2017.06.01その他の体のケア

犬の膝が脱臼する病気とは?犬の膝蓋骨脱臼の症状と手術・治療法

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犬の膝が脱臼する病気とは?犬の膝蓋骨脱臼の症状と手術・治療法

膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)とは、特に超小型犬や小型犬でよくみられる関節疾患です。動物病院に健康診断に行くと、必ずといっていいほど、獣医師が膝を触って脱臼の有無を確認します。愛犬にスキップをしたり、後ろ肢を伸ばす仕草などがみられたら、もしかして膝蓋骨脱臼があるかもしれません。今回は、膝蓋骨脱臼についてGREEN DOGの獣医師伊東が説明します。

膝蓋骨脱臼とは?

膝蓋骨(膝の皿)は大腿骨(ももの骨)の滑車溝というくぼみの中にはまっていて、膝関節のスムーズな屈伸運動に役立っています。膝蓋骨脱臼は、さまざまな理由で、膝蓋骨が滑車溝から外れてしまうことにより生じます。お皿が内側にずれた状態を内方脱臼、外側にずれた状態を外方脱臼として分類します。犬では高率で発症し、最も一般的な膝関節の異常の一つとして認識されています。大型犬にもみられますが、特に超小型犬や小型犬で多く発症します。

英語で膝蓋骨脱臼を patella luxation というため、「パテラ」と簡易的に呼ばれることがあります。

膝蓋骨脱臼の原因は?

内方の膝蓋骨脱臼は大型犬種でも発生しますが、特にトイプードル、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、チワワ等の超小型や小型犬に多くみられます。

膝蓋骨脱臼の原因のほとんどが先天的です。まれに、打撲や落下、交通事故など外傷性で起こることもあります。

滑車溝が浅かったり、膝蓋骨を支えている靭帯の位置がずれていたり、大腿四頭筋の内外のバランスに異常があること等が原因として考えられています。進行すると筋肉が萎縮し、骨格の変形が起こり、さらに脱臼しやすくなります。

症状について

犬の膝が脱臼する病気とは?犬の膝蓋骨脱臼の症状と手術・治療法

膝蓋骨脱臼は痛みがない場合も多い

軽度で症状を全く示さないものから、重度の歩行異常を示すものまでさまざまです。軽度のものは、健康診断の時に「膝のお皿が外れやすい」と言われて、そこで初めて膝蓋骨脱臼があることに気がつくということが多いようです。また、習慣的に脱臼しているケースで、痛みがほとんどなく、飼い主も気がつかなかったというケースもあります。

一般的に、Singleton の分類もしくはその改変したものが用いられ、症状によるグレード(重症度)が分けられています。

グレード1

膝関節を伸ばしたとき、指で押すと脱臼するが、自然に元の位置に戻る。痛みは殆どない。症状は無いか、まれにスキップ様の歩き方がみられることがある。

グレード2

日常の生活で時々脱臼する。指で押すと元に戻る。
時々、スキップするようにあるくことがある。

グレード3

ほとんどの時間脱臼しているが、手で元に戻すことが可能。ただし、手を放すと脱臼してしまう。骨が重度に変形し、時々スキップするものから重度の歩行異常まで様々な症状を示す。

グレード4

常に脱臼した状態で、整復することができない。骨の変形も重度で、膝を十分に伸ばすことができないため、膝を曲げたままの状態で歩くといった歩行異常が見られる。肢がほとんど着けないケースもある。

手術はどのようなタイミングでするの?

膝蓋骨脱臼の病態は非常に多様であるため、どのグレードで手術をすべきか、ということは専門家の中でも議論があるようです。

一般的には、グレード4であれば直ぐに手術は行われます。一方、検査によって脱臼が認められることはあっても全く無症状のグレード1や2では、手術をすることは少ないようです。

しかし、低いグレードで痛みがなくても、若齢犬において筋肉萎縮や骨変形を防ぐ目的で手術をするケースなどもあります。また、痛みや歩行異常(関節が伸びないので腰が落ちている)がみられるグレード3で手術に踏み切ることもあります。このように、手術のタイミングは犬の病態や獣医師の判断によって、本当にさまざまです。

