【犬との暮らし】犬の心を育む11~「望む行動・望まない行動」とご褒美の関係
こんにちは。ヒトと犬の心と行動カウンセリングをしている、心理士でドッグメンタルトレーナーの白田祐子です。
みなさんは愛犬に新しい行動や望ましい行動を覚えてもらいたいとき、ご褒美をあげていますか?研究では、ご褒美をあげると、ご褒美の着前に発現した行動が繰り返されることが分かっています。愛犬へのご褒美は褒めたり撫でたりするだけではなく、愛犬が大好きなおやつをあげる方も多いと思います。ご褒美としてのおやつは愛犬のやる気を高め、生き生きとした生活を送る潤滑油にもなります。今回はご褒美と行動の関係について考えます。
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目次
ご褒美は必要?
行動学や心理学では、行動の頻度があがること(行動が繰り返されること)を強化、その行動を起こした結果得られる刺激のことを強化子(きょうかし)と言います。強化は強化子があるから起こります。たとえば、お座りの成功率を上げたい(お座り行動を強化したい)場合は、強化子が必要で、その強化子となるのがご褒美です。
また子供が親や先生から、あるいは私たちが上司や仲間から褒められると「もっと頑張ろう!」とやる気が増すのと同じで、犬の頑張る気持ち、ポジティブ感情を引き出すためにも、「嬉しい!」「いいことがあった!」と思える、ご褒美を与えることはとても大事なことなのです。
おやつでモチベーションアップ!
みなさんの中には「学習のときにおやつは必要ない」「おやつをあげると癖になって良くない」とお考えの方もいらっしゃると思います。でも、犬の特性や時と場合にもよりますが、モチベーションやポジティブな気持ちを高めるためにおやつを利用することは、問題ないと私は考えます。
ご褒美にいつも食べているドッグフードをあげる方もいるかもしれませんが、犬にとって「やったぁ!」「嬉しい!」と思えるものでなければ、強化子にはなりません。ですから、いつものドッグフードでも良いですが、あまり喜ばないようなら、より愛犬が喜ぶものを用意した方が有効だと思います。もちろん、褒めたり撫でたりすることも、嬉しいご褒美になりますよね。
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望ましい行動を強化するABCメソッド
愛犬とのコミュニケーションや行動学習に、既におやつを上手に使っている方は多いと思います。でも逆に「おやつがあるときはいう事を聞くのに、ない時は聞かない」と、お悩みの方もいるかもしれません。それは多くの場合、おやつを使ったからダメだったのではなく、おやつがうまくご褒美になっていなかったことに原因があるのです。
おやつを使ったお座りの練習の結果「おやつがなくても、できるようになった犬」と「おやつがなくては、できない犬」の違いは、「なぜ、どうして、その行動をするのか」を理解する、A:先行刺激(きっかけ)、B:行動、C:後発刺激(結果)の3要素からなるABC分析と呼ばれるメソッドに当てはめてみることでわかります。
ABC分析とは?
Antecedent stimulus:先行刺激
- 行動よりも先か同時に提示されることでBの行動が自発されるきっかけとなる刺激
Behavior:行動
- 犬の自発的な行動
Consequence stimulus:後発刺激
- 自発的な行動を起こした結果得られる刺激=行動の出現頻度を変化させる刺激(強化子)
ABC分析に当てはめてみよう!
たとえば、「A「座れ」のきっかけの合図→B 座る→C おやつが貰えた」とすると、犬は「座ってみたらいいことがあった!」と思うので、「お座り」という合図や合図がない場合でも喜んで座るようになります(このような流れを三項随伴性といい、今回はその一例です)。
「おやつがないとお座りしない」という場合、きっかけが「お座り」という言葉ではなく、おやつそのものになっているのではないでしょうか。正しい順番は「A 合図→B 座る→C おやつ」ですが、持っているおやつが刺激材料になってしまうと、どんなに「お座り」という言葉を使っていても、「A おやつ(きっかけ)→B 座る→C おやつ」となり、きっかけのおやつがないと座らないようになるのです。
ご褒美のあげ方とタイミング
これはとても単純なことですが、おやつを持っているのを気づかれないようにすることが第一です。どうしてもおやつを持っているのを気付かれてしまうなら、大袈裟に褒めてあげるだけでも学習の仕方はずいぶん違ってきます。
行動を変化させるために使用するおやつは「あっ、ラッキーおやつがもらえた!」と思ってもらうことが目的ですから、必ずしもおやつでなくても良いのです。犬はいい結果や嬉しい結果を得られた行動は忘れません。最初は棚からぼた餅のような「思いがけない良いこと」が、その行動を強めていくのです。
ワン!ポイントアドバイス
ご褒美は座ると同時または座った直後に与えると効果が高まります。また、はじめは、座るたびに与えるようにしますが、ある程度「お座り」の合図で座ることができてきたら、おやつは毎回ではなく、たまにあげるだけにして、撫でる、褒めるなどを加えていきます。ご褒美が全くなくなってしまうと、覚えた行動も消去されてしまいますが、たまにいいことがあれば、長期的にその行動をし続けることは科学的に明らかにされています。
もしかして…困った行動がどんどん起こるのも?
教えたわけではないのに「いたずらや困った行動、望まない行動が頻繁に起こるようになってきた」と感じている場合も、ABC分析にあてはめてみると理解することができます。
たとえば、呼び鈴で吠える犬を静かにさせるためにおやつを与えた場合、「A 呼び鈴→ B 吠える→C おやつ」の流れですと、おやつは「ピンポンが鳴ったら吠える」というご褒美になってしまい、吠える行動は繰り返されてしまいます。
また、犬が自分に注目してもらいたくて吠えることを要求吠えといいますが、この時、周囲の人が「静かに!」と注意しても、注意の仕方によっては「やった!かまってもらえた!」と犬にとってはいいことになります。この場合、吠えるたびに注意することが、要求吠えの頻度を増やしてしまうのです。
また、愛犬が困った行動をした後に、つい笑ったり、なだめようと声をかけたりすることも、犬にとっては「いいこと」「嬉しい反応」が起こっているので、私たちの思いとは裏腹に、困った行動を繰り返すようになってしまいます。
おわりに
当然ながらご褒美のおやつは、種類や回数によっては肥満や食生活の乱れをまねく恐れがあります。量よりも質と回数で楽しみを増やしながら、おやつ以外のご褒美と一緒にかしこく使いこなしていけるといいですね。最初はおやつが必要でも、あなたの犬にとって、あなたの笑顔がとびきりのご褒美になることは間違いないと思います。
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