2022.09.15一緒に。もっと、

知っておきたい!犬の腸内細菌が体と心に及ぼす影響とは?

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知っておきたい!犬の腸内細菌が体と心に及ぼす影響とは?
犬と暮らしている人にとって毎日とても気になることのひとつに愛犬のウンチの状態があるかと思います。そのウンチの状態を左右するのが腸内環境であるということは一般によく知られています。

人間と同じように犬の大腸の中にもたくさんの種類の細菌が住んでおり、その分布のバランスによって腸内の環境が決まります。犬の腸内細菌についての研究は近年大きく進んで、いろいろなことが明らかになっています。知っておくと愛犬のフードを選ぶ時に役立ったり、普段食べているフードの内容がよくわかるようになることもあります。

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犬の腸内細菌たちは思っているよりもフレキシブル

知っておきたい!犬の腸内細菌が体と心に及ぼす影響とは?
犬の腸内環境のことを考える時、最初に頭に浮かぶのは食べ物ではないでしょうか。何を食べているのかは腸内細菌の種類や分布にダイレクトに反映されます。

犬が生活している国によって食べているものに大きな違いがある場合、当然ながら大腸内に住んでいる細菌の種類や分布も大きく変わりますが、バランス良く栄養を摂っていればその機能には大きな違いがないことがわかっています。

食べ物の種類の違いという身近な例では、ドッグフードを変更するという場合があります。一般的にドッグフードを切り替える時には新しいフードを少しずつ混ぜてだんだん割合を増やしていき1~2週間かけて完了することが勧められています。これも元々お腹の中にいる微生物への影響と代謝物質が変わるのを考慮してのことです。
フードを変更した時に腸内の微生物や代謝物質が入れ替わるのにどのくらいの期間が必要なのか、アメリカのイリノイ大学の栄養科学の研究者が調査結果を報告しています。

普段はドライフードを食べている健康な4~5歳のビーグル12頭の食事を2週間おきに高タンパク高脂肪のウェットフードまたは水溶性食物繊維を添加したドライフードに切り替えて、便サンプル中の細菌種と代謝物が分析観察されました。その結果は、なんと腸内細菌の多様性や分布の変化はたった6日間で完了し安定していたそうです。

もちろん実際にフードを変更する時には犬の体質などを考慮して慎重に切り替えた方が良いのですが、犬の腸内の微生物たちは食事の切り替えという変化に意外とフレキシブルに対応して機能を保っているようです。

腸内環境は犬の心や認知機能にも関連している

知っておきたい!犬の腸内細菌が体と心に及ぼす影響とは?
腸内の環境は体の健康だけでなく、認知機能や攻撃性に関連していることもわかっています。
2021年にハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の研究者が犬の腸内細菌の構成は記憶力と関連があることを報告しています。
研究に参加した犬の便サンプルの細菌種を分析したところ、年齢が上がるほど腸内の細菌種のうち健康に有益なフソバクテリアの数が少なくなっていました。

また参加した犬たちは記憶能力のテストを受けたのですが、テストの成績が悪かった犬は腸内のアクチノバクテリアの数が多かったこともわかりました。人間ではアルツハイマー病の人でアクチノバクテリアが多いことがわかっています。
記憶力という腸内環境とは一見関係のなさそうなことが、このように関連しているというのは興味深いですね。

2018年にはアメリカのオレゴン州立大学の研究者が犬の攻撃性と腸内細菌の分布との関連を発表しています。攻撃性があると判断された犬とそうでない犬の便サンプルから腸内細菌の種類を分析したところ、攻撃性のあるグループではフィルミクテス門の細菌が豊富で、攻撃性のないグループではフソバクテリア門とプロテオバクテリア門が豊富でした。犬たちは同じ施設で飼育されて同じものを食べていたので、食べ物によって腸内細菌に違いが出たわけではありません。

これに応えるように2020年にはイタリアのボローニャ大学の研究チームが、攻撃的行動のある犬、恐怖症のある犬、どちらもない犬のグループの腸内細菌とストレスに関連するホルモン値を分析した結果を発表しています。
3つのグループの犬たちの腸内細菌の分布はそれぞれに違う特徴を示していました。ホルモン値の測定結果は、長期的なストレスが腸内細菌の構成に影響を及ぼす可能性を示していました。

犬の攻撃的な行動は恐怖心から来ていることが多いものです。攻撃性も恐怖症も「怖い」というストレスを長期的に感じていると考えると、特徴的な腸内環境になるのも合点が行きますね。
食べ物だけでなく、犬の生活に慢性的なストレスを持たせないことが健康な腸内環境と健康な行動につながると言えます。

フードの原材料の中で腸内環境を整えるものは何?

知っておきたい!犬の腸内細菌が体と心に及ぼす影響とは?
腸内細菌が犬の身体と心と密接に結びついていることを頭に置いておくと、フードの原材料一覧を見る時や、トッピングを選ぶ時にも参考になるかと思います。

腸内細菌が体全体に影響を及ぼすのは、細菌たちが代謝する乳酸や酪酸、ビタミン類によるものです。これらの代謝物質は消化器官の健康だけでなく、免疫機能のサポートや神経伝達物質の合成に重要な役割を果たしています。

これらを効果的に摂取する目的で使用されているドッグフードの原材料があります。代表的なものは原材料一覧の最後の方に『エンテロコッカスフェシウム菌』『ラクトバチルス』などの名前で表記されている腸内で働く細菌、いわゆるプロバイオティクスと呼ばれるものです。

細菌が腸内に定住して犬の身体に有益な物質を代謝するためにはエサが必要です。これには食物繊維(特に水溶性食物繊維)が大きな役割を果たしてくれます。ドッグフードの原材料ではビートパルプ、トマトポマースが不溶性と水溶性両方の食物繊維を含みます。イヌリンやオリゴ糖は腸内細菌のエサとして理想的な水溶性食物繊維です。

フードの原材料で水溶性食物繊維を含むものと言えば他には、大麦やオート麦、豆類、芋類、海藻類、果物、亜麻仁、酵母などがあります。原材料一覧を見る時の参考になさってください。

おわりに

腸内環境を構成する腸内細菌は犬のお腹の調子だけでなく、体と心全体に影響を及ぼしていることをご紹介しました。
愛犬が毎日健康的なウンチをすることはとても重要ですが、腸内細菌や食物繊維の働きはそれだけではなく、体の機能の全てに関係すると言っても過言ではありません。愛犬の食事について、ちょっと違う見え方ができそうですね。

《参考URL》
https://animalmicrobiome.biomedcentral.com/articles/10.1186/s42523-022-00194-9
https://www.mdpi.com/2076-2615/10/9/1488
https://peerj.com/articles/6103/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6994854/

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ガニング 亜紀(ガニング アキ)

米国カリフォルニア州在住。2005年から犬との暮らしをスタートして2匹の犬をそれぞれ15歳で見送りました。犬たちとの16年間で知識が増えると犬との暮らしが楽になることを痛感しました。自分が「へ〜!」と感じたことを堅苦しくなくお伝えしていきたいと思っています。