【犬との暮らし】都会の犬たち11~トイレトレーニングの考え方
前回、犬を迎えたあとにいろいろと考えなくてはいけないことをお話ししましたが、今回はその中で一番頭を痛めることになるかもしれないトイレのトレーニングについてお話しましょう。
トレーナー三井さんのこれまでの記事はコチラ→三井さんの記事一覧
トイレトレーニングってなに?
パピーレッスンに伺って最初に確認するのがトイレの状況です。個体によって、トイレシーツなど、トイレの場所を早くに覚える犬もいれば、トイレシーツが認識出来ない子(ラグマットなどをトイレと勘違いする子)、わかってはいても、トイレまで間に合わずにミスってしまったりする犬など様々です。犬は猫と違って、自分でトイレの場所(砂)を探してしてくれないので、きちんとトイレを認識するまでには少し時間がかかります。また、母犬と一緒に過ごした頃のトイレの環境も大きく影響しているので、家に迎え入れてすぐうまくいくわけではありませんが、住まいが変わったという大きな環境変化をよいタイミングと考えて、トイレのことを一から教えてあげるといいと思います。
トイレトレーニングと聞くと、犬がトイレの場所を認識して失敗しなくなることと思われがちですが実はそれだけではありません。
犬たちを連れて散歩に出たとき、いつも決まった場所でトイレをしている我が家の犬たちを見て、散歩の途中あちこちで勝手にトイレをしたりすることはないのかと聞かれたことがありました。体調が悪い時を除けば、犬たちは私が「ここでトイレね。」と言った場所でトイレを済ませてくれます。男気の出てきた若犬は、ちょっと目を離すと足を上げたくなりはじめていますが、公道にはトイレをさせたくない場所もあるので、そういう場所では排泄をさせないように気を付けています。場合によって土が無い場合は、トイレシーツをアスファルトの上に直接敷いて済ませてもらうこともあります。
特に都会に住む犬たちにとって周囲は個人の住宅や他人のビルばかりですから、そこに臭気が伴う排泄をさせるというのは、犬を飼っていない人にとってはただの嫌がらせと思われても仕方がないでしょう。我が家も玄関の前に猫の額のような植込みがありますが、そこに排泄をされてハエがたかっていたり、臭いが充満していると、朝から気分がよくありません。
そこで、トイレを完全に犬任せにさせないための「トイレコントロール」のためのトイレトレーニングが必要になってくるのです。「コントロール」と聞くと、何やら人間が犬を思い通りにしているように聞こえますが、愛犬の管理は飼い主の責任ですから、咬傷事件や吠えの騒音被害と同じように排泄物の管理も飼い主の責任です。トイレをさせて良い場所良くない場所は犬にはわかりません。させたくない場所でしようとしている犬を止める前に、トイレをしてもいい場所でさせてから散歩に出るというのが犬にとってストレスは少ないのではないでしょうか。
「でも、ウチの犬はなかなかトイレをしてくれない。」と言う声が聞こえてきそうですね。そんなときこそトイレトレーニングが役に立つのです。
トイレトレーニングの第一歩は。
子犬は一日に何回もトイレに行きます。「行く」というより「してしまう」と言った方がいいかもしれませんが、1~2時間おきぐらいに排泄するので、ちょっと目を離すとどこかでしゃがみこんでいるということはよくある話です。フローリングやクッションフロアなど、後始末が簡単な床素材であればさほど目くじらを立てないで済みますが、一枚敷きのカーペットだったり、しみこんでしまうような素材だと、ついついイライラしてしまうものです。
もちろん、トイレのミスは子犬の失敗ではありません。生まれて数か月の子犬に、トイレの場所をきちっと覚えさせ、シーツからはみ出さずに排泄させるというのはとても難しいものです。小さい頃からミスに対して声を荒げていると、次第に子犬は人間の見ている前でトイレをしなくなり、ますます隠れた場所で排泄をして怒られるという負の連鎖に陥ってしまいます。
では、どうやったら子犬はトイレを覚えてくれるのでしょうか。
先ほど書いたように子犬のトイレの回数はとても多いので、一日これを10回以上繰り返せば大体の犬たちは、排泄はトイレシーツ(トイレスペース)で済ますものだと認識するようになります。とは言え、子犬ですから間違いもあるので、ミスってしまったときは何も言わずさりげなく片づけるようにします。
