2018.05.22一緒に。もっと、

【犬との暮らし】都会の犬たち16~犬の吠えを考える

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【犬との暮らし】都会の犬たち16~犬の吠えを考える

都会で犬と暮らすとき一番気を遣うのは愛犬の吠える声ではないでしょうか。近所で犬がいつも吠えているとあまり気持ちのいいものではありませんよね。
今日は飼い主さんのドッグライフを危うくしかねない愛犬の「吠え」について少し考えてみたいと思います。

トレーナー三井さんのこれまでの記事はコチラ →三井さんの記事一覧

犬は吠えるのがあたりまえとは言っても

人間と違って言葉を話せない犬たちにとっての意思表示と言えば当然「吠える」「鳴く」「唸る」「噛む」といった口を使った表現方法が多くなります。中には、飼い主の膝にそっと顎や前足を乗せるといったひかえめな行動をとる犬もいますが、基本は口を使います。

鳴いていれば、辛いのだろう。
唸っていれば、嫌がっているのだろう。

など、ある程度推測が出来ますが、「吠え」に関してはいろいろな意味があってすぐにはわからないことがあります。そこで、人間としては「吠え」の意味を理解しようと、吠えているときの周りの状況に加え、吠えている声のトーン、犬の顔の表情や体の姿勢、尻尾の状態など、様々なボディランゲージを観察するわけです。

「犬は吠えるもの」という大前提で考えた場合、外部からの侵入者があれば「警戒吠え」があるのは当然のことです。しかし、犬の視界に入る見知らぬ人すべてに吠えているとなると、それは問題行動となります。隣の家との間隔が近い都会などでは近所にも大きなストレスを与えてしまいます。

犬が吠え始めるようになった当初は、「なんとかしなくては。」と感じていた飼い主も、日常的に続くと本格的に対処しようと行動する方と、その状況に慣れてしまう方とに分かれてきます。ご近所さんであれば、前者であって欲しいですよね。後者であれば、飼い主は慣れてしまっても、近所の方は状況がつかめていないので、突然吠える犬の声にいつもびっくりさせられたり、日常生活を邪魔されたりしてとても慣れるどころの話ではないでしょう。

「警戒吠え」のような場合は、時間がかかってもトレーニングすることで、1回吠えたらあとは止むようにするということも可能です。また、インターフォンに反応しないように教えていくことも可能です。しかし、1回で治るものではありませんので、根気や忍耐が必要になります。

また飼い主の留守中吠え続ける犬もいます。この場合は「分離不安」の可能性もあるので、獣医学的処置が必要だったり、トレーニングよりもリハビリテーションが必要だったりと、対処方法は様々です。

犬が吠える状況を飼い主が作っていませんか

警戒吠えと異なり、吠えなくてもいい場面を敢えて人間側のミスで吠える行動を強化してしまっていることがいくつかあります。

例えば先の「警戒吠え」でお話した外部からの侵入者に対しての吠えは、外から人が来ない状況を作ることは出来ませんが、窓から外が見えていて吠えているのであれば、愛犬のスペースを窓から遠ざけたり、窓にシートを貼るなどして、外の様子を確認出来ないようにするなどの対処方法があります。これは飼い主さん次第でなんとでも出来ることです。

日々ガード犬として、家を守らなくてはいけないストレスをかけるよりは、愛犬の守るべき場所を狭めることでストレスが軽減される場合もあります。

そして一番の飼い主側のミスと言えるのがが「要求吠え」の原因ではないでしょうか。「犬には一貫性を持って接する」というのがトレーニングの基本です。つまり、「今日はいいけど、明日はダメよ。」とか、「ここではいいけど、あそこではダメよ」というケースバイケースは犬には通用しないからです。

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気づかないうちに犬の要求に応えていませんか?

