2020.08.07老犬のケア , 介護

愛犬の介護に向き合うとき、少し心が軽くなる2つのリサーチ結果

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愛犬の介護に向き合うとき、少し心が軽くなる2つのリサーチ結果
犬のココカラを読んでいる皆さんの中にも、愛犬を介護した経験のある方、または今まさに介護の日々を過ごしているという方がいらっしゃるかと思います。
我が家の犬たちはまだ介護が必要な状態ではありませんが、この2ヶ月ほどの間に1匹が体調を崩したり、もう1匹が複数回の血液検査が必要になったりと、今までよりも犬たちの介護が現実的に頭に浮かぶようになりました。
ちょうどその頃タイムリーに「犬の介護をすること」「犬の世話をすること」に関する2つの興味深いリサーチ結果が報告され、とても強く共感を覚えました。どのようなリサーチだったのかをご紹介したいと思います。

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我が家の犬たちの老化と自分の心の変化

愛犬の介護に向き合うとき、少し心が軽くなる2つのリサーチ結果

我が家には15歳の中型雑種と14歳のミニチュアピンシャーがいます。どちらも正真正銘のシニアですから、いろいろと健康上の問題は抱えています。
15歳のニコは腎不全と関節炎、14歳のニヤは心肥大、どちらも投薬で毎日元気に過ごしており、生活に大きな支障はありません。
けれど6月中旬にニコが脚の震えを見せたり、ニヤの血液検査の結果からアジソン病の疑いがあるとしてACTH反応テストを受けることになったりと、このようなことが続いて起こって私自身がやや落ち込んでいました。
幸いニコは漢方薬が効果を見せてくれて今は何事もなかったように元気で、ニヤはテストの結果アジソン病ではありませんでした。
やれやれと胸を撫で下ろしたものの、2匹とも少しずつ衰えが進んでいることは確実で、そう遠くない将来にやって来るであろう介護の日々がはっきりと現実的になった気がしました。

慢性疾患の犬の介護が飼い主に与える影響とは?

愛犬の介護に向き合うとき、少し心が軽くなる2つのリサーチ結果
犬たちの健康問題でバタバタが続いて、犬の介護がはっきり視野に入って来たと感じるようになった頃、とてもタイムリーに発表されたリサーチがありました。
イギリスの獣医師と自然環境科学の研究者が、変形性関節症を患っている犬の飼い主40人にインタビューを行い、慢性疾患の犬の介護が飼い主の生活の身体面、精神面、経済面においてどのような影響をもたらしたかを調査したものです。
言うまでもなく、犬の介護は身体、精神、経済全ての面で飼い主にとって負担になり、生活の質を低下させることもあります。リサーチの目的の1つは、犬の症状の進行と飼い主の負担を数量化し、サポートを受ける際などの明確な物さしを作ることです。
また負担やストレスが明らかになれば、どんな情報や助言が有効なのかが具体的にわかるようになります。
慢性疾患では他に糖尿病や心疾患の犬の介護で同様のリサーチが過去に行われていますが、変形性関節症では犬の運動能力に影響があるため犬が自信を失い、飼い主への精神的な依存が強くなる傾向があるそうです。
このように病気によって犬のニーズや犬との関係が変化するにも関わらず、ほとんど全ての飼い主が「人生の辛い時に隣にいてくれた犬との絆があるから献身的な世話は当然のこと」と捉えていたそうです。
犬から飼い主への依存傾向は長年一緒に暮らした老犬の方が若い犬よりも強いそうですが、これも飼い主たちは好ましいことと受け止めていました。
この飼い主さんたちの姿勢はとても共感できるものですし、ややもすると悲壮になりがちな愛犬の介護に対して「別に大げさに構えなくてもいいんだよ」という声が聞こえるような気がします。

犬のニーズに応えて世話することで飼い主が得るもの

愛犬の介護に向き合うとき、少し心が軽くなる2つのリサーチ結果
もう1つはイスラエルの心理学者の研究チームが「犬を飼うことのポジティブな効果」についての研究の一環として行った、犬を飼っている16〜74歳の人104人へのアンケート調査です。
回答者は3週間にわたって犬の行動と自分の行動について決まったフォーマットの日誌をつけ、その時の自分の感情について所定の段階表にしたがって幸福度や苦痛度を記録します。
犬が自分のニーズに応えてくれた時、飼い主の幸福度や犬との親密度が高くなり、心理的苦痛の軽減につながっていました。これは予想できる通りですね。
一方で、自分自身が犬のニーズに対してケアやサポートを与えた時にも、飼い主の幸福度、満足度が上がり心理的苦痛の軽減という利益を得たという結果が見られました。
犬に与えることで得られる幸福というのは、従来とは違う新しい視点からの犬との暮らしのポジティブな効果とも言えそうです。
確かに愛犬の世話をすることで満たされた気持ちや幸せを感じるという経験を持つ方は多いと思います。
まるで前述の慢性疾患の犬を介護する飼い主の心を説明するようなリサーチ結果とも言えますね。

おわりに

我が家の愛犬の介護のことも考えておかなくてはいけないなあと思っていた矢先の、介護する心持ちを少し軽くしてくれるような2つのリサーチについてご紹介しました。
変形性関節症という長期にわたる介護に対して「大切な、愛する犬のためだから」と答える飼い主さんたち、人間は犬が求めているケアやサポートを与えることでも幸せを感じるという調査結果を見ると、介護について考える時少し肩の力が抜けたような気がします。

とは言え、動物の介護は人間の介護とはまた違う負担があるのも事実です。人間の場合と違って公的な支援はありませんし、周囲の理解も得にくい場合も少なくありません。
けれどここで紹介したような、動物の介護をする人のことを真剣に考えた研究も行われています。
今、愛犬の介護をしていらっしゃる方々、将来の介護を考えている方の、ちょっとした心の拠り所になれば幸いです。

《参考URL》
https://bmcvetres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12917-020-02404-5
https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-020-00279-9

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ガニング 亜紀(ガニング アキ)

米国カリフォルニア州在住。2005年から犬との暮らしをスタートして2匹の犬をそれぞれ15歳で見送りました。犬たちとの16年間で知識が増えると犬との暮らしが楽になることを痛感しました。自分が「へ〜!」と感じたことを堅苦しくなくお伝えしていきたいと思っています。