア症は再発しやすいものですので、痒みや炎症がなくなったからといって勝手に治療をやめるのではなく、かかりつけの獣医師に指示を仰ぎましょう。
おわりに
マラセチア症はもともとアレルギーなど何らかの皮膚トラブルを抱えていたり、基礎疾患をもっていたりする犬に発生しやすいものです。そのため、一度治療が完了しても、たびたび再発します。基本となるシャンプーは家庭でもできるものですので、マラセチアが増殖しやすい環境を作らせず、過剰なマラセチアを排除することが大切です。外耳炎は勝手な判断でホームケアをするのではなく、動物病院でしっかりと検査をしてもらって、原因に合わせた正しい処置をするようにしましょう。
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Follow @greendog_com伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー
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