2018.04.24その他の体のケア

獣医師が解説!慢性腎不全のメカニズムとケア

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慢性腎不全は、高齢犬での罹患率が高く、犬においてはがん・心臓病に次いで多い死因です。腎臓は、その一部分の機能が低下しても、症状に現れにくく、飼い主が気付いた時には手遅れの状態になってしまっているケースが多くみられます。愛犬のより快適なシニアライフのため、慢性腎不全をよく理解しましょう。

今回は、犬の腎不全の発症メカニズムとそのケアについて、GREEN DOGの獣医師 伊東が解説します。

そもそも腎臓の働きとは?

腎臓は、尿を作るという働きだけではなく、体の中の様々な調整を行っています。

1. 尿をつくる

  • 犬では、1つの腎臓にはネフロンという組織が約80万個あり、その一つ一つで尿がつくられています。ネフロンは、糸球体とよばれる毛細血管のかたまりとそれを包むボーマン嚢および尿細管からなっています。糸球体でろ過された血液(原尿)は尿細管を経て尿となり、尿中へは血液中の老廃物や薬、毒素などの不要物が余分な水分とともに排泄されます。

2. 体内環境を一定のバランスに保つ

  • ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、重炭酸イオンなどを調整してイオンバランスを一定にし、血液を弱アルカリ性に保っています。

3. 血圧を調整する

  • 腎臓でろ過機能が正常に働くためには血圧が一定に保たれていることが必要です。血圧が低くなると、腎臓からレニンという酵素が産生されます。レニンは血液中のアンギオテンシン-アルドステロン系*1に働きかけ、血圧を上げます。

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*1:腎臓から分泌されるレニンからの一連の血圧上昇のメカニズムを、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系と呼びます。腎臓からレニンが分泌されると、血液中のアンジオテンシノーゲンがアンジオテンシンIという物質に変わります。そして、アンジオテンシンIはアンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンIIになります。アンジオテンシンIIは全身の動脈を強く収縮させ、また副腎皮質からアルドステロンを分泌させます。
アルドステロンはナトリウムを体内に溜める働きがあり、これにより循環血液量が増加して心拍出量と末梢血管圧が増加します。血圧の上昇後にはレニンの分泌は抑制されます。
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4. 造血ホルモンを分泌する

  • 造血ホルモンであるエリスロポエチンを分泌し、骨髄で赤血球を作るように働きかけます。

5. 活性ビタミンDをつくる

  • 肝臓で蓄積されたビタミンDは、腎臓で活性化されます。活性型ビタミンDは、小腸からのカルシウムの吸収を促進して、カルシウムの利用を高める働きがあります。

腎臓はいくつも重要な働きを担っているのです。そのため、腎臓の機能が低下すると、さまざまな症状がみられるようになります。

慢性腎不全とは?

慢性腎不全は、数ヶ月~数年かけてジワジワと腎臓の破壊が進行し、全体の機能の3/4が失われてしまった状態を指します。病因はさまざまですが、多くの場合は特定ができません。

病因

急性腎不全
糸球体腎炎
間質性腎炎
腎盂腎炎
犬フィラリア感染症
水腎症
高血圧症
レプトスピラ症
腎異形成
腎腫瘍
先天性の腎臓病  など

慢性腎不全の症状

多飲多量(水を飲む量と尿の量が増える)、食欲低下、体重減少、嘔吐、脱水、貧血などが一般的です。また、腎性高血圧から眼や脳、心血管系に異常をきたすケースもみられます。中でも腎臓病の早期発見に重要なのは、尿検査で尿の比重の低下に気がつくことです。

慢性腎不全は次の表のように、4つのステージに分類されます。

犬の慢性腎臓病の病期分類

ステージ
分類
残存
腎機能
血液検査
(血清cre値)
尿検査
(尿比重)
病態
ステージ1 33% 正常
< 1.4mg/dl
正常
~低比重尿・蛋白尿
(1.028~1.050)
なし
ステージ2 25% 正常
~軽度上昇
1.4~2.0mg/dl
低比重尿・蛋白尿
(1.017~1.032)
  • 軽度の高窒素血症
  • 臨床症状はなし、もしくは軽度(多飲多尿など)

 

ステージ3 < 10% 軽度
~中等度上昇
2.1~5.0mg/dl
低比重尿・蛋白尿
(1.012~1.021)
  • 中程度の高窒素血症
  • さまざまな臨床症状(食欲不振・体重減少・嘔吐・脱水など)
ステージ4 < 5% 重度上昇
5.0 < mg/dl
低比重尿・蛋白尿
(1.010~1.018)
  • 重度の高窒素血症
  • 全身性の臨床症状
  • 尿毒症

