ブラッシングのメリット
- 抜け毛の飲み込みを減らす
- 汚れを落とす
- 血行維持に役立つ
- コミュニケーションの時間
- 健康状態を確認する機会
スタッフコラム77話目
猫が舌を使って「毛づくろい」する姿をよく見かけます。私たちはグルーミングともいいます。起きている時間のうち1~2割、個体によっては3割以上もの時間をこの毛づくろいに費やしているそうです。
それだけ猫にとっては毛づくろいは大切なことなんですね。
今回はアドバンス・ホリスティックケア・カウンセラーの山本が猫の毛づくろいをする理由とそれをサポートするブラッシングについて説明します。
猫は本来、獲物を獲って食べる捕食動物であり、猫よりも大きな捕食動物のエサになる動物です。そのため、自分の存在をエサからも捕食動物からも隠すためには体についた匂いを消しておく必要があります。
それ以外にも舌で舐めることは心をやすらかにする効果などもあるんです。
狩りや食事中についた匂いや汚れを取っておかないとその臭いで獲物や猫の敵に居場所を気づかれてしまいます。そのため食後には前肢や口周りだけでなく体中の毛づくろいをする習慣が残っています。
緊張したとき、不安を感じたとき、何かしようとして失敗したときにも毛づくろいをします。代償行動といって緊張や不安感、目的が達成できなかった欲求不満などの感情を毛づくろいをすることで軽減する行動が見られます。
母猫は子猫の身体を清潔にするために毛づくろいをしますが、子猫同士でもお互いに舐めあうようになります。成猫でも仲の良い関係であればよく見られる光景(アログルーミング)です。愛猫によっては飼い主を舐めて、毛づくろいのようなことをする場合がありますね。いずれもリラックスしたときに親愛の情を示している様子であり、安心している状態でもあります。
日頃から丁寧に被毛を整えておくことで身体に溜まった熱を発散しやすくします。また暑いときには、わずかな量ではあるものの、舐めるときに被毛や皮膚についた唾液が蒸発することで体温を冷やす働きがあります。私たちとは違って汗を出して体温調節することはできません。犬と同じように汗は主に肉球からしか出ないためです。
※犬は通常ハァハァと荒い息(パンティング)することで唾液を蒸発させますが、猫が口で息をしている状態はかなりのストレス時や病気の時です。
舐めるというより、被毛をカチカチと細かく噛むような毛づくろいをすることがあります。これはその周辺にかゆみがある場合や、毛についた汚れを取りたい時です。続く場合は、皮膚に異変がないか、何かしつこい汚れがついてしまってないか、見てあげましょう。
猫はノミがつきやすいです。家の中が飼っている猫でも、何らかの事情で外に出てしまったり、外猫との接触などで、ついてしまうこともあります。
皮膚の傷、体の中に痛みがある、なども考えられます。いつもと違う様子が続く場合には獣医師に診てもらってください。
体を舐めることでリラックスの効果が得られますが、大きなストレス(不安、怒り、悲しみ)を抱えている場合、脱毛してしまうほど激しく舐め続ける代償行動の場合もあります。
猫にとって毎日行う毛づくろいをしない場合、体調不良など健康上の異変が考えられます。健康であっても、太り過ぎで体が曲げられないことも。また高齢になると毛づくろいをする頻度が減ってくるものです。
猫特有のザラザラした棘げ状の舌は、毛をくっつけて飲み込むのに適しています。毛づくろいの際に抜け毛の多くを飲み込んでいることになります。飲み込んだ毛は少量ずつ便の中に混じって出ていく場合もあれば、毛玉になり胃の粘膜を刺激すると吐き出されます。
毛球症(毛球がお腹の中でとどまることで不調を招くこと)が起きる場合もあるので、いつもよりも頻繁に毛づくろいをしている、抜け毛が多い場合には気をつけてあげましょう。
ブラッシングは飲み込む毛量を減らすためだけではなく、多くのメリットがあります。長毛種はもちろんですが、短毛種もブラッシングをすることは健康維持に役立ちます。特に高齢になってきたシニア猫の場合は意識してあげてください。
猫にブラッシングをする場合、不快な思いをさせてブラッシングが嫌いになってしまわないよう用心深く慣らしていきましょう。
猫には年に2回、春(3月ごろ)と秋(11月ごろ)に換毛期が訪れます。私たちが衣替えをするように猫の被毛も気候に合った入れ替えが行われるのです。そのためいつもより抜け毛の量が増えます。
