【犬との暮らし】犬の心を育む13~嘘をつく・意地悪な人は嫌い?犬の感受性は人間以上!
こんにちは。ヒトと犬の心と行動カウンセリングをしている、心理士でドッグメンタルトレーナーの白田祐子です。
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ふと視線を感じてみると、あなたを見つめる愛犬…。純真無垢な澄んだ瞳で静かに見つめられると、なんだか心の奥まで見透かされているようで、ドキッとすることありませんか。犬は私たちの何を見ているのでしょう。今回はいくつかの実験結果から犬による人の評価について考えてみます。
犬の感受性は人間以上?
犬の感受性は私たち人間以上に強く、人の動作にとても敏感に応答する特性を持ち合わせていることが、さまざまな実験で明らかにされてきました。ちょっと褒められただけでとても喜ぶなど、これも犬の感受性が豊かな証ですが、それだけではなく、褒めるときの私たちの顔、笑顔が大好きという気持ちも大きいように思います。
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犬はどこまで人の動作に反応するのか
犬が人をどのように判断しているのかを知るための「指さし実験」と呼ばれる、とても信頼度の高い実験があります(Miklósi,Polgárdi,Topál,&Csányi,1998)。
- ① おやつの入ったものと入っていないもの、2つの不透明の容器を犬から少し離れ場所に用意し、合図とともに好きな方を選ばせます。
■結果=容器の匂いを手がかりに、おやつが入っている方を選択する。
- ② 次に、①と同様に容器を用意し、人間が片方の容器を指さしてから好きな方を選ばせる。
■結果=人が指さした容器を選択した。
どちらにおやつが入っているのか匂いで分かるため、指さした容器が途中で空っぽだと気づいても、多くの犬は人が指さした方の容器を選択したそうです。なかには、わずかな顔の向きや目線程度でも、人が注意を向けた方の容器を選ぶ犬もいたようです。犬は時として私たちが想像する以上に、私たちの動作を微細に観察して反応しているのです。
犬は嘘をつく人には従わない?
小さなおやつをフタに張り付け、匂いの手がかりをなくした2つの容器を用意します。
- ① Aさんが予めおやつを入れた方の容器を指さした後、犬に好きな容器を選ばせる。
■結果=多くの犬は指をさした容器を選択。
- ② 次に、おやつがどちらに入っているのかを犬に見せてから、Aさんはおやつの入っていない方の容器を2回指さす。
- ③ 同じ条件でAさんが容器を指さし後、容器を選ばせた。
■結果=指をさした容器を選択した犬は激減した。
- ④ ③の場面でAさんに代わってBさんが指差しを行った。
■結果=指さした容器を選択。
この実験から、嘘の指さしがたった2回であったにも関わらず、犬は人の資質や情報の信頼性を観察、評価し、指さしに従うのを辞めたということが分かります。また、指さし課題で毎回嘘をつく人と正直な人が犬の訓練を行ったところ、犬は嘘をつく人の指示には従わなかったという実験結果もあります(Petter, Musolino,Roberts,& Cole,2009)。
これらのことから、犬は自分の経験や観察した結果から人の正当性や信頼性を評価し、その後、どのようにその人物と関わっていくのかを判断していると理解できます。
犬は意地悪な人が嫌い!?
私たちは、たとえば、道で迷って困っている人に丁寧に対応している人を見ると「親切な人だ」と好意的に評価し、呼びかけられても無視して通り過ぎる人を見れば「冷たい人だ」と否定的に評価するなど、自分自身の利害には関わりがなくても、他者の行動から評価を下しています。では、犬はどうでしょう。おやつが貰えるなどの損得に関係がない場面でも、犬は私たちの資質を評価するのでしょうか。次のような実験結果があります。(Chijiiwa,Kuroshima,Hori,Ander-son,&Fujita,2015)
犬から少し離れた場所に、飼い主を中心に3人並んで腰かけます。飼い主はビニールテープの入った透明の容器のフタをなかなか開けられず、右隣の人に助けを求めます。
- ① 右の人が容器を支えてくれたため、中からテープを取り出すことができ、飼い主は愛犬に笑顔を見せます。その後、右隣の人と何もしなかった左隣の人が犬におやつを差し出します。
■結果=両方からおやつを貰った。
- ② 次に、両サイドの人を交代し、飼い主が右隣の人に手助けを求めますが、今度の人にはそっぽを向かれてフタを開けることはできません。その後、右隣の人と何もしなかった左隣の人がおやつを差し出す。
■結果=左隣の人からのみおやつを貰い、飼い主に冷たく振まった人からはおやつを貰うことを避けた(顔をそむける行動を嫌う可能性、飼い主の表情に応答した可能性など、結果が疑われることのない条件下で行われています)。
犬は親切に手助けした人をより好むという結果はありませんでしたが、犬自身の利害に関わらない場面でも、人同士の社会的交渉場面をよく観察し、私たち人間の資質を動作だけではなく感情的に評価していることがわかります。これは、人間も含めた社会において、犬が高い社会性や社交性を身に付けていることが分かる結果なのではないのでしょうか。
犬はみんなの笑顔が大好き!
2008)。
片方には1個、もう片方には8個のおやつを載せたお皿を用意します。
- ① 犬に好きな皿を選ばせます。
■結果=8個の皿の方を選択。
- ② 次に、飼い主が1個の皿を持ち上げて犬に向かって大きく喜ぶ動作を見せた後に選ばせる。
■結果=1個の皿の方を選択した。
犬は私たちの笑顔をポジティブな情報と捉え、あるいは、笑顔にインスパイアされ、たとえ自分には不利益だと分かっていても笑顔を見せた方へ反応したのです。
おわりに
犬はうなずきや指の動きなどの動作と同じくらい、目や顔にも注目し、私たち人間の全身を情報源としています。ですから、私たちが自覚せずにとった行動やふとした心の動きがメッセージとなって発信されたとき、犬のその後の行動を見ると、私たちが正しいメッセージを発信したか、あるいは思惑と違って間違ったメッセージを発信してしまったのかを判断することもできます。
犬は、受けとったメッセージがたとえ間違っていたとしても、一度身についてしまうとそれを優先して繰り返してしまう傾向があります。私たちは感受性が強く、観察眼の鋭い犬たちに間違ったメッセージを伝えないよう、もう少し注意深くなる必要があるのかもしれません。
飼い主と犬が同じ方をジッと見つめている姿は、言い知れぬ一体感を感じられるものです。でも、人と犬に多くの意思の疎通や共有できる感情はあっても、100%同じ世界で生きているということではありません。犬は私たちとは違う主観的な世界で生きていることを忘れてはいけないと思います。犬は人間に依存し、人間を喜ばせたい願望が強すぎるところもあります。でもそれは、私たちが思っている以上に「犬は私たちのことが好き」ということ。
きょう、あなたは、あなたの犬にいくつの笑顔をプレゼントしましたか。明日もあさっても笑顔で過ごせますように。See You!
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