しつけや健康のため?人間の食べ物を犬に食べさせてはいけない本当の理由
家族の一員として暮らしている愛犬の食事。愛犬には体に良いものを与えたいと思っていても、欲しがる愛犬の可愛い仕草につい人間の食事をつまみ食いさせてしまうことってありませんか?
人間が食べている食べ物を食卓から気軽に与えることは、パートナーにどんな影響があるのでしょう。今回は、犬の食事と寿命の関係や、なぜ人間の食事を犬にあげてはいけないのか、その本当の理由まで詳しくご紹介します。
昔の犬の寿命ってどれくらい?
日本では、ここ30年程で犬の寿命が約10年も延びています。何がそんなに犬の寿命を延ばしたのでしょう。
いろいろな条件がそろって犬の寿命を延ばすことに影響したのは言うまでもありませんが、ここでは大きく4つの理由について紹介します。
人々の認識の変化
かつては番犬としての役割が大きく外で暮らす犬が多かった飼い犬。今は家族の一員として受け入れられ、部屋の中で一緒に暮らすことが一般的になっていますね。厳しい暑さや寒さに耐える必要もなくなりました。
食事の変化
犬には、人間が残したご飯や塩分が多いお味噌汁、鋭い鶏の骨などの残飯が当たり前のように与えられていた時代もあったのです。それはつい30年ほど前のこと。
ドッグフードの普及
ドッグフードが日本で量産され、一般的に普及し始めたのは1960年代頃。以降、専用の食事がなかった時代に比べて犬の寿命は徐々に延びていきます。1980年頃の犬の平均寿命は約3歳!その後1990年には約10歳まで上昇し1998年以降は13〜14歳まで寿命が延びています。
獣医療の進歩
フィラリアや混合ワクチンの普及といった予防医療の普及、獣医療の進歩なども要因の一つ。
ただ、やはり身体を作る食事の変化は犬の寿命を延ばすのに大きな影響があったといえます。
最近では、犬の健康に必要な栄養がしっかりと考慮されたドッグフードや、犬本来の食性を考慮した生食フードなども開発されています。犬の栄養要求を満たした食事を与えることは犬が健康で長生きするためには欠かせないこと。さらに、食性、ライフステージ、運動量、持病はあるかなど、すべてを考慮してパートナー(愛犬)に合わせた食事を与えることがとても大切なのです。
では、犬の食性ってなんでしょうか。詳しく見てみましょう。
犬は肉食!?人間とどう違うの?
犬の祖先は狼です。狼は肉食の生き物。だから犬はもともと肉食動物なのです。
肉食!?と驚かれるかたもいることでしょう。確かに犬は、人と暮らす長い歴史の中でだんだんと雑食へと進化をしてきました。だから肉や骨の他に野菜も食べます。けれど、本来、犬は肉食の動物です。
その食性は犬の「歯」「代謝」「胃腸」にも現れています。
犬が肉食なのは「歯」でわかる!
犬の歯は、犬歯(牙)が発達し、肉を嚙みちぎるのに適した構造。奥歯にある臼歯はほとんど発達していないので、犬歯で嚙みちぎったあと、食べ物が喉を通る大きさになれば、丸のみにすることが多いのです。
犬が肉食なのは「代謝」でわかる!
人間と違って犬の唾液中にはアミラーゼはほとんど含まれないため、特に日本人が主食としているご飯などの炭水化物の消化吸収は苦手です。
犬が肉食なのは「胃腸」でわかる!
犬は本来、肉や骨の消化が得意。繊維質を消化することはできません。強酸性の胃酸で肉や骨を消化し、腸では消化酵素で分解したたんぱく質などを吸収。腸内の微生物の作用は少ないので繊維質はほとんど発酵・消化できないのです。そのため長い腸も必要なく、犬の短い腸はタンパク質や脂肪を消化するのに向いています。
犬の腸の長さは体長の5~6倍、人間は12倍、腸で発酵させて消化する草食動物の牛では体長の22倍!肉食目の犬の腸は草食動物と比べてとても短いのですね。犬は肉の消化に適した胃腸を持つ動物です。
犬の主食には良質なたんぱく質を!
出典:ホリスティックケア・カウンセラー養成講座
犬に必要な6大栄養素の一つ、タンパク質。食事で摂取したタンパク質は体内でアミノ酸に分解され合成されます。犬の必須アミノ酸は10種類。いずれも体内で合成されないので食事から摂取する必要があります。
そのため、犬は良質なタンパク質を積極的に摂ることが大切なのです。肉や魚、卵などの動物性タンパク質は犬にとって最も適したタンパク質源。特に卵はビタミンC以外のすべての栄養素を含む非常にすぐれたタンパク質源です。上の画像は、卵が犬に必要な必須アミノ酸すべてを満たしていることを表したものです。
このように犬は歯、代謝、胃腸など体の構造に加えて、必須栄養素からも肉食の名残が十分に残っている動物です。犬の食性を理解して、手作りで人間の食材を使う場合も良質なタンパク質が豊富な食事にしてあげましょう。
人間の食べ物を欲しがらないようにする方法とは!?
