【犬との暮らし】てんかんを抱える愛犬と暮らす5~飼い主にできること
アドバンス ホリスティックケア・カウンセラーの佐藤です。前回のコラムに引き続き『てんかんを抱える愛犬との暮らし方』について、我が家の愛犬・ダンディとの暮らしを通じて私自身が経験したことを綴っています。
佐藤さんのコラム一覧はコチラ→ 【犬との暮らし】てんかんを抱える愛犬と暮らす
てんかんの発作を引き起こす原因は大きく分けて2つあり、1つは病的な要因、もう1つが環境的な要因です。今回は、後者の環境的な要因に焦点を当て、てんかん発作を起こすきっかけやタイミングと、飼い主にできる発作の予防方法についてお話します。
目次
発作を起こす要因とは?
これに対し環境的な要因とは、パートナーが強いストレスを感じた時や、継続してストレスを感じているという場合、過度な興奮・ショック状態などが原因となり発作を起こしてしまうことをさします。また、台風や梅雨などの季節的な気象状況や、天候によって変化する気圧や湿度によって体調に支障をきたすことなども環境的要因に含まれます。
てんかんを抱えるパートナーの飼い主さんからお話を伺う機会があるのですが、やはり梅雨時や台風、ゲリラ豪雨の前後に発作を引き起こすという声を多く聞きます。
てんかんの発作がこれら環境的要因と関連して起こることは経験的にわかってはいるものの、調べてみると科学的な根拠についてはまだまだ研究中な部分も多いそうです。これから雨の多い季節がやって来ますが、天候や気圧変化などを意識して生活しながらデータを取っていくことで、パートナーの傾向を把握するための大切な手がかりとなります。パートナー専用の手帳 やノートを準備して、気がついたことなどはこまめに記録しておくことをおすすめします。
飼い主の生活環境も関係!?
私は自営業を営んでいるため、自宅で仕事をしています。普段はパートナーたちも仕事部屋へは自由に出入りができるようになっていますが、私がパソコン作業に集中したい時や深夜に作業をする際は、入れないように扉を閉めてしまいます。時折「遊んで!」とキャンキャン吠えますが、大抵は時間の経過とともに静かになります。しかしながら稀には鎮まらないこともあり私を困らせます。我がまま(要求)に応えてしまうことはしつけ上あまり良くないことだとは理解していますが、吠え続けて興奮が続くことが引き金となり、のちに必ず発作を起こすことが経験上わかっていますので、そのような時はやむを得ず扉を開放します。
ダンディの場合、パピー期のしつけには随分と苦労をしましたが、シニア期の今はそれほど困るような問題行動もありませんので、しつけよりも身体のケアを優先するように考え方を切り替えました。
睡眠不足は大敵
興奮に加えて睡眠不足もまた、発作の要因と関わりがあると言われています。いくら抗てんかん薬をしっかりと飲み、食生活に気を配っていても、睡眠不足が続くと脳が疲れてしまい発作が起きやすくなります。
「犬は一日の大半を眠って過ごすのだから睡眠不足とは無関係なのでは?」と思われるかもしれませんが、ここで言う睡眠不足とは単なる時間数のことではなく、睡眠の質と言った方が適切かもしれません。我が家のケースのように人間が遅くまで起きていれば、一見するとぐっすり眠っているように見えるパートナーでも、生活の音や人の気配などにそれとなく気がついているものです。
我が家の場合は時間で言うと明け方に発作が起きることが多い傾向にあります。これは単なる偶然ではなく、実は自律神経と密接に関わっていることがわかっています。この時間帯は睡眠中の副交感神経が優位の状態から、覚醒に向けて交感神経が徐々に優位になる、ちょうど体のリズムが切り替わる時間帯と言われていて、自律神経が乱れがちになってしまいます。その結果として発作も起りやすくなると考えられます。
同居犬との関係にも配慮を
我が家には同居している兄弟犬、ブルーがいます。犬の世界の上下関係には、私たち人間が介入するのはなかなか難しいものですが、我が家でも2頭の関係性は彼らにしかわからない暗黙のルールがあるようです。
長年一緒に暮らしていますが、2頭の行動や関係性を観察しているとどうやらブルーの方が上位に立っていることが多く見受けられます。その時の場面の状況にもよりますが、近頃のダンディはブルーに対して怯えた表情を見せることも少なくありません。2頭ともシニア期であることを鑑みると、それぞれに心の変化があるのかもしれません。そういった些細なことが積み重なると大きなストレスにつながりますので、多頭飼の場合は疾患のあるパートナーだけに焦点を絞るのではなく、同居をしているパートナーも含めたメンタルケアの必要性についても考えなくてはいけません。
発作を一回でも少なくするために
人間と暮らしを共にしている限り、ある程度は飼い主のライフスタイルにあわせなければならない場面もあるかと思います。我が家は一緒にいる時間が長いので割と目の届きやすい環境にいますが、逆に留守番が多くて不安に思う飼い主さんもたくさんいらっしゃることでしょう。そこで、発作を起こさないようにするために普段からできるちょっとした工夫をご紹介します。
