小型・中型犬では8歳前後、大型犬では5歳前後を「プレシニア期」といい、快適にシニア期を過ごすために大切な期間です。 「シニア期を迎えた時にどんなことが起こるか?」、「プレシニア期にできることは?」などオーナー様の疑問を獣医師と一緒に考えていきましょう。
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獣医師が解説!パートナー(愛 犬)の心臓と腎臓のお話|ずっといっしょ。快適なシニア期のために今からできること
ずっといっしょ。快適なシニア期のために今からできること
シニア期の準備期間「プレシニア期」
パートナー(愛 犬)の心臓と腎臓のお話
心臓と腎臓、動物が生きていくうえでどちらも欠かせない臓器ですが、年とともに機能が衰えることも多いのがこれらの臓器です。
腎臓や心臓の健康を守るために何かできることはないのでしょうか?以前は、高齢になったら早期から極端にタンパク質や塩分(ナトリウム)を制限するように言われていましたが、必ずしもそうではないということがわかってきています。そして、制限する以外にも心臓や腎臓の健康のためにできることがありそうです。
皆様のパートナーの長生きのため、腎臓や心臓の最新の栄養学に触れてみましょう。
1.長鎖ω-3脂肪酸が心臓病・腎臓病の進行を食い止める??
いくつかの論文で長鎖ω-3脂肪酸(EPA、DHAなど)が心臓病や腎臓病の進行を抑制する作用がある可能性が示されています。
EPAやDHAを補給することで、体の中で起こる炎症を軽減する効果があることが知られています。それがどれくらい病気に予防的な効果を示すのかは研究段階ですが、腎臓を保護するという報告や、不整脈が起こるリスクを減らすという報告があり、心臓病・腎臓病の悪化を防ぐ効果がありそうということが分かっています。
2.心臓と腎臓には密接な関係がある!?
今回、心臓と腎臓をセットで紹介していますが、この2つの臓器には切っても切れない関係があります。
心臓から押し出された血液は血管を通り腎臓に到着します。腎臓では血液をろ過して、不要な水分や成分を尿として排出する役割があります。
腎臓が正常に尿をつくるには、適正な血圧が必要で、心臓病で血圧に異常が出ると、腎臓にも負荷がかかることがあります。
また反対に、腎臓病で正常に水分などを排出できないと、体の中の水分が過剰になり心臓に負荷がかかることがあります。
どちらの臓器が悪くなっても、一方に影響が出る一蓮托生の臓器なのです。
3.ナトリウムは制限しすぎると逆効果??
人間では「心臓病=ナトリウム制限」というのが定説になっていますが、そもそもわんちゃん達にどれくらいの制限が必要かは明確になっていません。普段から塩分を摂りすぎがちの人間と違い、ペットフードのナトリウム量というのは適正な量に抑えられているのもその理由です。
当然ながら、人間の食べ物を与えるなど過剰な摂取は避けるべきことです。しかし、過剰に制限することも心臓や腎臓の病気を悪化させる可能性があるのです。
動物の体は血液中のナトリウムの量が一定になるような仕組みを持っています。過剰にナトリウムを制限してしまうと、その仕組みに負荷がかかってしまい、結果心臓や腎臓の病気を悪化させるかもしれないのです。
※病気の状態によってはナトリウム制限が必要な場合もあります
4.タンパク質は制限するべき??
過剰なタンパク質の摂取が腎臓病に悪影響を与えることは確かに示されており、進行した腎臓病であればタンパク質の制限は必要です。
しかし、過剰に制限した結果、タンパク質性栄養不良の状態になってしまうこともまた、体にとっては悪影響です。タンパク質は必須アミノ酸を含む、体には絶対に必要な栄養素です。まだまだ腎臓が健康なうちに老齢という理由で過剰に制限する必要性はないのです。
最後に
万が一パートナーが心臓や腎臓の病気になってしまった際には、獣医師さんと食事についても相談してみてください。検査の状態などによっては、食事を制限する必要もあるでしょう。しかし、老齢になってきたから、という理由で極端に食事を制限することが、むしろ体にとっては悪影響を及ぼすことも知っていてください。
老齢になってもバランスの良い食事を摂ることが健康維持の第一歩です。
プラスアルファで何かしたい方は、EPAやDHAなどのお食事習慣を始めてみるのもいいでしょう。他にもL-カルニチンや抗酸化物質など、心臓や腎臓への効果が研究段階の成分もあります。今後、わんちゃんの食事での病気予防が解明されるのを期待しましょう。
参考文献:
Encyclopedia of Canine Clinical Nutrition -犬の栄養学-, Pascal Pibot, Vincent Biourge, Denise Elliott
Beneficial effects of chronic administration of dietary ω-3 polyunsaturated fatty acids in dogs with renal insufficiency, Scott A. Brown, Cathy A. Brown, Wayne A. Crowell, Jeanne A. Barsanti, Timothy Allen, Christopher Cowell, and Delmar R. Finco, 1998
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