2018.03.23心のケア

【犬との暮らし】犬の心を育む12~言葉より伝わる!犬のシグナル活用術

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【犬との暮らし】犬の心を育む12~言葉より伝わる!犬のシグナル活用術

こんにちは。ヒトと犬の心と行動カウンセリングをしている、心理士でドッグメンタルトレーナーの白田祐子です。

「落ち着かせたいのに、興奮がとまらない」「注意をしているのに、聞いてもらえない」など、伝えたいことがなかなか通じずに困ってしまうことはありませんか。どうすると、私たちの意図が正しく伝わるのでしょう。今回は、犬同士がどのように意思疎通をはかっているのかを確認しながら、犬のやり方やルールを参考に、解決の糸口を見つけていきたいと思います。

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犬は会話をするのか

愛犬との暮らしの中で「うちの子は言葉を理解して話す」と感じている飼い主の方は多いと思います。たとえば「ご飯たべる?」と話しかけたとき、愛犬が声色を変えて反応すると、私たちにはなんだか「ごはん」や「食べる」と言っているみたいに聞こえるものです。

でも、実際には犬は言葉を喋りませんし、言葉を聞き分ける能力も人間より優れてはいません。でも、その代わり、表情や姿勢、視線や耳の向き、口の動きや尻尾の位置などから、相手の意思やその時の感情などを判断できる能力を高め、より円滑にコミュニケーションを行うためのボディランゲージを極めていきました。

ボディランゲージは進化の過程で遺伝的に持ち合わせ、世界中の犬の共通言語と考えられています。その能力は他の犬の動きを見て、実際に使ってみることで、より強化されていきますが、生活環境によっては失われてしまうこともあり、能力が失われた犬の多くは、他の犬とのコミュニケーションがうまくいかなくなるなど、とても重要な能力といえます。

犬の共通言語カーミングシグナル

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遊び?喧嘩?犬同士ではちゃんと理解しています

犬が犬同士で暮らしていたときは、コミュニケーションが最適に行われる必要がありました。そのため、ボディランゲージは、争いが起こった時にそれを中止するためのカットオフシグナル(cut off=中止・中断、signal=合図)と呼ばれるものから、より早い段階で争いを避けるための、カーミングシグナル(Calming=落ち着かせる)と呼ばれるボディランゲージへ発達していきます。

カーミングシグナルは、不安や緊張、恐怖や不快感など、苦手な場面や慣れない状況でも「慌てずに落ち着こう」と自分自身を落ち着かせます。あるいは「少し落ち着きなよ」「何もしないよ」と、相手を落ち着かせ自分は無害であることを示したり、「その態度は不快だな」と対立を事前に回避させる手段にもなるのです。

犬の世界に飛び込もう

私たちは言葉という最強の表現手段があるため、ボディランゲージは言葉を補う二次的なものだと感じるかもしれません。でも、言葉を持たない犬は、ボディランゲージだけで多くの感情や意思を伝え合います。また、犬だけではなく、人間の表情や振る舞い、態度にも非常に敏感で、感情や意思を読み取る能力に優れていることが科学的にも明らかになりました。私たちは言葉を発していないときも、感情や意思は何らか形で滲み出ていて、犬はそれらを人間からのメッセージとして受け取っているのです。

カーミングシグナルをはじめとする犬のボディランゲージ(以下「シグナル」)を正しく知ることは、犬の訴えたいことを適確に理解するということです。また、私たちもシグナルを使うことで、伝えたいことを犬にシンプルに伝えるのに役立つはずです。私たちが犬の世界に飛び込み、犬のやり方を見習うことは、犬を知る大切な一歩なのです。

人と犬のシグナルは違う

人間の感情を犬のシグナルにそのまま当てはめないよう、気を付ける必要があります。犬のシグナルを人間の視点で解釈しようとすると、そこに重大な誤解が生まれ、問題行動が引き起こされるなど、犬との関係に支障が起こる可能性があります。私たちが良かれと思って提供した解決策や人として自然な反応が、人間には効果があっても、犬には的外れだったりするからです。往々にして、犬が興奮し、伝えたいことが歪んで伝わってしまうのは、人間が言葉を発しすぎることが原因になっているようにも思います。

犬のシグナルを使ってみる

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『ちょっと緊張しちゃうな』

犬のシグナルのどのような点に注目し、取り入れていくとよいのか、具体的な例をいくつかご紹介します。]

すぐに反応がない(呼んだら、戻ってきてほしい)
愛犬の名前を大きな声で何度か呼んでも、よそ見をしたり遠回りをしたり、なかなか戻ってきてくれないことはありませんか?あるいは、急いで散歩を終わらせたい時に限って、念入りに地面の匂いを嗅いで先に進まないなど。このようなとき「早く!」と急かして、犬がきびきび動くかと言うと、そうならない場合の方が多いように思います。

遠回りゆっくりした動き、一部の匂い嗅ぎ行動は「落ち着きなよ」というシグナルです。自分自身では気づかない焦りや、イライラを犬は適確に感じ取っているのです。犬同士で仲間が離れた場合「早く!」とは言わず、その場で静かに待ちます。戻ってくると、尻尾を振り「良かった、安心した」と伝えます。私たちも少しだけ辛抱して見守り、戻ってきたら「遅い!」などと言わず、笑顔で褒めるといったシンプルな方法が犬には好ましいのです。

