2018.06.05一緒に。もっと、

MRIが見せてくれる「犬の心」

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今回は ガニング亜紀 さんの記事です。
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MRIが見せてくれる「犬の心」

犬の頭の中を覗いてみる

犬の心と体についての科学的な研究は世界中の大学や研究所で行われています。それらの研究やリサーチのおかげで、犬の脳の活動や感情世界のことは年々明らかになり、犬はかつて私たち人間が考えていたよりもずっと複雑で豊かな感情を持っていることも判ってきました。

中でも興味深いのは、MRIを使った犬の脳の活動のリサーチです。文字通り「犬の頭の中が覗ける」ことで、犬が見えている世界がわかり、以前にも増して犬への愛しい気持ちが湧き上がってきます。

麻酔を使わないでMRI検査をする

MRIが見せてくれる「犬の心」

犬とMRIと言えば病気の検査のために全身麻酔をかけて行うものというイメージが強いかと思います。しかし麻酔をかけた状態では通常の脳の活動を観察することができません。

この問題はアトランタのエモリー大学のバーンズ博士によって解決されました。

トリーツを使ってMRI装置の外で検査中の姿勢をとるトレーニングと、検査中の装置内の大きな音を遮る犬用ヘッドホンを利用することで、犬の体を拘束することなくMRI装置を使って犬が何かを見た時、聞いた時、嗅いだ時の脳の活動が観察できるようになりました。

これはイギリスのBBCで放送された、バーンズ博士と犬たちのトレーニングと検査の様子です。本当に興味深いのでぜひごらんください。

「犬の嫉妬」は人間のそれとよく似ている

MRIを使った犬の脳の最新の研究は、2018年3月に発表されたフロリダ・ニュー・カレッジのクック博士、前述のバーンズ博士、そして犬の攻撃性を研究するアニマルトレーニングのスペシャリストによる「犬の嫉妬感情と攻撃性」の研究です。

MRI装置の中で落ち着いて伏せていられるようにトレーニングを受けた13匹の犬がリサーチに参加しました。

13匹の犬はあらかじめC-BARQという所定の査定スケールに沿って、攻撃性の評価がつけられています。

犬たちは装置の中にいる時に3つの異なる状況におかれ、その時に起こった脳の扁桃体の活動が観察されました。扁桃体は恐れや攻撃性に関連する領域です。

3つの状況は「犬自身が食べ物を受け取る」「精巧な模型の犬が食べ物を与えられるのを見る」「食べ物がバケツに入れられるのを見る」でした。

2番目の「模型の犬が食べ物を受け取る」のを見た時、犬たちの扁桃体の活動が活発になったのですが、この脳の活動は人間の嫉妬の感情と似ているのだそうです。

なるほど、確かに他の犬が食べ物をもらっているのを見ると嫉妬をしますよね。

また最初に攻撃性が高いと評価されていた犬ほど扁桃体の活動が多く見られました。しかし攻撃性が高いとされた犬に繰り返し「模型の犬に食べ物を与える」状況を見せるうちに、扁桃体の活動が落ち着いてくることが確認されました。

このことから犬の気質と脳の特定の活動に相関があるということが判り、扁桃体の活動を引き起こす状況に脳を慣らすことが攻撃的な犬の行動を解決する助けになると考えられます。従来の攻撃性の問題の解決とは全く違う角度からのアプローチができるわけですね。

犬の脳の話を聞くと犬がもっと好きになる

MRIが見せてくれる「犬の心」

MRIを使っての犬の脳の活動をリサーチは他にもたくさん発表されていて、どれも興味深いものです。

例えば2016年に発表されたハンガリーのエトベシュ・ロラーンド大学の研究では、MRIの中の犬にヘッドホンから飼い主の声を聞かせて脳の反応を観察しました。

その結果、犬の脳の左半球は言葉そのものに反応を示し、右半球は声のトーンや調子に反応を示したことがわかりました。これは人間の脳の反応と同じです。

さらに、脳の中央の報酬領域では「褒める言葉がポジティブなトーンで聞こえた時」のみ反応を示したということです。

つまり、犬は飼い主が本当に気持ちを込めて褒めた時にだけ報酬を受けたと感じる=嬉しく感じるということですね。犬というのはなんと愛おしい生き物なのでしょうか。

2017年のメキシコのケレタロ自治大学の研究では、犬と面識のない人物の「うれしい・怒り・悲しい・恐怖・無表情」の5つの表情の顔を見せた時の脳の活動が観察されました。

その結果、犬は人間の「うれしい顔」を見た時にだけ、脳の側頭皮質と尾状核における活動が増加することがわかりました。犬にはネガティブな感情を区別して認識することが難しいのだそうです。

人間が同様の実験をして脳の活動の画像を撮った場合にも、犬とよく似たものになるのだそうです。

人間からの心からの褒める言葉を聞けば犬の脳は「うれしい」と反応し、人間のうれしい表情を見れば犬の脳は活発に活動する。

ね?
犬がもっと好きになるし、何があっても犬を裏切ることはできないと思いますよね。

おわりに

サイコロジー・トゥデイというサイトを読んでいた時に「犬の嫉妬の感情をMRIで見ると人間とよく似ていた」という内容のコラムを目にしたのがこの記事を書こうと思ったきっかけでした。

そこで紹介されていた過去の犬の脳の研究も併せて読んで「ああ、犬ってなんていい奴で愛おしいんだろう」と感じ入り、この思いをどうしても皆さんとシェアしたくなったというわけです。

研究や実験というとなかなかとっつきにくい印象がありますが、科学的に証明された犬の感覚や感情を知っておくと、日頃の犬との接し方にも良い変化があるように思います。

またトレーニングのさまざまな方法について「なぜこうすると効果的なのか?」「なぜこれは意味がないのか?」「なぜこれはいけないのか?」などが納得して理解できるようになります。

犬についてのさまざまな研究やリサーチの記事、目にする機会があればぜひ読んでみてください。知識が増えると、犬への愛が今よりももっと深まることと思います。

《参考サイト》
(https://animalstudiesrepository.org/cgi/viewcontent.cgi?article=1319&context=animsent)

(https://www.aaas.org/news/dogs-understand-human-words-and-intonation)

(https://www.biorxiv.org/content/biorxiv/early/2018/03/24/134080.full.pdf)

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ガニング 亜紀(ガニング アキ)

米国カリフォルニア州在住。2005年から犬との暮らしをスタートして2匹の犬をそれぞれ15歳で見送りました。犬たちとの16年間で知識が増えると犬との暮らしが楽になることを痛感しました。自分が「へ〜!」と感じたことを堅苦しくなくお伝えしていきたいと思っています。