愛犬にも酵素?~酵素の種類と与え方(1)消化酵素編
愛犬の食事に「酵素」を意識してますか?手作り食派の飼い主さんの中では、生食はもちろんのこと、新鮮な野菜・果物や発酵食品を与える理由の一つになっています。
酵素というワードで最近よく目に入るのは、ダイエット用の酵素ドリンクや「酵素パワーでよく落ちる」という洗剤の広告ではないでしょうか。酵素とひとくちにいってもその種類は無数にあります。
今回は愛犬の健康に役立つ酵素はどういうものなのか、酵素の種類や役割、与え方についてペットフーディストの山本が2回に分けて説明します。
目次
酵素の種類と役割
酵素には、体内で作られるもの、体外から食べることで摂り入れるもの、があります。
動物の体の中で作られる体内酵素はタンパク質の一種。
私たちや愛犬は食物を体の中で消化、吸収、代謝し、最後は排泄します。このためには化学反応が必要でそのために酵素が使われます。つまり酵素がなくては生きていくことができないのです。「消化酵素」や「代謝酵素」と呼ばれるものです。ちなみに洗剤でいわれる酵素パワーとは、この消化酵素の働きを利用したものです。
食物から得られる(体の外から得る)体外酵素は、「食物酵素」のことです。こちらには消化酵素としての働きや、代謝酵素を助ける働きを持つものもあります。
消化酵素
食物を消化するための化学反応に必要な酵素。
食べ物を消化するために体内で分泌されるものです。食物酵素からも得られます。
代謝酵素
食物をエネルギーに変えるための化学反応に必要な酵素。
食物酵素
新鮮な食材(野菜、肉、魚)にたっぷり含まれます。消化酵素の働きや、代謝酵素を助けるために働く「補酵素」などが得られます。
最近は、昔から日本で食べられてきた伝統的な発酵食品(みそ、納豆、漬物)が酵素を得られる食材として注目されていますね。犬用の発酵食品もたくさん見かけるようになりました。
消化酵素について
今回は消化を助ける酵素について注目します。愛犬の消化能力が気になるときに役立ちますよ。
消化酵素は食べ物を消化するために必要なものです。
食物が口から入ると、歯で噛んだり、胃の中で攪拌(かくはん)したり、物理的な消化が始まりますが、その後は腸粘膜や血管の壁から吸収できるくらいに小さくするために化学的な消化が必要なんです。
そのために唾液、胃液、膵液、小腸粘膜からたくさんの種類の消化酵素が分泌されます。また、食事から摂れる食物酵素の中にも消化を助けてくれるものがあります。
体内で作られる消化酵素
- 炭水化物(でんぷん)分解酵素
唾液や膵液に含まれるアミラーゼなど - タンパク質を分解酵素
胃液に含まれるペプシン、ペプチターゼ
膵液に含まれるプロテアーゼ、トリプシン・キモトプシンなど - 脂質分解酵素
膵液に含まれるリパーゼなど
食物に含まれる消化酵素(食物酵素)
- 炭水化物(でんぷん)分解酵素
アミラーゼ(山芋)、ジアスターゼ(大根やキャベツ) - タンパク質分解酵素
プロテアーゼ(キウイフルーツ、パイナップル、りんご、納豆、大根、マイタケ、きゅうり)
ナットウキナーゼ(納豆) - 脂質分解酵素
リパーゼ(大根、グレープフルーツ、ニンジン、セロリ、きゅうり)
消化酵素の選び方と与え方
愛犬のお腹の調子が気になるタイミングはたくさんあります。
- もともとお腹が弱い体質
- 胃炎や膵炎を起こした
- 老齢により消化吸収能力が衰えてきた
- フードの切り替え時
- 気候の変化
- ストレス時
- 草を食べたがる
などなど
ちょっとしたことで下痢や軟便が起きやすい、病院では特に問題は見つからないがお腹が弱いというタイプにはサプリメントがおすすめです。病院で処方されるものがあればそれを優先して与えてください。消化酵素のサプリメントも原材料がさまざまであり、どれが合うかは愛犬の体質によるからです。
消化酵素のサプリメント
サプリメントにはミルク風味で嗜好性の高いものもあります。愛犬の好みも考えながら選ぶと良いでしょう。消化酵素のサプリメントはフード(食事)に混ぜて与えます。
ここでご紹介する参考商品はタンパク質、脂質、炭水化物(でんぷん)の消化能力の維持に役立つよう考えられたサプリメントです。
参考商品
消化を助ける食物酵素の与え方と注意点
サプリメントを使うほどではない場合、日々の健康のために新鮮な野菜や果物を利用するのはおすすめです。ですが、与え方には少し注意しましょう。
消化酵素を含むといっても、果物は糖質が多いですし野菜やキノコ類の繊維質が犬にとって消化がよくありません。
おすすめの利用方法は、生の状態ですりおろして与えられるものを選ぶことです。たとえば、キウイフルーツやリンゴ、大根、キュウリなどは愛犬にも与えやすいですね。
ドッグフードに混ぜて与えると良いでしょう。目安の量は1食につき小型犬なら小さじ1杯くらいです。
手作り食であれば、調理前の肉にキウイフルーツやリンゴ、マイタケを刻んだり、すりおろしたりしたものを混ぜておくと柔らかくなりますよ。前日の晩に混ぜて冷蔵保存すると良いでしょう。(調理前30分からでも違いがわかります)
少しずつ与えてみて食べっぷりや翌日の便の状態を観察して調整してくださいね。
※酵素は50℃以上では働きを失いますので、食物酵素を摂り入れたいときは食品を生のまま、もしくは低温調理にて使用します。
まとめ
数ある酵素の中でも今回は消化に役立つ酵素について説明しました。消化酵素のサプリメント、食物酵素、どちらも愛犬の状態によって選んでみてくださいね。
しっかりと食物の栄養を消化吸収できることが健康の基本。消化能力が気になるときは酵素を意識してみてくださいね。ご家族の食事にもいかがでしょう。私は安くて硬いお肉を買ったときは、果物を混ぜて柔らかくなるよう調理します。ちょっとお高めのお肉のように変化しますよ。もちろん家族にお値段のことは内緒です。
次回は愛犬の代謝に関わる酵素についてお伝えいたしますので、ぜひお楽しみに。そして愛犬の健康に役立てていただけますように。
【参考】
ペットフーディスト養成講座テキスト
日本栄養・食糧学会誌
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Follow @greendog_com山本 由能(やまもと ゆの) ペットフーディスト、ペット栄養管理士、犬の食事療法インストラクター上級師範
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