2023.10.06一緒に。もっと、

犬が幸せに生きるために大切な3つのCとは

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犬が幸せに生きるために大切な3つのCとは

「愛犬の幸せ」は犬と暮らす人ならいつも心の中の大きな位置を占めている事柄ですよね。でも犬にとって何が幸せなのかと改めて考えると、はっきりした答えを出せなかったりします。

近年は犬をはじめとして動物のメンタルヘルスについても研究が進んでいます。メンタル=心が健康であることも幸せの大切な部分でもあります。犬が心を健康に保ち、幸せでいるために大切なことを考えてみたいと思います。

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動物のウェルビーイングという考え方

犬が幸せに生きるために大切な3つのCとは
動物の幸せというテーマについて英語で書かれたものを見ると「Well-being」という言葉が使われています。ウェルビーイングとは身体的にも精神的にも満たされて快適な状態であることを意味します。

動物が身体的に健康で快適かどうかは比較的目に見えやすいので、動物のウェルビーイングを考える時はメンタルヘルスに重きが置かれます。

獣医師で、現在はアメリカの大規模動物保護団体ベストフレンズアニマルソサエティのウェルビーイング研究部長を務めるフランクリン・マクミラン博士は『動物のメンタルヘルスとウェルビーイング』の著者です。

マクミラン博士はこの著書の中で、動物が自分の生活環境を自分でコントロールできるという感覚を持つことはポジティブな感情や精神的な健康に強く関連していると述べています。

マクミラン博士が「コントロール」というキーワードで動物のウェルビーイングを説明していることを受けて、コロラド大学の生態学及び進化生物学のマーク・ベコフ博士はさらに2つのCのつく言葉を追加して「犬の幸せのために必要な3つのC」を挙げて、犬にとって必要なことを説明しています。

「コントロール」は犬が主体性を保つために必要なもの

犬が幸せに生きるために大切な3つのCとは

1つめのCは上にも書いたControlのCです。人間と暮らしている犬にとって生活のほとんどは自分でコントロールできないことだらけです。食事もトイレも運動も、生活の重要な部分をコントロールしているのは人間です。犬は自分の生活に対して自分で選択し、自分の環境をコントロールする主体性を基本的に持っていません。

しかし犬も含めてすべての動物にとって、自分の生活を自分で選択してコントロールできるという感覚は精神的な健康のために不可欠です。

そこで生活の中で安全や衛生に支障のない場合には犬にコントロールを預けてみましょう。散歩の行き先や歩くペースを犬にまかせ、安全な場所では満足がいくまで匂いを嗅がせる。これだけでも犬のウェルビーイングは改善します。夜寝る場所も犬の主体性に任せましょう。

犬が自分でコントロールする事柄の中でも、不快なこと、怖いものに出会った時に自主的に避けたり遠ざかったりできることは非常に重要です。例えば散歩中に見慣れないもの(工事車両など)を見て、犬が進路を変えたい仕草を見せた時などはそれを尊重することが大切です。

散歩や睡眠といった日常的なことを自分でコントロールしていると感じ主体性を持つことは犬の自信、ひいては精神的な健康につながります。

犬の「同意」を得ることを意識しているでしょうか

犬が幸せに生きるために大切な3つのCとは

2つめのCはConsent、同意という意味です。犬を撫でたい時、他の犬が近づいてきた時、おもちゃで遊ぼうと誘う時、犬がその行動に同意しているかどうかはとても大切で、私たちはいつも犬の同意を意識する必要があります。

散歩中に見知らぬ人や他の犬がアプローチしてきた時に犬が明らかに乗り気でなかったり、後退りした時に無理強いすることは絶対にやめましょう。

言葉を使わない犬が同意しているかどうかを知るためには、人間が犬の行動や姿勢からシグナルを読み取る必要があります。耳や尻尾のポジション、目線、頭の位置など犬のシグナルで見るべきところはたくさんありますが、顔や体の筋肉がこわばってリラックスしていない時には、大抵の場合犬は同意していません。

歯磨きや爪切りをするために少しずつ慣れていくトレーニングは、言い換えれば少しずつ犬の同意を得て行くための交渉作業です。

犬が拒否せずに受け入れてくれた時にトリーツなど「うれしいもの」で応えて次のステップに進むという犬の同意を尊重した交渉は、犬との信頼関係を作っていきます。

同意と主体性は強く結びついていて、どちらも犬の意思を尊重することがポイントです。自分の意思が尊重されていると感じられる犬は幸せです。

犬の行動やシグナルを読み取るには「文脈」が重要

犬が幸せに生きるために大切な3つのCとは

3つめのCはContextです。文脈と訳されることが多いですが、前後関係や背景の事情といった意味を含みます。「同意」の項目でシグナルを読み取る必要があると書きましたが、犬の行動やシグナルを正しく判断するためには、そこに至るまでの前後関係や背景を考慮しなくてはなりません。

その場にいる犬や人間が何をしていたのか、どのような関係性なのかといったことを総合的に考える必要があります。例えば犬が歯を剥く行動は、一般的には攻撃の手前の警告を示すことが多いですが、その行動の前後関係や背景、そして他のボディシグナルを考慮すると、攻撃や警告の意図はないが不安やストレスを感じているという場合もあります。

犬のボディシグナルは「耳がこんな形の時はこんなふうに感じている」といった単純なものではなく、いつも前後の文脈といっしょに考えなくてはなりません。

おわりに

犬が幸せに生きるために大切な3つのCとは

犬が精神的に健康で幸せでいるために大切な3つのこと、主体性、同意、文脈について考えてみました。
「犬にそこまで気を遣わなくてはならないの?」と感じた方もいるかもしれません。けれど相手を尊重することと気を遣うことは似ているようですが違います。

犬と人間はお互いに尊重し合う必要があるギブアンドテイクの関係です。犬は自分の意思が尊重されていることを知ると、唸ったり歯を剥いたりする必要がないことを学びます。

人間の社会の都合で犬の希望を全て叶えることはできませんが、犬と人間はおだやかに交渉を重ねながらバランスの取れた関係を作っていくことが両方の幸せにつながるのではないでしょうか。

《参考URL》
Mental Health and Well-being in Animals
https://vdoc.pub/documents/mental-health-and-well-being-in-animals-7sdvck9fivm0

3 Keys to a Happier Dog
https://www.psychologytoday.com/us/blog/animal-emotions/202306/the-happy-dog-agency-consent-and-context-are-important

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ガニング 亜紀(ガニング アキ)

米国カリフォルニア州在住。2005年から犬との暮らしをスタートして2匹の犬をそれぞれ15歳で見送りました。犬たちとの16年間で知識が増えると犬との暮らしが楽になることを痛感しました。自分が「へ〜!」と感じたことを堅苦しくなくお伝えしていきたいと思っています。