人間の食卓の食事を与えると「人間の食事を与えるのはしつけの面で良くない」とか「人間の食事を与えることは犬を甘やかすことにつながる」と言われることもありますね。しつけとは、犬に対して厳しくすること、という考えがあるからかもしれません。
そもそも「しつけ」とは、日常生活に必要なマナーやルールを教えてあげること。必ずしも犬に対して厳しくする必要はありません。むしろ、人間の言葉や人間社会のルールを理解できないパートナーには分かりやすく優しく教えてあげることが大切です。
人間の食事をそのまま愛犬に与えることは避けたほうがよいとお話しました。では、そのことをどのように犬に教えてあげればいいのでしょう。
ポイント1 経験をさせない
犬というのは、自らの経験から多くのことを学びます。なので、愛犬にして欲しくないことは未然に防ぐ、つまり初めからその経験をさせないようにするのがコツです。
もし、ちょっとくらい与えても大丈夫と、人間の食べ物をついあげてしまうとしますね。犬はそのたった一度の経験から「人間の食事ってこんなにおいしいんだ!」ということを覚えてしまいます。犬はとても素直で賢い動物なのですね。
ポイント2 ルールには一貫性を
犬には、今回だけ特別というのは通用しません。「次もきっとまた食べさせてくれるだろう」といつも期待するようになります。その結果、「もっと欲しい!もっとちょうだい!」とおねだりをするようになることも。勝手に食卓の上のものを食べるようになってしまうと大変です。ルールには一貫性を持たせましょう。
犬に食べさせてはいけない食べ物
人間の食事を与えることで、パートナーの健康を損なう場合や、命にかかわる大きな危険を招くこともあります。
ある調査では、毎年バレンタインの時期になるとチョコレートを食べて動物病院に担ぎ込まれる犬が増加するそうです。
犬に食べさせてはいけない代表的な食材には、このようにごく一般的に人間が食べている食材がほとんどです。愛犬を苦しませないためにも注意してあげましょう。
NG! ねぎ類 (ネギ、たまねぎ、らっきょう、エシャロットなど)
ネギに含まれる物質が、溶血性貧血や血尿を起こします。
NG! チョコレート (カカオも含む)
テオブロミンという成分が下痢、嘔吐、呼吸困難などの中毒症状を起こします。最悪の場合、急性心不全を起こして死亡することも。
NG! 刺激が強い香辛料 (こしょう、わさび、七味唐辛子など)
辛い物の摂取は胃腸に負担をかけ、下痢になったりします。
NG! 鶏の骨
加熱した鶏の骨は縦に裂け鋭利なナイフのようになり危険です。内臓に刺さると命にかかわります。
犬に与えるときに気をつける食べ物
NG! 生卵の白身
生卵の白身に含まれる成分アビジンが、ビタミンの吸収を阻害する。白身を加熱調理すればOK。
NG! 生の豚肉
豚肉は人獣共通感染症の一つであるトキソプラズマ症の感染源トキソプラズマ(原虫)に汚染されていることも。原虫は加熱すれば死滅するので必ず十分に火を通しましょう!
NG! イカ・タコ・貝類
塩分が多く身が固いので消化しにくいため、消化器に負担がかかり、嘔吐や下痢になることも。
おわりに
愛犬と同じ屋根の下で寝食を共にし、散歩や運動を楽しみ、時にはカフェにも同席という時代になりました。家族同然のように暮らすようになった今だからこそ、愛犬に人間の食事を与えてはいけない理由を知って、パートナーの身体が喜ぶ食事を与えてあげましょう。
犬は肉食です。人間とは食性が違います。動物性タンパク質を豊富に含んでいる食事をメインに与えることをこころがけましょう。人間が食べておいしくて大丈夫でも犬にとっては消化に負担がかかり、健康を害する危険な食材があります。
犬は人間とは違う動物。そんな当たり前のことを忘れずに、愛するパートナーが健やかな毎日を過ごせるように楽しい食事を実践していきましょう。
制作協力:大鳥 明子(おおとり あきこ)認定ペットシーッター、ホリスティックケア・カウンセラー
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Follow @greendog_com「犬のココカラ」編集部 チームGREEN DOG 監修・執筆
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