もっとノーズ、プリーズ!~日本で最初のノーズワーククラブ設立とそのルール~ノーズワークシリーズその17~
北欧のスウェーデンから日本にスポーツ競技としてのノーズワークを紹介したのは、今から3年前の2018年。ノーズワークをぜひ学んでみたいという熱心なドッグスポーツファンの方から招待を受け、日本で何度かセミナーを開催しました。そうこうしているうちに少しずつ愛好家が増え、いつしか「北欧のように一つのスポーツとして日本でも確立したい」という気持ちがノーズワークをする飼い主の間で昂りました。
「それならノーズワークのクラブをつくろうではないか!」
どうせやるのなら、競技会など何かゴールに向かってトレーニングをする方が楽しい。それには競技会ルールや結果の管理、さらにはスポーツを促進するクラブの存在が必要です。クラブ設立に向けて、何人かの有志が動き出しました。
ルールはスウェーデンのケネルクラブの傘下にあるスウェーデン・ノーズワーク・クラブから出ているノーズワークルールをベースにして作成することに。私もその翻訳やルールの解釈について少しお手伝いをしました。クラブを作ろうと決めてから一年と半年の月日を経ていよいよルールが完成!ノーズ、つまり「ハナ」にかけて2021年8月7日にジャパン・ノーズワークスポーツ・クラブが発足しました。このような立派なロゴもできあがりました。
https://noseworksportsclub.jp/
さて今回と次回の2回に亘り、ジャパン・ノーズワークスポーツ・クラブクラブから出ているルールの中で「こんな決まりもあるんですよ〜」というルール・トリビアを紹介します。ノーズワークをスポーツとしてやってみたいという方にとって参考になれば幸いです。
全科目競技と単科目競技
ノーズワークにはシリーズ14回目でもお話したように4つの科目で成り立っています。
- コンテナーサーチ
- インテリアサーチ
- エクステリアサーチ
- ヴィークル(車両)サーチ
競技会は、この4つの科目で成り立つ全科目競技会と、ひとつの科目だけにフォーカスをした単科目競技会があります。単科目とはいえ、サーチは4つのエリア(サーチを行う区域)で成り立っています。たとえばコンテナーサーチを単科目競技会でやるのであれば、4つのエリアで行われるサーチはどれもコンテナーサーチという具合です。ただしほとんどの競技会は、全科目で開催されるものです。
スコアの仕組み
ジャパン・ノーズワークスポーツ・クラブには難易度によって3つのクラスがあります。クラス1からクラス3の順に難しくなります。最初はクラス1から始めます。さて、クラス1から次のクラスに昇格するにはディプロマを3つ取ることが求められています。ディプロマというのは、競技会において満点を獲得し、かつ失格点(フォルト)が3点以内の人に渡される認定証のことです。
私もこれまでの愛犬のラッコやアシカと共にクラス昇格を目指してディプロマを集めるためにたくさんの競技会に参加しました。このディプロマ狩が面白くて競技会に出続けていたのだと思います。さて、ディプロマを集めるにあたって、どのようなスコア制度がクラブで適用されているのか以下に説明しましょう。
ハイド(におい)を見つけたらポイントになる
クラス1の場合、1サーチにつき1つのにおいが隠されています。隠されているにおいのことをハイドと表現するのですが、ハイドを制限時間内に見つけたらポイントを稼ぐことができます。どのクラスにおいても、1サーチにつき最高点は25点。競技会では全部で4サーチ行うので、4サーチともハイドを全て見つけたら100点が貰えます。前述した通りクラス1には1つしかハイドがないので、ハイドひとつにつき25点。クラス2になるとハイドが2つになります。25点を2等分して1つを12.5点にするという配分もありますが、簡単なハイドと難しいものとに区別して配点に違いをもたせることもあります。簡単な方は10点、もう片方は難しいので15点という風です。
フォルト
フォルトというのは、やってはいけない行為を犬あるいはハンドラーがやってしまった場合与えられてしまう失点です。行為によってフォルトは1〜3点が与えられます。ジャパン・ノーズワークスポーツクラブのルールによるフォルトの種類のいくつかを以下に示します。
1点フォルト(以下の行為をすると1点のフォルト点が与えられてしまいます)
- ハンドラーが犬をひっぱる、ダメ!などと叱責するなど、犬にネガティブな行為を見せる
- サーチエリアにご褒美のトリーツを落とす
- ヴィークルサーチにて乗用車の車体に脚をかける
2点フォルト
- ハンドラーのアラートが間違っているとき(ハイドをみつけと思いジャッジに告げたが、場所が間違っていた)
3点フォルト(以下の行為をすると3点のフォルト点が与えられてしまいます)
ある行動をしてしまうと一気に3点もフォルトがつけられてしまう… さてその行為は?そう、競技中におしっこなど排泄をサーチエリアでやってしまった場合!