手術の方法はいくつもあり膝蓋骨が脱臼する原因によって異なります。代表的なものとして次のような方法があります。

     滑車形成術

  • 膝蓋骨が納まる滑車溝を深くして、ずれないようにする
     脛骨粗面転位術

  • 膝蓋靱帯が付着している脛骨粗面を移動させることによって、大腿四頭筋と膝蓋骨、滑車溝、膝蓋靭帯の付着部分がまっすぐになるよう調整する

その他に、内側・外側支帯の開放術あるいは縫縮術、大腿骨骨切り術などがあります。

手術の代金は片肢で10万円~30万など、病院によって大きく差があります。

外科手術の予後について

犬での手術の予後は、内方脱臼では、グレード3 までは一般的に良好で、成功率は90%以上と報告されているようです。術後にグレード1の脱臼がみられることがありますが、多くの場合、再手術の必要はありません。ただし、グレード4の手術の予後は、重症度によってさまざまなようです。

注意しなくてはいけないことは、外科手術後の管理です。せっかく手術をしても、手術後の自宅管理が不十分だと、治らないばかりか、ひどくなることにもなりかねません。1~2ヶ月は自宅で安静状態を保ち、患部に負担が大きくかかるジャンプや急な回転などの動きをさせないよう、術後管理とリハビリをしっかりしなければなりません。

内科的には治療はできないの?

グレードが低く無症状であったり、麻酔処置のリスクが高かったりするケースなどでは保存的療法が選択されることが多いです。炎症を抑える薬や鎮痛剤、レーザーなどを使用して、痛みや関節炎の症状を抑えます。膝蓋骨脱臼を起こしている関節の構造や靭帯のズレなどが改善されるわけではないので完治は望めませんが、併せて、食事や生活面に配慮することによって、再脱臼を防いで良好に維持できるケースもあります。また、マッサージや鍼灸は、膝蓋骨脱臼によって生じる筋肉の緊張や痛みを和らげることで他の部位にかかる負担を軽くしたり、歩き方や体重のかけ方を変える目的で行われます。

食事や運動、日常生活でできること

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適切な体重管理と筋肉の維持を心がけよう

膝蓋骨脱臼にケアにおいて、体重をコントロールすることと、日常生活での関節へストレスをかけないことは、とても大切です。

体重のコントロール

肥満である場合、関節や靭帯にストレスを与え、また痛みの原因となります。膝蓋骨脱臼をはじめ、関節の病気では、体重を適正にコントロールすることは最重要課題です。膝蓋骨脱臼のある犬では症状の発現を防ぐか、もしくは遅らせることができます。また症状が発症している場合でも、症状を軽減することができます。

適正よりも体重が重い場合には、食事には低脂肪・低カロリーのもので、かつ筋肉の維持のためにタンパク質をしっかり含んだものを選び、量やオヤツも管理して減量を心がけましょう。

犬のダイエットについての記事はコチラ→犬のダイエット方法~散歩・運動・遊び編

日常生活のコントロール

日常生活においても、関節に負担をかけないことが大切です。例えば、次のようなことに気をつけて関節ケアを心がけましょう。

  • 動物病院で、膝関節の状態をよくチェックしてもらう
  • 階段の上り下り、ソファへの跳び乗り降りをさせない
  • 興奮してむやみに走り回らせない
  • フローリングには滑り止めマット を敷く
  • 過度のボール投げ、フリスビーやアジリティーなどで急転回させるようなことは避ける
  • 足を踏みはずしやすい砂利道の散歩はなるべく控える
  • 運動

    膝蓋骨脱臼は、子犬の時に検診で分かるのが殆どです。目立った症状がないうちに発見できれば、膝関節を支持する筋肉や靭帯を鍛えることで病気を克服できる場合もあります。

    仰向けにし、後ろ足を手で持ち膝の関節の屈伸運動をさせる方法も効果的です。1回に屈伸運動を100回~200回、それを1日に2~3回行います。この方法は、その後の習慣性脱臼の予防に有効と言われています。

    また、水泳も体重過剰の犬には最適です。最近はハイドロセラピーを実施している施設が増えてきています。

    日々の運動やリハビリについて、獣医師としっかり相談しながら、進めていきましょう。

    おわりに

    足を痛そうにしたり、スキップをしたりする仕草がみられたら、楽観視せずに動物病院で診断してもらうことが大切です。また、膝蓋骨脱臼の発症には遺伝要因が強く疑われますので、もし症状がある場合には、その犬の子孫にも発現する可能性が高いため、繁殖はすすめられません。

    愛犬が膝蓋骨脱臼を患っている場合でも、発症を遅らせたり、進行を抑えたりするために、適切な食事管理と生活面でのケアに取り組んでいきましょう。

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    伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー

    1998年、日本獣医畜産大学(現在、日本獣医生命科学大学)獣医学科を卒業。動物病院や大手ペットフードメーカーでの勤務を経た後、GREEN DOGへ。現在は、スタッフ教育や商品の品質検証、オリジナルフードの製造に関わる。
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