保護犬が訓練でセラピー犬に!犬が人の心をケアするアニマルセラピーとは
犬や猫などの動物と一緒にいると、気づけば穏やかな気持ちになっている人も多いはず。そんな動物の不思議な力を生かしたアニマルセラピーが近年注目されています。
アニマルセラピーで活躍するセラピー犬とは一体どんな犬なのでしょうか?今回は、セラピー犬の紹介と仕事内容、犬と人との心のつながりの大切さについてご紹介します。
アニマルセラピーって何?
動物を通じたふれあい活動と、動物を通じて得られる効果を期待して行われる療法の総称をアニマルセラピーと呼びます。
代表的なところでは、老人施設や障がい者施設にセラピー犬が訪問する活動や、保育園や小学校などでの動物飼育、障がい者の乗馬体験などもアニマルセラピーです。
どんな効果があるの?
アニマルセラピーには、私たちが心身ともに健康的な生活を送るために必要な変化と安定性に効果があるといわれています。
変化とは
- 動く、歩くなどの機会が増す
- 笑顔が多くなる、他者との会話が増える
- 動物の気持ちを理解しようと心を働かせる
安定性とは
- 食事や散歩の時間帯が一定し生活リズムが安定する
- 話し相手になったり、無条件に愛情を持てる存在なったりする
日常生活の中から、自然に無理なく心地よく変化と安定性を得られるのが、アニマルセラピーの魅力です。
そのほかにも、やる気が出たり、人間関係が円滑にいくなど、セラピー犬が近づくだけで人には日頃はみられないさまざまな変化が起こるといわれています。
セラピー犬に資格はあるの?
セラピー犬に犬種や外見の規程はありません。特別な能力や芸も必要ありません。しかし一般的に、セラピー犬として活躍するには、セラピー活動をしている団体や組織が設ける基準をクリアすることが必要です。ある団体の基準では、このようなものがあります。
- 見知らぬ人にも落ち着いていられる
- 他の動物と一緒でも落ち着いていられる
- 移動中も静かにしていられる
- お座り、伏せ、待て、ができる
- みだりに排泄しない
- 人と共に楽しく活動に参加できる
セラピーを受ける人たちの前で落ち着いていられることが必要なのですね。犬種では、レトリーバー系、膝に乗せられる小型犬も活躍しています。
実際に訪問活動に参加しているセラピー犬の活動とは
ゴールデンレトリバーのメス、5歳
ある老人介護施設。飼い主さんに連れられたセラピー犬が到着しました。長い毛が落ちないように洋服を身につけ、セラピー活動開始。
広間に座っている人たちの間を飼い主さんと一緒にゆっくり歩きます。声をかけてくる人がいたら立ち止まりお相手をします。車いすの女性の前に座って女性に頭を撫でてもらうセラピー犬。その女性は、いつもなら関節が硬くなった手を動かすことを嫌がるので、施設のスタッフはとても驚いていました。
参加動物のストレスを考慮して、セラピー活動はだいたい45分で終了。活動後は、飼い主さんからたっぷり褒めてもらいます。参加した人たちの表情も穏やかで、終了後は心地よい満足感を感じられるといいます。
保護犬も活躍中!
前述のセラピー犬。実は保健所出身の保護犬でした。保護された当初はしばらく夜鳴きが続いたこともありました。今は飼い主さんと穏やかな日々を送り、セラピー犬としてお仕事をする日は朝からとても楽しみにしている様子です。
平成26年度は全国で*年間5万3千頭が保健所(市町村で名称は異なります)に収容され、そのうち2万1千頭が殺処分されました。
*出展:統計資料 「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(環境省HP)より
このような犬たちを救おうと尽力している保護団体は各地にありますが、広島のピースワンコ・ジャパンでは、殺処分ゼロを掲げて保健所から犬たちを引き取り、里親へ譲渡する活動の他にセラピー犬や災害救助犬への育成をしています。
詳しく読む→殺処分ゼロへ。そして、その先へ。 GREEN DOG x ピースワンコの取り組み
セラピー犬になるための訓練とは
セラピー犬が、ストレスを感じながら、嫌々人間につき合って活動するのでは、セラピーの効果はあまり期待できません。
セラピー犬のトレーニング(訓練)は、日常生活の中で、多くの経験と学びのチャンスを与えてあげることが何よりも大切。
特に普段からさまざまな場所で落ち着いていられるように慣れさせてあげることは、セラピー犬として仕事をする犬のためには必要な訓練です。
「待て、お座り、伏せ」などの基本的なトレーニングの他に、特に話しかけられた人の顔をみるという訓練は、セラピー犬独特の大切なトレーニングです。セラピー犬が参加者の顔を見上げる姿を見るだけで心が温まる人もいるほどです。
心をつなぐ幸せの輪
セラピーの現場はセラピー犬と飼い主さんの信頼関係が感じられる場所でもあります。飼い主さんとパートナーの心のつながりがあるからこそ、他者にも愛情や安らぎを伝えられるのかもしれません。
犬を連れたときのほうが、初めて会う人とでも仲良くなれることはありませんか?
アニマルセラピーは動物と人の心だけがつながるわけではなく、動物を通して人と人が触れ合えることも魅力です。
セラピー犬だけでなくあなたの愛犬も、あなたとこれから出会う誰かとの架け橋のような存在になれるのかもしれませんね。
人間に命を奪われかけた元保護犬たちが私たち人間を助けている現実があります。セラピー犬に限らず、犬たちは私たちが想像するよりもずっと日常の私たちを観察し、人間の仕草や行動パターンを学習しています。
私たちもそろそろ犬という動物がどんな動物かをちゃんと知ることで、本当の意味での、犬と人間の幸せの輪が広がる社会が実現するのかもしれません。
制作協力:白田 祐子(しらた ゆうこ)・・・心理士(人の感情と犬の行動の関係性研究)、ドッグメンタルカウンセラー、ドッグトレーナー、ホリスティックケア・カウンセラー
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Follow @greendog_com「犬のココカラ」編集部 チームGREEN DOG 監修・執筆
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