前回の子犬の住環境のところでお話しましたが、子犬の行動範囲はそんなに広くないので、ベッドの横にトイレを設置したり、サークルの外にも、トイレのスペースを部屋の広さに比例して数ヵ所に置いておいてあげることで、トイレに間に合わないというミスを減らすことができます。
トイレトレーニングのメリット
子犬がトイレを意味するキューを理解するようになると、トイレスペースまで誘導しなくても、「トイレは?」などの声掛けによって自分からトイレスペースに移動するようになります。つまり、排泄とキューの言葉が紐付されたということです。これは「オスワリ」や「ごはん」、「お散歩」と同じように、行動を表す言葉を理解することなので、どんな犬たちにもできるはずです。出来ない場合は単に練習回数が少ないだけです。
もちろん、いつも排泄する時を見張っているわけにはいかないと思われるかもしれませんが、初めて子犬を迎え入れた日ぐらいはさりげなく様子を観察して、その子の行動パターンを知るようにしましょう。また子犬は場所で理解している場合もあるので、いつも同じ場所で排泄するようであれば、その場所をトイレに変更した方がいい時もあります。人間もそうですが、落ち着いた場所でないとトイレは出来ないものです。
さて、こうやって排泄行為と言葉のキューが関連づいてくると、外に行ってもキューを聞けばトイレをするものだと犬はわかってきます。もちろん、散歩に出るようになったからと言って、すぐに外でトイレが出来る犬ばかりではありません。先ほど言ったように安心できる場所でなければトイレは出来ないので、もしかしたらトイレはしないで家に帰ってきて、あわてて家のトイレに飛び込むかもしれません。でもそれはそれでいいのです。外の環境に慣れて、外が安全な場所と理解するようになれば外でも排泄できるようになりますので、それまで待ってあげてください。場合によってはトイレシーツを持参して、静かな場所でトイレを促してあげてもいいでしょう。
トイレトレーニングとは飼い主さんに「トイレ済ませようか?」と言われたときにその場で済ませられるようになる練習をすることなのです。
一般家庭の場合、どこでトイレをしようが、いつしようがあまり気にならないかもしれませんが、ドッグスポーツをやろうと思ったらトイレトレーニングは必須です。競技中の排泄は場合によって失格になってしまうからです。
おわりに
一歩玄関の外に出れば、カーペット敷きの廊下が続いているマンションであったり、アスファルトが続く住宅街であったりと、都会の犬暮らしはとても制限されているのが実状です。犬のトイレぐらい好きな場所でやらせてあげたいと思う方は沢山いらっしゃるでしょうが、ご近所の迷惑を考えるとなかなか自由にもさせてあげられないでしょう。トイレをしようとするたびに、「あっ、そこはダメ!」とか、道路の真ん中でトイレをしている犬を無理やり引っ張って道路端に寄せるくらいだったら、初めからトイレをしても迷惑にならない安全な場所で済ませてからお出かけしたり、屋内施設に入ったりする方が犬にとってもストレスは少ないのではないでしょうか。
トイレをコントロールするというと人間の身勝手のようにも聞こえますが、犬がトイレをしたい気持ちを少し前に予測してあげることなので、行きたくない犬に無理矢理トイレをするように強要することではありません。もちろん体調が悪い時は犬自身もコントロールが出来ないのでそれは仕方のないことですが、健康であれば、ちょっと折り合いをつけることでお互いのストレスが軽減できますよ。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします
Twitterでグリーンドッグ公式アカウントをフォローしよう!
Follow @greendog_com三井 惇(みつい じゅん) CPDT-KA、ドッグトレーナー/ドッグダンスインストラクター、ホリスティックケア・カウンセラー
最新記事 by 三井 惇(みつい じゅん) CPDT-KA、ドッグトレーナー/ドッグダンスインストラクター、ホリスティックケア・カウンセラー (全て見る)
- 意外と多い、家の中でのマーキングトラブル!その理由と対処法とは - 2019年1月25日
- 犬の飛びつきを止めさせる!しつけ方法や飛びつく理由をドッグトレーナーが解説 - 2018年10月30日
- しつけのストレスがなくなる?ほめて育てる愛犬のしつけ方 - 2018年9月11日