2019.06.07一緒に。もっと、

犬のウンチは分解されない?愛犬と自然を楽しむときに忘れずにいたいこと

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犬のウンチは分解されない?愛犬と自然を楽しむときに忘れずにいたいこと

夏が近づいて来ると旅行やレジャーの予定を立てたくなりますね。愛犬と一緒に山や海に出かけるという方も多いかと思います。
そんな時にちょっと心に留めておいていただきたいリサーチや研究の報告があります。
遊びに行くのに大袈裟なことを言っているように聞こえるかもしれませんが、知っておくことで、心の持ちようが変わるかもしれません。

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犬は野生動物や自然環境にとって脅威になり得る

犬のウンチは分解されない?愛犬と自然を楽しむときに忘れずにいたいこと

自然科学者によると、過去にほぼ12種類の野鳥や野生動物が犬によって絶滅に追いやられたと言われています。
そして現在では、犬の存在は世界中で約200種の生物にとって脅威となっているということです。

最近ではチリのアンドレス・ベジョ大学とアメリカの研究者が共同でリサーチした、野生動物に対する放し飼いの犬の影響が発表されています。
チリの農村地域では、捨てられたり逃げたりして野生化した犬と放し飼いの犬の両方がおり、どちらも野生動物の生活を脅かしています。
犬が小型の鹿などの草食動物を捕食したり、そのことが他の野生の肉食獣の獲物を奪うことになっているという問題です。
犬は自然界の食物連鎖に組み込まれた動物ではありませんから、犬が野生動物を捕食することは生態系を乱すことにつながります。

直接的な攻撃だけが問題ではないということ

実は自然環境に対しては犬が野生動物を直接襲撃するよりも重大な影響を与えている問題があります。
それは世界各地で起こっている、犬から野生動物への病気の感染です。
症状と数が深刻なのは狂犬病やジステンパーです。アフリカ大陸や南アジア地域で犬から野生動物に感染したと思われ、定期的に流行しています。

またヨーロッパなどではオオカミやコヨーテなどのイヌ科の野生動物と犬が交配して、種の保存に影響を与えてしまうことも懸念されています。

そしてこれらの問題は、人口が増えて、それに比例して犬の数が増えるとともに顕著になっています。
犬がもたらす問題は人間がもたらす問題でもあるのです。

犬は食物連鎖や自然のサイクルの外で生きる動物

犬のウンチは分解されない?愛犬と自然を楽しむときに忘れずにいたいこと

犬が野生動物や自然環境を脅かす存在にもなる例として上に挙げたのはどれもちょっと極端な例です。
夏休みに犬と一緒に自然の中に出かけて行くのとは別の次元の話に見えるかもしれません。

しかしポイントとなるのは「犬は食物連鎖や自然のサイクルに組み込まれた動物ではない」ということです。

例えば、普段街の中で散歩をしている時にはきちんとウンチを持ち帰るという人も「自然の中では分解されてしまうだろうから」と普段よりもちょっと気持ちが緩むという場合もあるでしょう。
けれども犬の排泄物は自然の中にあるもので出来ていません。
人間と暮らす多くの犬が食べているドッグフードには防腐剤が使用されているものもあり、これらは自然界では分解できません。
また総合栄養食でもあるドッグフードを食べている犬の排泄物には、大量の窒素やリンが含まれます。窒素やリンは化学肥料の主成分でもありますが、そのような極端に栄養豊富な物質が自然の中に残されると土中の微生物や植物の分布を変化させてしまい、河川や海に流れ込んだ時にはアオコや赤潮の原因にもなります。
野生動物の排泄物は、そこに存在するものを食べ、また自然に返して微生物が分解するというサイクルがありますが、犬はこのサイクルの外の生き物です。
ドッグフード以外のものを食べている場合でも、緩やかとは言え同じようなことが起こります。
分解しきれない排泄物には大腸菌や寄生虫も含まれるため、放置すれば野生動物に病気を媒介することもあり得ます。

ウンチだけでなく、犬のオシッコが自然環境に与える影響もつい最近アメリカのコロンビア大学の研究チームによってリサーチ結果が発表されています。
犬がオシッコをする場所では、土壌中の微生物叢の多様性が著しく減少し、尿中の窒素と低pHのために土壌が硬くなって吸水性が低下してしまうということでした。

捕食まではしなくても、犬が野鳥や野生動物を追いかけることも自然環境へのインパクトになります。

犬は人間と同じように自然環境の外の生き物だということをしっかりと認識しておくことで、自然の中に出かける時に尊重しなくてはならないこと、責任を持つべきことがクリアになるのではないでしょうか。

おわりに

ちょっと説教くさいお話になってしまって恐縮です。
私たちは大切な愛犬と山や海に出かける時に、犬が怪我をしたり病気に感染したりしないようにすることには注意を払います。それはもちろんとても大切なことで、おろそかには出来ません。
しかし愛犬が自然に対して作り出す影響についても知っておくこと、心に留めておくことが大切です。

自然の中で遊ぶ犬を見ることは微笑ましく嬉しいことですが、大切なパートナーである愛犬を自然破壊の原因にしないこともまた愛情ではないかと思います。

《参考URL》
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0301479718306777
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11252-019-00842-0

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ガニング 亜紀(ガニング アキ)

米国カリフォルニア州在住。2005年から犬との暮らしをスタートして2匹の犬をそれぞれ15歳で見送りました。犬たちとの16年間で知識が増えると犬との暮らしが楽になることを痛感しました。自分が「へ〜!」と感じたことを堅苦しくなくお伝えしていきたいと思っています。