そのため毛球を吐き出す行為も増えてきます。毛球症の危険も増える時期といえます。いつもよりもブラッシングのサポートもいつもよりも意識してあげましょう。
※毛球症について、猫の毛量によっては吐き出さずに便として出す場合もあります。元気がないなど様子がおかしい場合は早めに獣医師に診てもらってください。
猫のブラッシングに適しているのはブラシだけでなくコーム(櫛)やラバーブラシなどもあります。毛の長さ別のおすすめを参考に愛猫に合ったタイプのものを選んでください。
・ピンブラシ
ヒト用のブラシに似ています。主に長毛種の毛を整えるのに適しています。
・ラバーブラシ(シリコン製)
シリコン製の突起が櫛の代わりになり、抜け毛を取り除くことにも役立ちます。突起の形や大きさにより短毛用、長毛用と種類がわかれます。皮膚を傷つけず、マッサージのような効果も。仲間や飼い主とのアログルーミングのような感じで使えます。
・獣毛ブラシ
獣毛製のブラシです。毛の硬さ別に種類があります。ピンブラシやコーム(櫛)に比べて皮膚にやさしいブラッシングできます。
毛並みに沿って、ゆっくりとなでるようにブラッシングします。
・コーム(櫛)
金属製の櫛です。毛波を整えたり、絡まっている毛や毛玉をほぐすのにも便利です。根元から毛先に向かってゆっくりと、ときます。
目の粗いものから細いものまで種類があり、細目、粗目の両方を備えたコームもあります。目の細かいもので毛の中に隠れたノミをとることもできます。
・スリッカーブラシ
金属製の細かい針状のついたブラシです。主に長毛種に使うもので、抜け毛をたくさん取り除くのに適していますが、皮膚を傷つけないように気をつける必要があります。
皮膚を傷めないようラバーブラシや柔らかいブラシ、毛並みを整えるコームがおすすめです。
しっかりブラッシングできる中程度の硬さのブラシ、仕上げに毛並みを整えたり毛玉をほぐしやすいピンブラシ、コームがおすすめです。抜け毛の量が多い場合にはスリッカーブラシが必要な場合もあります。
愛猫の状態にもよりますが、ブラッシングの頻度は短毛種の場合、週に2~3回、長毛種は毎日1回が理想です。1回5分程度を目安とします。
特に愛猫が健康で自らきちんと毛づくろいができる状態であれば、頻繁なブラッシングは不要です。いくらでも毛がとれるとつい長い時間やってあげたくなりますが、ブラッシングを過剰に行うと、必要な毛まで余分に取り除いてしまいがち。猫にとってもストレスとなりますので注意してください。
猫の毛づくろいでは筆者には忘れられない思い出があります。阪神大震災発生当時にいっしょに暮らしていた愛猫は、地震後の半年くらい過剰な毛づくろいが続いたのです。それは上半身の毛がほとんどなくなってしまい、体液がにじみ出るほどでした。
大きな地震とその後に繰り返す余震で大きなストレスを感じたのですね。その後は余震が減ってくるのと比例して異常に舐める行為は減り、翌年にはすっかり元通りに生え揃いました。
毛づくろいは猫にとって大切なことですが、過剰だったり、しなくなった場合も何か体調に異常は無いか気をつけてあげてくださいね。
喉をゴロゴロ鳴らしながらブラッシングされる様子や、代わりに私たちを舐めてくれることもお互いの癒しになりますね。
愛猫との毛づくろいでよりコミュニケーションが深まりますように。
【参考資料】
・ホリスティックケア・カウンセラー養成講座TEXTBOOK 株式会社カラーズ・エデュケーション
・ナチュラルキャットケア猫のための「癒し」の医学:ブルース・フォーグル著 ペットライフ社
ご相談は無料
ごはんの窓口はこちらから筆者
ペットフーディスト、 アドバンス・ホリスティックケア・カウンセラー、 ペット栄養管理士、 犬の食事療法インストラクター上級師範
GREEN DOG & CAT ライフナビ編集部
犬と猫の基礎栄養学を学んだペットフーディスト等の資格を持つメンバーで構成されています。
パートナー(愛犬・愛猫)との暮らしを通して学んだことや感じたことを大切に、オーナー(飼い主)の目線に立ったコンテンツ制作を心がけています。
<編集部メンバーの取得資格> 編集部メンバーは、それぞれ得意分野に合わせて以下の資格を取得しています。
・ペットフーディスト
・ホリスティックケア・カウンセラー・ペット栄養管理士
・犬の食事療法インストラクター上級師範
・愛玩動物飼養管理士 など