2023.12.26一緒に。もっと、

北欧スウェーデンの子犬育て⑥~おトイレトレーニング~

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北欧スウェーデンの子犬育て⑥~おトイレトレーニング~

Photo by Hodor et al

文:藤田りか子

本シリーズでは、スウェーデンにおける子犬育て事情について紹介します。全てが日本の状況にマッチするわけではありませんが、子犬をめぐる環境が少しでもよくなるよう、本シリーズがその参考になれば幸いです。

前回はこちら

スウェーデンのおトイレトレーニングとは、お家の中で粗相をしないことを意味します。ここはちょいと日本とは異なる部分ですね。日本では「犬がトイレシーツのところに自発的に行って用を足す」を意味するのだと思います。とはいえ、私が日本にいた頃(昭和の頃、1980年代です)は、だれもが外で犬の排泄をさせていたものです。もっとも当時は外で飼うというのが普通でした。よって、トイレシーツなるものも、少なくとも私は昭和の時代に見たことがありませんでした。しかし90年代の終わりぐらいから小型犬ブームが訪れ、家の中で犬を飼うのが当たり前になってきました。そのときにおトイレもお家の中で、の風潮が広まったのでしょう。日本にセミナーの講演で訪れ、そのときにトイレシーツで排泄をする犬を初めてみたのですが、びっくりしたのを覚えています。

あらゆるところで排泄が禁止されている日本ならではの「特別の事情」は理解しますが、トイレシーツだけにしか排泄ができない、というのであれば、それは犬にとって不憫なことだな、と正直思っています。人にとって都合がいいかもしれませんが、やはり犬の自然に反することです。においの世界に生きる動物、犬にとって、排泄はコミュニケーションの役割を果たすものだし、自分から外に向けて発信したい、という欲求はあると思うのです…。

北欧スウェーデンの子犬育て⑥~おトイレトレーニング~

Photo by Simon Kadula

ま、何はともあれ、犬は「トイレシーツだけの排泄」を強いられても、私たちを慕って人の都合を許してくれます。犬のそんな寛容さに感謝をしなければ、です。なかなかそういう動物って他にいないんですよ(猫はただし猫砂にきちんと排泄をしてくれますね!)。

スウェーデンに移住して初めて迎えた犬、レオンベルガーのクマは私にとってほぼ初めての犬でもありました。子供の頃、実家で両親が犬を飼っていましたが、それこそ外飼いであり、私の犬経験はほぼなかったのに等しいものでした。当然、トイレトレーニングなるものもやったことはありません。スウェーデンでは犬は皆、外で排泄をします。そしてほぼ全ての犬が屋内で家族と一緒に住んでいます。そういう状況を見て、トイレトレーニングというのは誰もができるものなんだなと思い、初心者でしたがそれほど心配はしていませんでした。

そして実際クマと試したのですが、4ヶ月齢になる頃には「おしっこは外でするもの」を彼女が学習したと記憶します。そう、やはり犬初心者の私でもできたとても簡単な訓練だったのですね。もちろん6ヶ月齢ぐらいまでは、たま〜に粗相をしてしまうこともありましたが。

コツはおしっこ、うんちをしそうだな〜というときに(食べた後、寝て起きた後、遊んだ後など)、さっさと外に連れていけばいいだけの話。そのうち外で用を足すことが習慣となる…。それだけのことでした。最初の頃、外に連れ出さねば!と目を光らせるのが、唯一「めんどうくさいなー」と思った部分ですが、それも2ヶ月の辛抱!

こうして「外でしか排泄をしない!」を徹底する、で、自分の住まいの中は絶対に汚したくない、という「清潔好き」な犬に育っていきます。というか、犬を含め多くの動物は自分の巣と排泄する場所を分けようとするものです。これはほぼ本能といってもいいでしょう。清潔に保っている方が、病気にかかりにくく健全でいられます。そして強いにおいが広まることもなく、敵から見つけられにくくなります。犬に一旦清潔意識を持ってもらうと、途端に私たちと一緒に行動できる範囲が広がっていきます。つまり自由度が増すということですね。どんな屋内の施設にも出入りすることができます。友人のところにいっても、何かのイベントにいっても、おしっこしたらどうしようという不安はほぼなくなります。

日本でノーズワーク競技会を行うために施設探しで苦労をしたことがあります。多くの施設は犬を受け入れてくれません。スウェーデンとは全く異なる事情なんだ、と思い知らされました。日本で多くの人が懸念するのは、屋内を犬が粗相で汚したら、なのですね。ただし今の日本だと悪循環だと思います。ほとんどの犬はトイレシーツで屋内排泄をすることに慣れているので、「屋内でも用を足してもいいんだ!」と思い込んでいるわけです。だから屋内での粗相が多くなる…。これではいつまでたっても犬立ち入り禁止の施設が減らず、犬と人との共存が憚れているなぁと感じているところです。

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藤田 りか子(ふじた りかこ)

ドッグ・ジャーナリスト。レトリーバー二匹と自然豊かなスウェーデン・ヴェルムランド県の小さな村に在住。スウェーデン農業大学野生動物管理学科にて修士号を得る。犬の繁殖管理や福祉の先進国スウェーデンはじめ北欧の犬情報はもとより、ヨーロッパ各地の純血種の知識に詳しい。著者に『最新世界の犬種図鑑』。 現在ノーズ・ワーク(嗅覚を使うドッグスポーツ)に夢中、コンペティターでもある。