狂犬病のない国に住む私たちが知っておきたい狂犬病の話
ケーナイン・ストレスケア・スペシャリストの清水です。
日本は現在、狂犬病の発症がない国の1つであり、狂犬病はどこか遠くの国のものと感じている方も多いのではないでしょうか。しかし令和元年5月11日、同じく狂犬病の発症がない国であるノルウェー出身の女性が狂犬病によって短い生涯を終えたと発表されました。原因は旅先のフィリピンで助けた仔犬に噛まれたことによる感染だと言われています。
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狂犬病の発症がない国は世界でも11か国しかない
冒頭で紹介したノルウェーは、狂犬病の発症がない国の1つであり、ノルウェー以外では、10か国しかありません。スウェーデン、アイスランド、英国、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、日本、グアム、ハワイ、フィジー諸島です。狂犬病は100%コントロールされている国の方が圧倒的に少ないのです。
日本においては、狂犬病予防法(1950年制定、1998年最新改正)の効果もあり、1957年に猫での発生を最後に報告されていません。しかし、世界保健機関(WHO)によると、世界中で1年間に5万5千人もの人が狂犬病により死亡しているとされています。
狂犬病は発病するとほぼ100%死に至る
狂犬病は、ラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルス (Rabies virus)に感染する事で罹患する、人間を含むほとんどの哺乳類が感染する疾患です。このウイルスには、7つの遺伝子型があり、感染している哺乳類の動物(アライグマ、スカンク、キツネ、コウモリなど)から噛まれたりすることで唾液に含まれるウイルスが移り、罹患します。そして、噛まれた部位によって、15~60日の潜伏期間をおいて発病します。発病すると治療法は無く、ほぼ100%の致死率です。人間の場合、感染しても発病前であれば、継続的なワクチン接種によって発病を防ぐことが出来ます。
あまりにも強い苦痛を伴うため、国によっては安楽死をすることも
このウイルスの影響によってさまざまな症状が現れ、前駆(ぜんく)期、狂躁(きょうそう)期と麻痺(まひ)期と分かれています。ウイルスは神経繊維を通って中枢神経に入り、最終的には脳神経細胞を変化させていきます。
前駆期には、風邪に似た症状が診られ、発熱や倦怠感、筋の痛み、疲労感、食欲不振、吐き気、嘔吐、咽頭痛、空咳などが観察されます。イヌでは、いつもよりも動きが鈍い、性格の変化と異常行動の観察、食欲不振などが見受けられます。
その後、狂躁期に入ると、落ち着きがなく極度の興奮が見られ、性格がより凶暴化します。痙攣発作も発生し、かなり危険な状態となります。
そして、強い不安が伴う麻痺期に移行し、後半身の麻痺から運動障害が始まり、前半身に移行してきます。また、喉の筋肉が痙攣し、水や食べ物も飲み込めなくなります。
このステージで水を見ると首が痙攣する狂水症や冷たい風を浴びると同じく首が痙攣する狂風症も観察されます。そして、多くの場合、最終的には全身を強い痙攣が襲い、呼吸障害を併発し死亡します。
必ず死に至るという事もそうですが、多くの苦痛を伴い、いつもの愛犬の性格ではない形での最期とは非常に辛いものです。福祉的にも強い苦痛を共なう死となることが予想されるため、また感染の拡大ということも考慮し、感染または発病した段階で安楽死を選ぶ国もあるそうです。
最後に
日本において犬を触る場合はそこまで心配はいりませんが、他の予防接種も愛犬を守る大切な盾です。また重大な飼い主の責任でもあります。より長く楽しい時間を過ごすためにも、予防接種はきちんと行いたいものですね。それが、愛犬と“笑顔”で過ごす秘訣の一つですね!また、海外では無暗に動物を触ることは避け、しっかりと防衛したいものですね。
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