制限時間
ノーズワークのサーチには制限時間があります。ルールでは1分から5分。サーチによって制限時間はさまざま。1分というサーチもあれば、5分間目一杯探せるというサーチも。サーチ時間を越したら、ゲームは終わり。その間に何もみつけられなければ0点です。ただし、時間がない!と焦って適当にアラートを出しても(アラート=みつかりました!と告げること)、間違っていれば当然前述したフォルトのルールによって2点が与えられてしまいます。ならば、時間に任せて精一杯探し続けてフォルトを0点にしておく方が、順位を落とすことはありません。
順位の付け方
100点満点をとって、全サーチ(4つのサーチ)にかかった時間が合計で7分、フォルトが4点、というスコアを取った人は、100点満点でサーチ時間が8分、かつフォルトが2点の人より、ランクは落ちます。フォルトの数はかかった時間より優先されるからです。
まずは点数で順位が決まります。点数が同じであれば、その次に比較するのがフォルトの数。それも同じであれば、サーチにかかった時間の「短さ」でランクが決定されます。
前述したように、たとえなかなかみつからないサーチとなっても、そのまま制限時間いっぱいまで探して0点を獲得する方が、下手にアラートを出して間違え、フォルトをもらうよりランクが高くなるのです。
犬の装備について
日本ではスウェーデンに比べお洋服を着た犬が断然多いのですが、服をきたまま競うのは日本でも多くのドッグスポーツにおいて許可していません。犬本来の動きを妨げる可能性があるからです。ノーズワークスポーツについても同様です。ただしハーネスはOK。さらにマナーガードも許可されています。
リードの長さについても要チェック。サーチの際は少なくとも1.8mのリードを使うことが求められています。またチョークチェーンを使うことはご法度!
ご褒美について
たいていのドッグスポーツでは競技中にご褒美を与えるのは禁止されています。しかし嬉しいことにノーズワークは唯一例外のドッグスポーツともいえるでしょう。犬がハイドを見つけ、ハンドラーが「見つけました」とジャッジ(審判)にアラートを出します。そしてもしジャッジが「正解です」と答えたときに限って、犬にご褒美としてトリーツを与える、あるいはおもちゃで遊ばせることが可能です。しかし、サーチエリア内にご褒美やおもちゃを落としてしまうとフォルトが1点ついてしまうので気をつけましょう!私は、犬が見つけて正解であれば、すぐにサーチエリアの外に出てご褒美を与えています。なぜ落とすとフォルトがついてしまうのか?それはトリーツやおもちゃが床ににおいをつけてしまい、他の犬がサーチする際のディストラクション(気を散らせるもの)になってしまうからです。
あてずっぽうに「アラート」と言っても点数はもらえない!
犬がなかなか見つけてくれない。でも制限時間が迫っている。こんなとき、一か八かで「ここかな!?」とジャッジにアラートを出してしまいたくなります。まぐれの当たりを望みたいところですが!
いえいえ、そうは問屋がおろさず!たとえその場所が正解だとしても、犬がそこを嗅いであきらかに見つけたという行動を見せていなければ、ジャッジは点数をくれません。というわけであてずっぽうはやめましょう!おまけに間違いであればフォルトを2点追加されてしまいます。
セカンドチャンスがない
アラートを宣言したところ、ジャッジに「間違い」と言われたら?ノーズワークのルールではここでゲームオーバーになります。そう、たとえまだ制限時間内であってもセカンドチャンスはありません。これはハイドが2つ以上あるクラス2や3についても同様。最初に見つけたハイドについては点数がもらえますが、次にエラーを出してしまうとそこでサーチは中止になります。
いかがでしたでしょうか?なかなか厳しいルールが続きますが、だからこそスポーツとしてワクワク・ドキドキがあって楽しいのですね。この続きは次回まで!
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もっとノーズ、プリーズ!
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