【犬との暮らし】都会の犬たち10~犬を迎え入れたら
連載2回目で、犬と暮らし始める前の準備について簡単にお話させていただきましたが、今回は犬を迎えたあとのお話です。
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愛犬の居住空間はどこ?
愛犬のやってくる日を指折り数えて待ち、準備万端整えて愛犬を家に連れて帰り、設置したケージやサークルを前にどうするのが一番いいのでしょうか。愛犬の迎え入れる元がブリーダーである場合、ブリーダー宅を見ているとおおよそのイメージを持つことができますが、ペットショップやネットでの購入の場合、自分の家の中に犬がいる状態のイメージがつかみづらいものです。
長旅で疲れただろうからと、ケージの中に入れてやることはとてもいいと思いますが、中には、自宅に慣れるまで一週間ぐらいはケージにカバーをかけて中から出さないようにとアドバイスするショップもあるようです。かわいいからと家族がひっきりなしに抱っこしたりかまったりして犬を疲弊させてしまったり、家の中ですぐフリーにさせて、あちこちでトイレをするたびに叱り続けるなど、飼い主初心者が犯してしまいそうな間違いは沢山転がっていると言っていいでしょう。
犬の寝床とトイレの位置関係も難しいものですが、よくあるのが、ケージから出して遊んでいる時、犬がケージの中に設置してあるトイレに行かず、どこにでも排泄してしまうというものです。これは犬がバカなわけでも、人間へのあてつけでもありません。小さい子供が遊びに夢中になっていると、トイレが間にあわなくておもらしをしてしまうのと同じです。子犬にとって広い部屋の中では、トイレの場所まで辿りつけないのは当然のことでしょう。
そこで、部屋の広さによっては、子犬が大きくなってトイレの場所まで行く余裕が出来るまでトイレスペースを何カ所かに設置しておくとおもらしの確率が下がります。トイレシーツまで辿り着けなくても、近くまで行ければそれは失敗ではなく成功です。要はトイレシーツ=排泄場所と犬の頭の中にインプットされればよいのですから。
ここで必要になってくるのが、トイレへの促しです。人間の子供と同じで、「そろそろトイレに行った方がいいんじゃない?」と親が声をかけるように、子犬もトイレシーツのある場所に連れて行って少し様子を見て排泄を待つのです。これがトイレトレーニングのはじめと言ってもいいでしょう。この時、排泄を意味する言葉のキュー(トイレやワンツーなど)をさりげなくかけることで、その言葉と排泄行動が関連づき、将来愛犬とどこに出かけることになっても、言葉のキューでトイレを済ませることができるようになるのです。こういったトイレトレーニングについてはまた別の機会に。
一方せっかく用意した寝床を全然使ってくれない場合や、寝床とトイレシーツがごっちゃになっている場合など、人間からみると「なんで?」と思うような行動を子犬たちはとるものです。でも犬の生態を考えてみると意外と納得できることだったりします。犬は暗くて狭い場所が好きです。我が家の子犬たちも自力で歩き回れるようになると、ソファの下やワゴンの下の段など、暗い所にもぐりこんで寝ていました。つまり暗くて狭い場所が安心できるということです。
そのためにサークルの中にポンとドッグベッドを置くのではなく、本気で眠りたい時に安心できる屋根付クレートを置いてあげると自分から入って寝るようになったりします。最初は警戒して入らないこともあるので、クレートの中におやつを幾つか入れておくと自分から入るようになります。ここでも「ハウス」などの言葉のキューを関連付けてあげると、車での移動や、旅先でクレートに入れなくてはいけない場合なども、キューひとつで自分から入ってくれるようになるので犬もストレスにならずとても有効です。
では、サークル本体はどこに置いたらいいのでしょうか。子犬は寂しがり屋です。完全に家族から隔離されてしまえばさみしくて鳴くことも予想されます。人の出入りがあまりなく、家族が見える場所に設置してみてはいかがですか。
ここまで読んで、「ウチはサークルは使わず、犬はフリーでどこに行ってもいいようにするから、こんなことは必要ない。」と言わないでくださいね。この手順を踏むことで、ある程度大きくなったらサークルを外し、部屋の中に置かれたクレートやドッグベッドなどを犬たちは自分たちに都合のいいように使い、トイレに行きたくなればトイレシーツまで自分で行って用を足したり、あるいは散歩に出かけるまでトイレを我慢できるようになるのです。