ステージ1では、尿の比重が低下しますが、臨床症状はみられず元気に過ごしています。そのため、腎不全の存在に飼い主はほとんど気がつきません。

ステージ2になると、初期症状の多飲多尿が現れてきます。腎機能が低下してくると尿を濃縮できなくなるため、薄い尿を大量にするようになります。そのため水分不足になり、水をたくさん飲むのです。この段階でもまだ食欲や元気があり、水をしっかり飲むことは元気な証拠と勘違いしてしまう飼い主もおり、なかなか異常に気がつかないことがあります。しかし、この時点で、腎臓の機能は1/4しか残っていないのです。

食欲不振や体重減少、嘔吐など明らかな症状がでてくるのは、ステージ3以降のことが多いようです。

なるべく早く腎臓病に気がつき、内科療法の中心となる食事療法を開始することが大切です。

慢性腎不全の食事について

 

食事管理をして腎臓に負担をかけないようにしましょう

慢性腎不全においては、食事療法によって慢性腎不全の進行を抑え、尿毒症の症状を予防・軽減することが可能です。特別な理由がなければ、成分が調整された療法食を使うのが良いでしょう。また、おやつやトッピングには、たっぷりなお肉や塩気の濃いものは避け、獣医師の指示に従いましょう。

また、尿の濃縮能が衰えると、水分を大量に尿として排泄してしまいます。脱水状態にならないために、常に新鮮な水を飲めるようにしておきましょう。

食事療法は、一般的に次のような栄養素が調整されています。

 リンの過剰摂取を避ける

  • リンの制限は最も重要です。リンを制限することにより生存率が長くなるという研究が多く報告されています。次のようなものはリンの含有量が高いので、控えるようにしましょう。【注意すべき高リン食品】
    骨、小魚、肉、食肉加工食品(ウィンナー、ハムなど)、乳製品など

 タンパク質の過剰摂取を避ける

  • 腎臓はタンパク質からの老廃物を排泄する働きをしますが、腎機能が低下すると老廃物が身体に溜まり尿毒症に進行してしまいます。初期の腎疾患で尿毒症の兆候がみられない場合にはタンパク質を過度に制限する必要はありませんが、ステージ3以降を目安に減らします。また、高品質で必須アミノ酸のバランスが整っているタンパク質源を選ぶことが大切です。

 ナトリウム(塩分)の量を調整する

  • 高血圧は腎不全の進行を進めてしまうため、ナトリウム(塩分)の過剰摂取を避ける必要があります。しかし、極端に制限すると、脱水を引き起こし、腎臓の血流量を低下させてしまい、かえって腎不全を進めてしまうことにもなります。次のようなものはナトリウム量がとても高いので、控えるようにしましょう。【注意すべき高ナトリウム食品】
    パン、チーズ、バター、食肉加工食品(ウィンナー、ハムなど)、魚肉加工食品(はんぺん、かまぼこ、さつま揚げなど)、干魚、調味料(コンソメ、ソース、ケチャップ、など)

 オメガ–3脂肪酸の調整

  • オメガ-3脂肪酸は抗炎症作用をもち、様々な部位の炎症の緩和に役立ちます。また血管拡張による降圧作用などの作用があり、腎機能の保護の目的で量が調整されています。魚油 亜麻仁油 、シソ油に多く含まれています。慢性腎不全が進行し老廃物が身体に溜まるようになると、胃腸障害や悪心などにより食欲が低下してきます。市販されている療法食は、嗜好性についてもよく研究され、また比較的高カロリーのものが多いです。しかし、それでも食べないケースがでてきます。そのような場合には、嗜好性を上げるコツ がありますので、かかりつけの獣医師と相談しつつ、試してみてください。食欲不振で食べない状態が続くと、体力が落ちて衰弱してしまうだけでなく、身体のタンパク質が利用されて腎臓にさらなる負担がかかります。そのような場合には、何よりも食べることが大切になります。とにかく何でも食べられる物を与えてみましょう。

【関連記事】食事を食べない老犬の食欲をうながす手作りごはんとおすすめ食材5つ

  • 腎臓のためのホリスティックケア

     

    ホームケアは無理のない範囲で行ってくださいね

     湯たんぽや温タオルなどで背中を優しく温める

    • 血行を促進して腎臓の働きを助けます。

     

     湯ツボマッサージを行う

    • 第2腰椎の背骨に沿って両側に腎兪(ジンユ)という、腎臓の機能を整えるための重要なツボがあります。パートナーのウエスト周辺の背骨両側を指先で10秒ほど軽く押したり、さするなどマッサージをすると良いでしょう。

    まとめ

    慢性腎不全は治らない病気です。少しでも早く気がついてケアをするためには、定期的検査が大切です。少なくとも成犬では1年に1回、シニア犬では半年に1回は、かかりつけの動物病院で診てもらうようにしましょう。

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伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー

伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー

1998年、日本獣医畜産大学(現在、日本獣医生命科学大学)獣医学科を卒業。動物病院や大手ペットフードメーカーでの勤務を経た後、GREEN DOGへ。現在は、スタッフ教育や商品の品質検証、オリジナルフードの製造に関わる。
伊東 希(いとう のぞみ) 獣医師、ホリスティックケア・カウンセラー

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