【犬との暮らし】犬の心を育む14~あなたの笑顔で育む。豊かな心と信頼関係
こんにちは。ヒトと犬の心と行動カウンセリングをしている、心理士でドッグメンタルトレーナーの白田祐子です。
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目次
「ねぇ、楽しいね」とあなたを見上げる元気な笑顔。「あー幸せ」と語りかけてくる柔らかな笑顔。「かわいいね」と言われて、ますますキラキラの笑顔。犬たちの笑顔を見ていると私たちも幸せな気分になりますよね。でも、本当に犬は嬉しくて笑っているのでしょうか。飼い主あるあるの「気のせい」なのでしょうか。今回は人と犬の笑顔の関係について考えていきます。
犬も笑う?
犬が大好きな人や犬に出会ったときの表情を観察すると、耳を後ろに倒して口元を穏やかに開くことで少し口角が上がっていることがわかります。また、目を細めたり、瞬きをするなどして敵意がないことを示すため、目元の筋肉が緩んで表情が優しくなります。それは、まるで「犬が笑っている」ように見えます。
「笑う」という言葉の意味にもよりますが、私たちの笑顔が「嬉しい」「楽しい」「大好き!」といったポジティブな感情の現れであることを犬たちは知っています。そして自分たちの「嬉しい!」「楽しい!」という気持ちを分かってもらうために「笑う」のです。
あなたの表情で気持ちが分かります
犬が私たちの社会の中で生きていくには人間の感情にうまく対応していく必要があります。犬はもともと人間の感情にとても敏感な動物ですが、では、どのように私たちの感情を判断しているのでしょう。たとえば、私たちが「コラっ!」と強く大きな声を出すと、「わぁ、怖い!怒ってる」と思うでしょう。でも、怒鳴られなくても、私たちの顔を見て「楽しそう」「機嫌が悪いな」など、判断できるそうです。
特に、笑顔と怒った顔は、見ず知らずの人の顔写真からでも見分けられることが多くの研究で明らかになっています。また、表情の違いを見分けるだけではなく、怒り顔の画像を見ると、多くの犬は自分の口元を舐めるそうです。この状況での口舐め行動はストレス反応と考えられますので、犬は怒った表情から感情を読み取り、さらに「なんかイヤだなぁ」と憂鬱な気分になってしまうほど、私たちの感情に影響されてしまうのです。
私たちは、笑顔と怒り顔の違いを判断するのは簡単なことと思うかもしれません。でも、表情の違いを見抜くには、顔の基本パターンを認識したうえで、微妙な差異を見分けなければならないため、単純な視覚とは違う識別能力が必要なのだと考えられています。また、臭いによる情報収集やコミュニケーションが最優先される犬が、人に対しては「顔を見る(視覚)」だけで相手の気持ちを読み解けるのは、「人間を理解する能力」という新たな能力を身に付けた結果なのではないでしょうか。
一方で私たちの「犬を理解する能力」はどうでしょう。人間のやり方や人間の考えを、そのまま犬に当てはめてしまっていることはないでしょうか。私たちが、犬同士がお互いを理解するような能力を身に付けるのは難しいかもしれません。でも「犬を理解するための知識」は、身に付けることができるはずです。その知識は、私たちを理解しようとする犬たちへ「ありがとう」と伝える、愛のカタチになるかもしれません。
笑顔のあなたが大好き!