犬の興奮した動きを抑えたい
興奮状態を抑えようと「お座り!」と声をかけたり、違う場所へ移動させようとしても「全然いう事をきかない」と、お悩みの方は多いのではないでしょうか。落ち着かせようと撫でたり、抱き上げようとして手を噛まれそうになった経験のある方もいるかもしれません。

犬は、ポジティブな興奮状態の友好的な相手に対しは、嬉し気にステップを踏みながら顔は相手に体は横に向け「嬉しいけど、落ち着いて!」と伝えます。同じポジティブな興奮でもあまり好ましくない相手には、あまり動かず顔を横に向けて不快感を表します。そして、緊張や不安などネガティブな興奮状態の相手には、体を斜めや横向きにし、お座りや伏せをして首筋を掻くなどしながら「ちょっと緊張するんだけど」「落ち着いたら?」と伝えます。緊張度がより高い相手には、体の後ろや横を向けて固まり、顔を完全にそらします。

私たちも犬の心理状態によって対応を変える必要があります。嬉しくて興奮しているときは、ゆっくりと横向きに床か椅子に座り、声を出さずに顔を見て、そっと手を体に添えてあげると言葉を発するよりもずっと早く落ち着かせることができます。不安で緊張している犬には、犬を見ずに座ってあくびをするなどリラックスした様子を見せると緊張を解きます。興奮が高い場合は犬に背を向け、無言で固まっていると多くの犬は離れて行きます。

自分以外への興奮をとめたい
犬が、他の人や犬などに興奮しながら対峙しているときは、その間に割り込むようにします。多くの犬は、その場が緊張状態にあると感じたときは、争いを避けようと顔を横に向けた状態で間に割り入ります。夫婦喧嘩を犬が仲裁したという話しはよく聞きますが、これも犬のシグナルなのです。

犬同士の挨拶を手助けする
私たちは相手の正面に立ち、アイコンタクトをとって挨拶をするのが礼儀です。でも犬の場合、正面から近づき目を合わせることは攻撃を意味しています。犬の前にしゃがんで目を見つめる人は多いですが、犬が目を逸らしたり、顔を背けたりしていれば、吠えられなくても「やめて!」と訴えています。カメラ目線を撮影できないときも「嫌だなぁ」と思われている可能性は高いのです。

犬同士は、横や後ろから頭を下げてゆっくり近づき、鼻をつかって挨拶をします。愛犬を他の犬に近づけるとき、リードを張って短く持ちすぎると、相手の横から回り込むことができず、さらには、犬の意思に反して上半身が持ち上がるなど、正しい姿勢がとれなくなります。そうすると攻撃的だと誤解され、吠えられたり嫌われたりするばかりか、挨拶をしようと力ずくになってしまいます。人間が犬のやり方を阻害することで、犬の行動と心に影を落とさないよう、正しい知識や方法を学ぶことも犬への愛情なのではないかと思います。

おわりに

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パートナーの気持ちを感じ取ってみましょう


私たちは自分のやりやすい方法や、やりたい方法で犬に接し、予想に反した反応があると「どうして?」「ダメな子」と、結論付けてしまうことが多いように思います。以前「足を拭こうとすると暴れて危険」という相談がありました。洗面所でタオルを使っていると聞いたので「玄関で、ウエットティッシュで、拭いてみて」と提案したところ、「静かに拭かせてくれました」と連絡がありました。

愛犬の困った行動に思い悩んだときは「その行動を正す」から「他の方法を見つける」にシフトチェンジしてみることも大切だと思います。ゴールは同じ「穏やかな日常」なのです。私たちは一つの考えや方法に縛られてしまうことがあります。私もそれで多くの失敗を経験してきました。

犬にばかり我慢や協調を求めるのではなく、ときには私たち人間が犬の世界に飛び込み、リズムに合わせ、視点を変えることができれば、人と犬はより高め合える最高のパートナーとなるのではないでしょうか。

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【犬との暮らし】犬の心を育む12~言葉より伝わる!犬のシグナル活用術

白田 祐子(しらた ゆうこ)心理士/ホリスティックケア・カウンセラー

公益社団法人日本心理学会認定心理士。トレーニングスクール、ル・ブラン湘南代表。25年前から犬の気持ちを理解するため犬の行動や心理を独学し、保護施設でしつけなどのボランティア活動を開始。現在のパートナーは、3頭目の雑種の保護犬11歳の女の子。大学で教育学、認知心理学、社会心理学などを専門的に学び、人と犬の関係性や犬の心の成長の研究を行う。2013年にスクールを立ち上げ、飼い主と犬のパーソナリティを重視。思考に訴えかける行動矯正が多くの女性に支持されている。翌年ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。食事の重要性を再認識しフード選びのアドバイスも積極的に行う。里親制度の啓蒙や地域行政と連携した動物相談など、教育、行政、法律と多方面で犬と人の問題に向き合っている。ヒトと犬の関係学会員、愛玩動物飼養管理士、神奈川県動物愛護推進員。
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