・普段の生活でできる対策
気圧の変化などの気象情報にも注意し、室温や湿度の管理をする
- 天気予報で毎日の気象情報をチェックし、天気の大きな崩れが予測される時は急な気圧の変化などに備えておくのも良いでしょう。意識をして心の準備をしておくだけでも、急な発作に慌てることもなく、落ち着いて処置ができるかもしれません。現在は、気圧の上昇や下降を予測して知らせてくれるスマートフォンのアプリなどもありますので、これらを上手に活用するのも良いでしょう。パートナーのいる部屋に気温や湿度を計測するデジタル表示の室温計があるととても便利です。棚やテーブルなどの高い場所ではなく床面に直接置くことで、パートナーの感じている環境により近い数値が計測できます。
夜間は十分な睡眠をとり、脳を休ませる
- 睡眠不足は脳に良くない影響をもたらします。夜間はゆっくりと休息できる静かな環境を確保してあげると良いでしょう。心が穏やかになり安眠効果の期待できるハーブティ(カモミールなど)を寝る前に与えるのもいいかもしれません。そのままではなかなか飲んでくれませんので、我が家ではささみの茹で汁でハーブティを煎れるなどの工夫をし、冷ましたものを飲ませています。嗜好性もあがるので喜んで飲んでくれます。また、ゴートミルクで作るハーブミルクティもおすすめです。
過度な興奮状態を継続させない
- どのようなことがきっかけで興奮してしまうかは、パートナーによって異なると思います。例えば、大好きなおもちゃを口に咥えたまま振り回す、クッションにマウンティングをするなどといった行動は、すぐにやめさせた方が良いかもしれません。どうしても興奮が収まらない時は、アロマディフューザーなどを利用して芳香浴をするのも良いでしょう。我が家では手作りのアロマスプレーを用意し、キャリーハウスの中に吹きかけます。やさしく声がけをしながらハウスへと誘導し、扉を閉めて布をかけたあとは別室へと移動させます。すると数分で昂ぶっていた神経が鎮まり、部屋を覗きに行くと寝息を立てて眠っている こともありました。この時に使用する精油は、ラベンダー などのリラックス効果が期待できるものがおすすめです。
発作が起きそうな予感がした時
- 天候などをみて「これから発作が起きそうだな」と感じたときは、バッチフラワーレメディ を使います。レメディは感情に作用するという点で、不安な気持ちを和らげる効果が期待できます。副作用もなく安全に使えます。
我が家ではレスキューレメディ を常備しています。挙動がおかしくなり始めたり何かしらのサインが見え始めた時は、直接舐めさせたり、飲み水に垂らしておくなどして備えます。また、発作が起きてしまった後は直接飲ませることが難しいので、その時はクリームタイプのものを耳に塗り、優しくマッサージをします。マッサージの効果とレメディの効果が合わさり、割と短い時間で回復することが多いです。
飼い主の生活状況や環境なども多いに関係してくることですから、必ずしもこちらに記したこと全てを実行できないかもしれません。それでも、ひとつでもできることがあるのならば、パートナーの健康のためにもやってあげたいものですね。
おわりに
今回まで5回にわたり、ダンディのてんかんにまつわる経験談を綴って参りました。発作の看病をしている時、なかなか治まらずに苦しそうなダンディの姿を見て不安な気持ちになり、思わず「どうしてこの子だけ、こんな病気になってしまったのだろう…」と病気を恨んだことが、これまで何度もありました。
ですが、逆にこういう状況に置かれたからこそ見ることのできた景色もたくさんあります。
もしもダンディがてんかんを抱えていなければ、ホリスティックケアというものに出会うこともなかったでしょうし、病気や栄養、その他諸々についてここまで詳しく調べることもなかったと思います。
ひとくちに健康というと、とかく病気や食生活のことばかりを考えがちですが、『ホリスティックケア』とは身体のことに限らず生活環境なども含んだ全体を俯瞰して、健康と向き合っていく考え方です。
※ホリスティックケアについてはコチラ→ ホリスティックケア・カウンセラー養成講座
我が家の場合、ダンディの持病をきっかけとして、同居犬であるブルーの健康までも併せて見つめ直すことができました。本来の言葉の意味から少しそれてしまうかもしれませんが、こういったことも含めて『ホリスティック(=全体、バランス)』な『ケア(=お世話)』であると、2頭との暮らしを通じて日々そう思っています。
今回お話しした内容は、あくまでも我が家のパートナーのケースです。てんかんをはじめ、病気の症状や発作の状態などには個体差がありますので、必ず獣医さんに相談の上、適切な処置を行うようにしてください。
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