【犬との暮らし】 シニア犬と暮らす 3 ~ボーダーコリー
ドッグトレーニングインストラクターの三井です。
前回は我が家の初代アイドル犬(笑)スコット(シベリアン・ハスキー)がシニア期に発症した病気や、その後のケアについてお話しました。
前回の記事はコチラ→【犬との暮らし】 シニア犬と暮らす 2 ~椎間板ヘルニアと介護
今回は、その後我が家にやってきたボーダーコリーたちとの生活をお話しします。
犬種が変わると生活も変わる
スコットの病気が発覚したあと、外での活動が制限される彼にとって少しでも精神的な刺激になればと思い、私は二頭目の犬を迎えようとブリーダーさんを探しました。
日々衰えを感じるスコットを見ていて、二頭目の犬を迎える決意をしましたが、結果的にその子が来る数週間前にスコットは旅立ってしまい、対面はかないませんでした。
スコットが亡くなった後に我が家にやってきたのはボーダーコリーの女の子でクリスと名付けました。良きお手本となってくれるはずのスコットがいなかったので、子育ては一から始めなくてはなりませんでした。
しかも、ボーダーコリーと言う犬種はスコットのようにマッタリというわけにはいきません。いつもこちらの様子をうかがい、遊びに誘ってくるこの犬のやる気やパワーを満足させてあげるためには、私もいろいろ勉強しなければいけないと痛感し、服従訓練(オビディエンス)を初め、当時流行り始めたフライングディスクやアジリティ、シープドッグなど、さまざまなドッグスポーツにチャレンジしました。当然、彼女と共有する時間はスコットの時より多くなりました。
やがて、クリスは母となり、2頭の子供たちとの生活も始まりました。とにかくいつも動いていたい犬たちなので、私は彼らの意欲を満たすために、毎朝夕散歩の度にトレーニングをし、1頭ずつ交代で遊びました。
日がな一日まったりとした時間を共有し、散歩は自転車で走るだけというスコットとの生活とは一変しましたが、おかげでこちらもだいぶ健康的になりました。
若いころからの健康管理
いろいろかじったドッグスポーツの中で、クリスが7歳の頃出会ったドッグダンスは、シニアになっても楽しく続けられるドッグスポーツとして、彼らの健康維持に役立ったような気がします。
例えばバックステップ。当時続けていた訓練競技において、バックステップは必須科目ではなく、どうしても教えなくてはいけないものではなかったのですが、ドッグダンスを始めたことで、必須のムーブ(動き)の一つとして犬たちに教えました。
犬はもともと、前足について後ろ足を動かしながら前進する前輪駆動ですので、自分から後ろ向きに下がり続けるということはほとんどありません。一方、歳を重ねた犬たちはだんだんと後ろ足の可動域が狭くなります。気が付くと腰が丸くなり、立ち姿を横から見ると台形を逆さにしたように、後ろ足が前足の方に寄ってしまいます。後ろ足を意識的に後ろに引くバックステップは、後ろ足の可動域が広げられ、腰が丸まるのを防ぐだけでなく、筋力アップにもつながると私は思っています。バックステップだけでなく、サイドステップも同じです。
最近は、バランスボールやバランスディスクを使った体幹トレーニングなども筋力アップに良いと言われていますが、ドッグダンスでは、前足や後ろ足を(1本ずつ)上げるというトリックがあり、そうしてバランスを取るエクササイズは犬の体幹が鍛えられます。(上写真)
シニア期に気を付けること
若いころからいろいろ気を付けていたとしても、確実に歳は重ねているので、いつまでも昔のままと言うわけにはいきませんね。
日々の健康管理は、太り過ぎないよう体重に気を付けたり、お口の臭いを気にしたり、また体の動き方をよく観察する必要があると思っています。
当然のことながら、太ってしまうと足腰への負担がかかってしまいますし、歯周病に気づかず悪化すると、犬の場合は人間よりも重篤になる場合もあります。
動きが鈍くなってくると、今まで上れたところに上がれなくなり、日常のケアを考えてあげなくてはいけません。
クリスたちはずっとSUV車の後部座席に乗っていたのですが、ある日を境にクリスが乗ろうとしなくなりました。いつも「アップ」と言えばどこにでも跳び乗っていたのに、もう70センチは無理だと自分で感じたのでしょう。そこで仕方なく低床スライドドアのミニバンに買い換えることにしました。
クリスの息子のハンスは、同じものを食べていても、10歳を超えたあたりから歯周病を患ってしまいました。歯がウィークポイントだったのでしょう。前歯を数本抜くことになりました。これはお口の臭いで発覚しました。
また、犬も年齢と共に耳がだんだん聞こえづらくなくなってきます。耳の衰えは母クリスよりハンスの方が早めに出始め、言葉のキューへの反応が遅くなってきて気づきました。もともと、服従訓練などのトレーニングを積んできた犬たちなので、ハンドシグナルよりも言葉のキューに反応するように教えていました。耳が遠くなれば、身振り手振りを大きくして彼らの注意を引かなければなりません。ちょっとでも離れてしまうと全く聞こえず、ちょっとだからと油断していると、大変なことになったこともあります。
実はシニア犬って意外と足が速いのですね。いつも行く公園に車で行ったときのこと。シニア組を一頭ずつ順番に下ろし、フェンスにリードを繋ぎました。最後に一番若い犬を下ろしながらクリスたちに目をやると、結んだリードが緩んでいたのかもしれません。長老のクリスが歩道を一人で公園に向かってトットコ歩いていく後姿が見えました。すでに10メートルぐらい離れています。あわてて若犬を車に戻し、大声で名前を呼びながらクリスを追いかけても、全く止まる様子がありません。必死に走って追い付いたのを覚えています。シニアだからと侮れませんね。
また、車の乗り降りができないと犬自身に自覚があればいいのですが、体力の衰えに自覚が無いこともあります。
我が家の犬たちは、寝室のドアノブを勝手に開けて出て、私が階下にいると上階の踊り場から見下ろしている時がありました。ある日、私が食後のデザートと飲み物を持って階段を上がっていると、なんとクリスが上から降ってきたのです。多分ふらーっと力が抜けたのでしょうね。足を踏み出さず、頭から降って来ると言う感じでした。私は持っていたものを手放して、間一髪、クリスを抱きとめました。しかしデザートは残念な結果に。
おわりに
スコットの時は、老いを感じてからお別れまでがあっという間の1年ちょっとでしたが、ボーダーコリーたちは日ごろ健康に気を付けていた分、たっぷりシニア時代を満喫させてくれました。
最終回は、老いても元気な犬たちの楽しい介護生活についてお話ししようと思います。
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Follow @greendog_com三井 惇(みつい じゅん) CPDT-KA、ドッグトレーナー/ドッグダンスインストラクター、ホリスティックケア・カウンセラー
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