【犬との暮らし】都会の犬たち15~愛犬のことを知る
あなたは愛犬のことどれくらい知っていますか?当然、愛犬のことを一番よくわかっているのは飼い主さんのはずですが、わかっていると思っていても、意外と気づかないことがあったりします。今日はそんなところのお話です。
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パーソナルスペースってご存知ですか?
満員電車の中で、隣の人とすごく近接してしまうことは仕方のないことですが、エレベーターに後から乗ってきた人が、十分空いているのに自分に近づきすぎると嫌悪感を感じませんか。つまりこれ以上近づいて欲しくないと感じるエリアがパーソナルスペースです。
当然のことながら、相手によってもパーソナルスペースは変わってきます。知らない人やあまり好きではない人だったりすると、自分の傍に近寄って欲しくないと感じますが、親しい友人、家族、恋人だったりすればパーソナルスペースはどんどん狭くなっていきます。もちろん、親しくなっても自分のテリトリーをしっかり守りたい性格の人はいます。
犬にも同様にパーソナルスペースがあります。テリトリー意識とも言えるかもしれません。初対面の犬であれば、遠くに存在を見つけただけでも緊張して背中の毛が立ってしまったり、吠えだしてしまう犬もいれば、初めてでも気にせずそばを通り過ぎられる犬もいます。元々持っている個々の犬の性格の違いであったり、雌雄の差もあります。もちろんトレーニングによって学習した結果パーソナルスペースを狭くすることも可能です。ただこの場合は反応しないように教えられているためで、実のところ、犬としては気になっているかも知れません。
特に警戒心の強い犬は、遠く離れていても、あるいは遠くで吠えている声が聞こえただけでも反応してしまうことがあります。反応の意味は、「縄張りに入って来るな」という警告の吠えだったり、「こっちに来いよ!」という興奮した誘いの吠えの場合もあります。いずれにしても、愛犬が飼い主の傍でリードを引っ張りながら吠えてジタバタしているのを見るのは、飼い主的にも、周囲への迷惑を考えてもあまり好ましくはありませんね。パーソナルスペースが狭い方がいいと言うことではありませんが、愛犬のパーソナルスペースを知っておくことは無用なトラブルを避けるためには重要なポイントのひとつです。
ドッグランは危険がいっぱい
以前のコラムで、犬友達は必要だろうかと言うことについて書きました。単頭飼いの場合、どうしても他の犬との接触が少なくなり、「犬がかわいそう。」と思う方がいらっしゃるようです。しかし犬にも相性があるので、気に入らない相手であればいない方がいいと言うのが本音ではないでしょうか。
そんな愛犬をドッグランに連れて入った場合、うまくいけば気の合う相手と遊べるかもしれませんが、そうでなければ、逆に嫌な思いをして帰ってくるだけになってしまう可能性もあります。我が家の見習い犬ですら、入ってしばらくしたころ、ドッグランを仕切っているような小型犬に突然飛びかかられて怪我をするところでした。幸い彼は私しか見ていなかったので、大事には至りませんでしたが、反撃していたらと思うとひやっとします。
その小型犬の行為は完全に相手の犬(見習い)のパーソナルスペースを無視しているわけですからNGです。犬同士の挨拶すらなく、突然に飛びかかってくるなど言語道断。とは言え、中にはそういう犬同士のルールすら知らない犬がいるので、環境が整っていないドッグランに無防備に立ち入らないことも愛犬を守るためには必要かもしれません。そして本当に愛犬が犬友達を欲しているのかよく聞いてみてもいいでしょう。犬によっては、他の犬など眼中になく、飼い主さんだけいればいいと思っているタイプもいるからです。
都会は要注意
敢えてドッグランに立ち入らなかったとしても、都会において、散歩の途中道端で犬と遭遇する確率は非常に高いものです。我が家の界隈は住宅街とは言え道幅は狭く、表通りに出ても歩道の幅が狭いので、向かい合って遭遇してしまったときは逃げ場に困り、ときにはよそのお宅のカーポートに避難することもあります。
交差点で信号待ちをしているとき、反対側からこちらに向かってギャンギャン吠えている犬たちを見るとどこへ逃げようかと一瞬躊躇してしまいますが、そんなときでもご自身の犬のことを考えている方は自分の方から避けて行かれます。吠えている段階で犬にとっては相当のストレスがかかっているので、他の犬との距離を取って犬を落ち着かせることを選択されたのは素晴らしいことです。
一方、避ける場所が無いのに、自分の犬が反応しているところにずんずん接近してこられると本当に大変です。小型犬であれば、最悪抱きかかえてその場をしのぐことも可能ですが、中・大型犬の場合はなかなかそうはいきません。もちろん、気にせずスルー出来ればまったく問題ないのですが、さすがに狭い歩道ではすれ違う距離は数十センチと、犬たちにとってはかなりのストレスとなります。特に去勢していないオス同士の場合は気を付けなければいけません。
先日も角を曲がったところに信号待ちの犬がいました。幸いお互い過剰反応がなかったので、信号が変わって犬が去るのを待ってから通り抜けることにしました。出会いがしらにびっくりするのは人も犬も同じです。人であれば、「おっと、失礼。」と会釈して通り過ぎることができますが、犬同士の場合、「おまえ誰だ!?」となることもあります。そんなときでも、飼い主が平常心でさっさと歩いて脇を抜けて行けば犬も普通に通り過ぎることができる場合もありますが、敢えてリスクを冒すこともないと思えば、相手が行ってしまうのを待つというのもひとつです。
特に子犬は嬉しくて興奮してしまい、無防備に相手の犬に向かっていくこともあります。相手の犬がさらっと受け流してくれればいいですが、しつこくされるのが嫌いな犬の場合、一喝しないとも限りません。管理されたトレーニングの場所で経験させるのであれば問題ありませんが、道端の出会いがしらではいい勉強にはならないでしょう。
BATという手法
アメリカやカナダを初め、今や世界中に広められているBATという手法があります。これはGrisha Stewartという人が考案したBehavior Adjustment Treatment、つまり行動修正療法と言われるもので、過剰に反応してしまう犬たちに対し、力で制御するのではなく、犬に選択させることで、好ましくない行動を別の行動に変えていくというものです。
自分の愛犬にリハビリテーションが必要だとは誰も思いたくないものですが、もし他の子と著しく違って、他の犬や人、動くものなどなどに対して過剰反応が出る場合は、ただ「ダメ!」や「イケナイ!」を連呼するのではなく、その原因を探りながら、解決方法を見出し、リハビリテーションをおこなってみるというのも一つの選択肢です。
特に犬に対しての過剰反応の理由は、一方的な攻撃行動だけとは限りません。恐怖心だったり、遊びたいという興奮かもしれません。相手の犬によって状況が変わる場合もあります。単なる興奮であればトレーニングによって直すことは可能ですが、恐怖心や攻撃性の場合はトレーニングでは治せないこともあります。いずれにしても、そのまま放置しておけば、目が悪くなったり、耳が遠くなったりして、周囲の認識能力が落ちる年齢になるまで飼い主さんは息が付けないと言ってもいいでしょう。
おわりに
日常的に過密化している都会においての犬との生活は必要以上の気遣いが欠かせません。周囲の環境刺激を把握するだけでなく、愛犬の行動についてもよく知ることで、犬との暮らしはもっと素敵なものになるに違いありません。
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Follow @greendog_com三井 惇(みつい じゅん) CPDT-KA、ドッグトレーナー/ドッグダンスインストラクター、ホリスティックケア・カウンセラー
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