2017.05.18心のケア

【犬との暮らし】犬の心を育む2~ニーズとセルフコントロール

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【犬との暮らし】犬の心を育む2~ニーズとセルフコントロール

こんにちは。ドッグメンタルトレーナーの白田祐子です。

今回は、犬のニーズ(欲求や目標)を満たすために必要な心の成長についてお伝えします。あなたの心を曇らせる愛犬の悩みを知るヒントになれば幸いです。

ドッグメンタルトレーナー白田さんのこれまでの記事はコチラ→白田さん記事一覧

犬のニーズを知る

愛情だけでは満ち足りない

幸せとは、心が満ち足りた状態ともいえます。それは犬も同じです。愛犬の幸せを願い、日々の食事や健康管理に注意しながら、できる限りの愛情を注いでいる飼い主さんは多いと思います。愛犬にとっても、身近な人からの愛情は温かく、健やかに生きるための重要な感情です。でも、愛情をいっぱい注がれて育てられている犬が、必ずしも心が満ち足りているとは限りません。

犬の持つ感情は私たちが想像する以上に複雑で多様性に富んでいます。たとえば、好奇心。自由に行動しながら新たな経験をしたいという学習意欲は、特に成長期における犬の自然な欲求です。このような欲求が満たされない場合は、過剰に吠えたり、過度ないたずらや無闇に走り回るなど、人から見ると問題と思われる行動として現れる場合もあります。また、犬は犬同士、同属種に近づき匂いを嗅いだり、「仲間に認められたい」というような、犬自身の行動の結果からしか得られない欲求など、人の愛情では埋めることのできないケースもあります。

犬の複雑な感情についてはコチラ→【犬との暮らし】犬の心を育む1~心と行動の関係

自ら考えて行動する

もちろん、愛犬の豊かな感情を引き出してあげようと、 運動や遊び、その他の活動を通じて犬との心の交流に努めている飼い主さんも多いと思います。

でも、犬が本能や能力に応じたさまざまな欲求を満たしたいと感じたとき、不安や恐怖で思い通りの行動をすることができなかったり、状況に合わない不適切な行動をとってしまうと、欲求や目的を達成する(そのニーズを満たす)ことは困難となってしまいます。もし、犬が自らの適切な行動で、欲求を満たすことができたなら、私たちが満たしてあげることのできない感情の隙間が埋まり、より豊かな心の成長が期待できるのではないでしょうか。

心の成長の目指すところ

 

【犬との暮らし】犬の心を育む2~ニーズとセルフコントロール

「ここまでは大丈夫」「これ以上はダメ」

 

自律とは

欲求を満たすために適切な行動をとるには、心と行動をうまくコントロールして安定させることが必要で、それを自律(セルフコントロール)と呼びます。

犬が多様な感情を満たすためには、自律しながら状況に応じた行動が取れるようになることが大切です。それが、心の成長の目指すところ、だと私は考えています。

自律のために特に必要な要素3つ

 我慢(諦め)

  • はっきりと拒否されたことで、自分の思い通りにはいかないこともあることを学ぶ

 限度

  • ある一線を越えたときに注意されたことで、「ここまでは大丈夫」「これ以上はダメ」と、行動の境界や限度を学ぶ

 正しい価値観(判断能力)

  • 家族は遊びや甘えの対象で「いつでも許される」という価値基準から、自分の行動に問
    題がある場合は「遊んでもらうことはできない」という新たな価値基準を設ける

たとえば、子犬は母犬や兄弟犬など、家族や群れとの交流を通じて自律を学んでいきます。子犬が母犬や兄弟犬など遊び相手の体をうっかり強く噛んでしまったり、相手の気分や状況に構わずじゃれようとしたとき、母犬や兄弟犬は遊びを中断したり、マズルを子犬の首に当てるなどして注意をする様子を見ることがあります。一方で、子犬は希望通りにいかない(欲求が叶わない)ことで、「どうして?」「もっと遊びたい!」など、不安や欲求不満などの心の揺れ(葛藤)を抱え、時には同じ行動を繰り返しながら結果を確認します。その経験結果葛藤自律の萌芽(ほうが)となります。

