犬は生まれつきクリエイティブ！創造性と幸福感の関係とは？

『クリエイティブ』という言葉を聞くとみなさんはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか？クリエイティブという言葉は元々「独創的な、創造的な」という意味ですが、アート、音楽、デザイン、ゲームなど色々な分野の創作物をイメージする人が多いのではないでしょうか。

では「犬もクリエイティブになれる」と聞くとどう思われますか？ちょっと驚いてしまいますね。でも犬も独創的、創造的になって創作や工夫ができることがわかっています。

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「クリエイト」のキューで、したことのない行動を創作した犬たち

犬が何かを創作することができるか？という調査は、アメリカのエッカード大学の研究チームによって行われました。イルカを使った過去の研究では、トレーニングセッションの中で今までにしたことのない行動をイルカ自身が創作して実行できることがわかっています。「クリエイト」というキューに応えてイルカが何か新しい行動を取ると報酬が与えられるという方法でトレーニングされます。

この研究では一般募集された5頭の家庭犬たちが、このイルカと同じ方法でトレーニングを受けました。トレーニングを実行したのはトレーナーから指導を受けた飼い主さんたちです。

犬の周りにおもちゃをたくさん並べて、飼い主さんが犬と遊びながら「クリエイト」というキューを出し、犬はそのセッションの中でやったことのない行動（おもちゃを咥えるのでも良いし、ゴロンと寝転ぶのでも良く、とにかくセッション中で初めてのことをする）をすると報酬が与えられます。結果5頭すべての犬たちが、キューに応えて自分で考えた新しい行動を見せました。犬はイルカと同じように学習し、行動を創作することができたのです。

犬が行動を創作する＝犬は行動を自分で選択するということ

この研究でもうひとつ興味深いのは、犬が自分自身の行動を記憶するという短期記憶の能力を目にすることができた点です。「以前の行動を繰り返すのはダメ」というルールに従って、犬は前に自分が何をしたのかを憶えていて、その行動を除外するという複雑なタスクをこなしたわけです。

従来の犬の短期記憶の研究では、おもちゃなどの物体、匂い、人物など外部からの刺激についての記憶が対象となっていました。それに対してこの研究では「自分の行動」という内部からの刺激に注目しているのが新しい点です。

犬が行動を創作するというのは、その行動を自分で選択したということです。選択する自由があり、さらにその結果が評価されたことは自信と心の安定につながります。また自分で考えて問題を解決することはさまざまな場面での適応性を高めることにもつながります。

特別なトレーニングをしなくても犬は本来クリエイティブ

上にあげたようなトレーニングは複雑でちょっと敷居が高いと感じられるかもしれません。でも犬がおもちゃ以外のもので思いもよらない遊び方を工夫したり、誰かの注意を惹くために頭を使ったりという場面に出くわすことは珍しくありません。これらは犬が独創的に考え行動した創造性の一部です。犬は本来自分で考えて問題を解決するクリエイティブな能力を持っています。

犬の創造性には個体差がありますが、持って生まれたものの他に環境や経験によって鍛えられたり磨かれたりする面もあります。逆に言えば、一日中管理された状態で変化のない毎日を送っていると犬の創造性は低下して行きます。

散歩の際には心行くまで匂いを嗅がせる、ノーズワークや嗅覚を使ったゲームをする、安全面での支障がない場合にはできる限り犬に選択の機会を与えるなどの、いわゆるエンリッチメントと呼ばれるものを提供することで、犬の創造性が育まれます。経験と記憶を蓄え自信もついた犬は、見慣れないものに出会った時にも落ち着いていられる可能性が高くなります。クリエイティブな犬は幸せな犬です。

おわりに

普通の家庭犬たちが、トレーニングによって自分で考えて行動を創作し実行することができたという研究結果から、犬はクリエイティブな生き物であるというお話をご紹介しました。

犬の創造性を伸ばすと自信がつき幸福感を高めます。そのためには愛犬が楽しく頭を使えるエンリッチメントが不可欠で、創意工夫したエンリッチメントは私たちの腕の見せ所です。クリエイティブな愛犬のためには人間もクリエイティブでいる必要がありますね。

《参考URL》
The Creative Canine: Investigating the Concept of Creativity in Dogs (Canis lupus familiaris) Using Citizen Science
https://escholarship.org/uc/item/91c829qx

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