長年共に暮らして阿吽の呼吸がわかる犬であればある程度経験値の中での判断をしてくれますが、子犬や若い犬はダメもとでトライしてきます。そんな要求に応じてしまうと、次回も同じようにトライしてくるようになります。中にはトライしてもダメだとわかってあきらめるタイプの犬もいますが、そうでない犬は『自分の要求がちゃんと飼い主に伝わっていないからだ』と考え、吠えるようになります。吠える声をやめさせようと飼い主が犬の要求に応えると更に負のループは続き、犬は要求が通るまで吠え止まないという行動を身に付けて行くことになります。この時点で犬は全く悪くなく、問題は人間の側にあることがお分かり頂けるでしょう。

人間の子供がおもちゃ売り場で寝っころがって「買ってくれなきゃやだ~!」と駄々をこねているのに似ていますが、犬は言葉で話し合いをすることができないため、目の前に要求の物が出て来なければずっと吠えることになります。そこで「イケナイ!」と罰したとしたら、犬は飼い主をアンフェアなやつと思い、信頼関係は簡単に崩れていくでしょう。

要求吠えの対処法、あっていますか?

犬の要求吠えに応えてはいけない。と一般的なドッグトレーニングでは教えています。応えてしまうと、犬は要求が通るまで吠え続けるからという先ほどの理論通りのことになってしまうからです。

では、要求吠えに対する対処法はどうすればいいのか?

ここが一番気になるところですよね。無視するということはよく聞きます。確かに、要求に応えない=無視 となるわけですが、無視されたことで犬は飼い主との接触を遮断されて楽しくない状況に置かれた だから 吠えるのを止めようと学習してくれればこんなに楽なことはありません。ところが犬の性格や気質も様々で、あきらめが早いタイプもいれば、全く動じないタイプもいるわけです。

前者はこの方法(*1)で修正できたとして、後者の場合はどうしたらいいのでしょうか。

先日とある犬連れホテルに宿泊したときのことです。朝食時に犬たちとレストランに行くと、すでに吠えている犬がいました。いつ吠え止むのかと思って見ていたのですが、私の朝食が終わるまでの30分間ずっと吠えていました。そして飼い主さんはと言えば吠えている愛犬には全く関心をしめさず、ひたすら人間の子供の世話をやいていました。犬は完全に無視されていましたが、犬があきらめて吠え止むことはありませんでした。
(*1 吠えている犬を無視するだけでは治りません。何をして欲しいのかまできちんと教えることが陽性強化のトレーニングです。)

大事なのは環境設定です。つまり吠える状況を作らない。例えばダイニングテーブルで飼い主が気が向いた時に人間の食べ物を愛犬にやっている場合、犬が食べられない物を食べているときは当然犬はおこぼれに預かれません。そこで犬は飼い主が食べ物をくれるまでずっと吠え続けています。すでにダイニングテーブルから物がもらえると学習しているので要求しているわけです。

自宅の中なので、これからは吠えてもやらないことにしよう、と飼い主が決めたのであれば、そこから先は犬との根競べです。犬があきらめるまで待つしかありません。しかしそれが待てない場合、あるいはあきらめの悪いタイプの犬の場合は、そもそもダイニングテーブルにアクセスできない環境設定をするしかありません。別の部屋でクレートに入れて待機させたり、同じ部屋でもマットトレーニング等で、ダイニングテーブルのそばに来られないようにします。つまりダイニングテーブルに行くよりクレートやマットにいた方が犬にとってメリットがあることを教えていくわけです。

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飲食店でも足元で伏せていることができれば、人も犬もストレスはかかりません。

おわりに

吠えることで要求が満たされることを学習してしまった犬は吠える頻度が高くなってしまいます。都会暮らしではなるべく避けたい状況ですので、子犬のころから一貫性を持った態度で接し、トレーニングで回避できることに関しては、犬にストレスを与えないような方法でよい習慣を身につけられるようサポートしてあげたいですね。

【次の記事はこちら】【犬との暮らし】都会の犬たち17~子犬を迎えたら必ず行いたい「社会化」について

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【犬との暮らし】都会の犬たち16~犬の吠えを考える

三井 惇(みつい じゅん) CPDT-KA、ドッグトレーナー/ドッグダンスインストラクター、ホリスティックケア・カウンセラー

1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけ に、犬の行動学や学習理論を学び、2006年WanByWanを立ち上げる。愛犬の出産、子育て、介護と様々な場面でも多くを学び、愛犬のQOLの向上を目指して2008年にホリスティックカウンセラーの資格を取得。2016年自身のトレーニング方法を再確認するために世界基準のドッグトレーナー資格CPDT-KAを取得。現在、4頭目と5頭目のボーダーコリーとドッグダンスの楽しさを広めながら、東京近県で出張レッスンを行っている。
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