自律は心を開放するカギ

子犬(犬)は、自分の欲求を満たすためには、その場や相手の状況に適した行動を選ばなくてはならないことを、行動の結果から学んでいきます。特に、現実をどのように解釈するかの正しい価値基準を増やすことは、状況の変化に対する行動のバリエーション(選択肢)を増やすことに繋がります。

自律の能力が高いほど、目的や欲求を満たす成功率が高まってストレスや不安が低くなるため、豊富な行動パターンを身に付けながら、心も行動も自由に成長していくことができます。

 

【犬との暮らし】犬の心を育む2~ニーズとセルフコントロール

共通言語で会話中

 

自律した犬の行動とは

散歩の途中で他の犬とすれ違うとき、あなたの愛犬はどのような行動を取ることが多いでしょうか。激しく吠えたり(攻撃)、必要以上に逃げ回る(逃走)など、状況には適さない行動を取る場合は、愛犬がうまく自律ができているかよく見極める必要があるかもしれません。

一方で、自律した犬はその時々で適切な行動を選択することができます。たとえば、他の犬に近づきたいという欲求がある場合は、犬の共通言語であるカーミングシグナルや、前足(肢)を伸ばし頭は下げた前傾姿勢で「遊ぼう!」と誘う、プレイバウと呼ばれるコミュニケーションシグナルを使って、友好的にニーズを満たします。また、あまり関わりたくない場面や相手、気分のときには、相手や状況を無視(回避)することで、自分自身を守りながら、落ち着いて対処をします。

カーミングシグナルとは→そのしぐさ、ストレスのサインかも。ストレスを感じている犬の行動とは

おわりに

 

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犬にとって幸せな生活とは何でしょう

犬の幸せは、心が満たされている状態であるという原点を忘れてはいけません。心が満たされてないことを伝えるバロメーターサインが、犬の困った行動としてしばしば現れていることに、気付いてあげることは大切なことです。

人と犬の良好な関係とは、お互いが幸せに生きていけるようサポートしあうこと。愛犬への無条件の愛は尊いものですが、愛情を通じて、愛犬が自律できるよう導いてあげることは、人と犬が共に生きていくために必要な義務ではないかと私は考えます。

自律は成犬になってからでも学ぶことはできます(激しい攻撃性や怯えがある場合は専門家に相談しましょう)。自律を学ぶための一つの方法として犬同士の交流があります。次回は、犬同士の交流を正しく行うための心がけや注意点についてお伝えします。

【関連記事】【犬との暮らし】犬の心を育む3~毎日の散歩がもっと楽しくなるポイント4つ

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白田 祐子(しらた ゆうこ)心理士/ホリスティックケア・カウンセラー

公益社団法人日本心理学会認定心理士。トレーニングスクール、ル・ブラン湘南代表。25年前から犬の気持ちを理解するため犬の行動や心理を独学し、保護施設でしつけなどのボランティア活動を開始。現在のパートナーは、3頭目の雑種の保護犬11歳の女の子。大学で教育学、認知心理学、社会心理学などを専門的に学び、人と犬の関係性や犬の心の成長の研究を行う。2013年にスクールを立ち上げ、飼い主と犬のパーソナリティを重視。思考に訴えかける行動矯正が多くの女性に支持されている。翌年ホリスティックケア・カウンセラーの資格を取得。食事の重要性を再認識しフード選びのアドバイスも積極的に行う。里親制度の啓蒙や地域行政と連携した動物相談など、教育、行政、法律と多方面で犬と人の問題に向き合っている。ヒトと犬の関係学会員、愛玩動物飼養管理士、神奈川県動物愛護推進員。
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