我が家の犬たちも、子犬の頃はサークルやケージを使い、今は各々好きな場所(ソファの上やクレート)で惰眠をむさぼり、トイレはこちらから見計らって声をかけるまでは我慢していてくれます。アスファルトばかりの散歩ではなかなかトイレがしづらい場合は家の中で済ませてから出るという方法を取ることで犬たちにかかるストレスを軽減させることができます。愛犬を迎え入れたら、まず初めに愛犬の居住空間を考えてあげましょう。
犬は吠えるもの
犬を迎えて次に来るのは「吠え」です。ペットショップなどでガラス越しに鳴いていた犬も、家に連れて帰ってくれば環境の変化も加わり、様々な要求や警戒が出てきて吠える場面が増えてきます。迎え入れてから「こんなはずじゃなかった。」となる前に、いろいろな状況を想定しておくと慌てないですみます。もちろん犬も個体差があるので、すべての子犬が同じように吠えるわけではありません。元々の気質によって、吠えやすいタイプの子とそうでない子がいるものです。
しかし、都会暮らしの場合、当然のように隣家が近かったり、集合住宅という住環境では、『吠えはこの子の気質だから仕方ない』と放置しておくわけにはいきません。まずは吠えている原因を突き止めることから始めましょう。さみしくて吠える(鳴く)のか、びっくり(警戒)して吠えているのか、興奮(嬉しい)して吠えているのか。吠えるのは人間の言葉と同じです。必ず理由があるので、どういう状況で吠えるのかよ~く観察してみましょう。原因によって対処法は変わってきます。
たとえば、ついついさみしくて(相手にして欲しい)吠えたりされるとあやして「吠え」を止めようとしてしまいます。犬にとっては精神的に満足するので、すぐ吠えなくなりますが、長い目で見た時、相手をしてやれないときがあれば、逆に犬がストレスを感じて、更に吠えが増加する可能性があります。ちょっとのことだからと吠える状況を放置するのではなく、早めの対処を考えましょう。
犬は噛むもの
子犬は特にいろいろなものを口につっこみ、噛んだり食べたりしてしまうことがあります。子犬の口が届く場所に危ないものを置かないことが基本です。もちろん子犬は日々成長するので、今日は届かなくても、明日には届いてしまうかもしれません。そんな予測も必要ですね。
また、噛んで欲しくない物を届くところに置かない代わりに、噛んでもいいおもちゃなど危険性の無いものを子犬の傍に置いておくことで他の物を噛むのを防ぐことができます。特に犬は動くものに反応するので、スリッパや人のかかとなど、足元を狙って追いかけて噛んできたり、目の前で動く人の手に対して反応して噛んでくることもあります。
じゃれている甘噛みなら痛くはないでしょうが、子犬の歯は尖っていて、子供の手などは簡単に傷をつけてしまうこともあります。人の手は美味しいものをくれたり、やさしく撫でてくれるものと刷り込んで、間違っても怖いものと認識させないようにしましょう。そのためには、噛む(歯を当てる)ことも想定し、吠えと同様に心構えをして、早めに対処することで悪化を防ぐことができます。
おわりに
犬との生活は始めてみないとわからないことばかりです。ネットには様々な情報が錯そうし、対処法とされているものが愛犬にマッチしているかどうかを確認することは出来ません。時には獣医さんからアドバイスを受けることもあるでしょう。ただ、基本的に獣医さんは医学の分野では日々新しい情報をアップデートされていますが、マナーの教え方やトレーニング方法についてはアップデートされていない可能性もあります。トレーニング方法に関してはトレーニングのプロの方(行動学の専門家)に確認しましょう。
これからおよそ15年共に暮らす愛犬の一生がかかっているので、是非本気で愛犬と向き合っていただきたいと思います。
次回の記事はコチラ →【犬との暮らし】都会の犬たち11~トイレトレーニングの考え方
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Follow @greendog_com三井 惇(みつい じゅん) CPDT-KA、ドッグトレーナー/ドッグダンスインストラクター、ホリスティックケア・カウンセラー
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