愛犬のいたずらやワガママをつい怒ったら「ずっとソファーの陰に隠れてでてこない」「呼んでも近寄ってこない」など、少し怒りすぎちゃったかなと反省した経験をされた方もいると思います。実際に反省しているかどうかはともかく、私たちの怒り感情に対する犬の心的負担は私たちが思っている以上に大きいようです。
ある研究で、笑顔を見せて明るいトーンで話す人と、しかめっ面で眉をひそめて厳しい声のトーンで話す人が、足元にあるご褒美を指差したとき、怒っている人の指差し行動への反応が笑顔の人よりも時間がかかることがわかったそうです。また、笑顔と怒り顔の画像を見分けさせる実験のなかで、笑顔の写真を選ぶ時はスムーズに選べるのに対し、怒り顔は時間がかかったそうです。さらに、怒り顔を選択するグループと笑顔を選択するグループとを分けたとき、怒り顔を選択するグループは写真をタッチする訓練に時間がかかり、研究チームによっては、おやつを使っても怒り顔を選択することを拒んだ犬がいたそうです。
日常生活では、「怒っているから、イヤだな」と思っていても、いつまでも陰に隠れてはいられません。憂鬱な気分に陥っても、あなたの犬はあなたを信用し、あなたを頼りにしているのです。なかなか言う事を聞かないときも、いま叱っても「時すでに遅し」という時には、いったん深呼吸をして口角をあげ、笑顔を作ってみませんか。怒った顔は、あなたにもあなたの犬にもストレスが溜まってしまいます。犬はリラックスして楽しい気持ちでいる飼い主をより長く見つめるそうです。笑顔の明るい声で接した方がしつけも早く覚えてもらえるはず。あなたの犬は笑顔のあなたが大好きなのです。
「僕たちをもっと見て!」見つめ合いが絆を深める
愛犬と目と目が合ったとき、あなたはどのような気持ちになりますか?一般的に犬は視線を合わせるのが苦手です。でも、飼い主の目を見ないようでは、コミュニケーションをとるのは難しいかもしれません。「いい子にしているから撫でようとしたら噛まれた」「注意をしても全く聞く耳を持っていない」など、お困りの方の犬はアイコンタクトがとれないケースが多いように思います。どんな時でも、名前を呼んだり、「ねぇ」声をかけたとき、あなたの犬はあなたに注目しますか?
見つめ合いは、人にも犬にもオキシトシンと呼ばれる幸せホルモンが分泌されることが明らかになっています。オキシトシンは不安や緊張などストレスを軽減するなど、生理的な効果だけではなく、母子間のような絆の形成にも関与すると言われています。オキシトシンを投与された犬は、飼い主を見つめる回数や時間が増えるそうです。これは、幸せな気分の時に、より飼い主を見つめると言うことですので、アイコンタクトがとれにくい(飼い主を見ない)場合は不安や緊張などストレスを抱え、信頼関係が築けていない可能性が高いといえます。見つめ合いはあなたとあなたの犬の幸せな瞬間。もっと見つめ合って、絆を深めていけるといいですね。
表情豊かな犬はコミュニケーション上手!
人と哺乳動物の顔の筋肉は似ていて、感情に応じて表情を変えるのは共通のようです。でも、私たちは、気持ちをはっきり伝えたい時や感情をコントロールする時など、意識的・意図的に表情を変え、コミュニケーションに活用します。犬はどうでしょう。出掛ける準備をしているとき、潤んだ瞳で口をすぼめ「寂しいな」とうつむいて見せたり、「それ、美味しそうだね」と、可愛い顔でアピールすると、お裾分けがもらえるのを知っていたり。これらは、飼い主ゆえの錯覚なのでしょうか。それほど、高度な心理作戦が犬にはあるのでしょうか。
ある実験で、人に背を向けられている時の犬は、そこに食べ物があっても無表情で座っていたのに対し、人が犬に顔を向けると、たとえ食べ物がなくても、さまざまな表情を見せることが分かったそうです。特に、私たちのハートと射止めることを見抜いているかのように、多くの犬が目を見開いて子犬のような顔を作って見せたそうです。私たちに見られることで、「なに?」「ねぇねぇ」「えへへ」など、感情に合わせて表情を変えるだけではなく、「ほら!可愛いでしょ!」と、とっておきの顔を用意しているのです。表情が豊かな犬ほど、より積極的にコミュニメーションを試み、人と犬が分かりあえる能力を開発・発展させていると言えるのではないでしょうか。
おわりに
仲睦まじく目を合わせ、テレパシーが通じたかのように、「ふっ」と微笑む人と犬。見ている者も幸せな気分になる光景ですよね。笑顔でいると愛犬はあなたに注目し、そして目が合い、お互いが穏やかで幸せな気持ちになって信頼関係も深まる。さらに、表情が豊かになってコミュニケーション上手になる・・・そう考えたら、なんだか、とても楽しくなりませんか?
今週は「スマイル週間!」。笑顔を量産して愛犬にプレゼントしてあげましょう。顔筋ストレッチだと思えば一石二鳥!もっともっと、人と犬が笑顔で繋がっていくといいですね。
次回の記事はこちら →【犬との暮らし】犬の心を育む15~神秘の共感力とちょっと困ったシンパシー
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