よくある「犬の社会化」の誤解とは?飼い主が知っておくべき正しい目的と意味
「犬の社会化」という言葉は今ではかなり広く知られるようになっており、多くの飼い主さんが犬の社会化は大切だという認識を持っています。
でも、この「社会化」という言葉、一見簡単なように見えますが具体的にどういうことかと聞かれると「さて?」と軽く混乱してしまう方もいるかもしれません。
「社会化」は元々は社会学という学問の用語で、日常会話の中でよく使う言葉ではありませんから混乱するのも無理はないですね。
そこで犬の社会化について、その目標とするところや意味を日常の言葉で考えてみたいと思います。
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そもそも社会化ってなんだろう?
「犬の社会化」という言葉を検索すると、きちんとした詳しい説明がたくさん見つかります。その詳しさのために情報量に圧倒されてしまう方もいるかと思います。実は私もそうでした。社会化をはじめとして犬のトレーニングの用語は日常生活で使う言葉とかけ離れていて、普通の言葉に置き換えてくれないかなあといつも思っていました。
とは言え、言葉の正しい定義は理解のための大前提でとても重要です。アメリカ獣医師会が普通の言葉で端的に「社会化」を説明しているものがありますので引用してみます。
「社会化とは、犬や猫が他の動物や人との交流、場所や活動を楽しんで快適に過ごせるようにするための準備のことです。」
どうでしょう?かなりわかりやすくなりましたね。
さらにもっと簡単に言えば、社会化とは犬に「世界は怖い場所ではないよ」と教えてあげること、成功体験を重ねるためのサポートとも言えます。
社会化のプロセスを詳しく説明した書籍を読んだり、セミナーを受けたりする場合にも「他の動物や人と楽しく過ごせるよう、いろんな場所で快適に過ごせるよう、さまざまな活動を楽しめるようにする準備なのだな」ということを、しっかりと頭に置いておくと理解がしやすくなるかと思います。
よくある社会化についての誤解
多くの飼い主さんが「犬には社会化が必要」ということをご存じですが、社会化というものを間違って理解している場合もあります。間違いの度合いや方向性によっては、他の犬や人間を怖がるようになったり、知らない場所や活動にストレスを感じるようにもなりかねません。
よくある間違いのひとつは「社会化」と「社交的」の混同です。他の犬に慣れることが大切だからとドッグランに連れて行って知らない犬たちの集団にポンと入れてしまったり、たくさんの人間に慣れるようにといきなり人混みに連れ出したりしてしまう例は少なくありません。
これでは「他の動物や人との交流を楽しんで快適に過ごせるようにするための準備」とは言えませんね。例えて言えば、全く面識のない人たちがワイワイ盛り上がっているパーティーの場にいきなり1人きりで置いていかれるようなものです。
トレーニングの教室に通う際も、必ずしもグループレッスンが社会化の役に立つとは限りません。他の犬との関わり合いの経験が少ない犬や、他の犬がいると興奮し過ぎる犬の場合は、個別レッスンで自信をつけることが社会化の近道になります。
初対面の犬とちょっと嗅ぎ合ってスムーズに離れた、初めてタイルの床を歩いた、近所の人に「かわいいね」と撫でてもらった、このような経験の直後にはご褒美のトリーツを与えます。
新しい経験を「楽しい」「快適」「怖くない」「できると良いことがある」と知り学ぶことが、成功体験の積み重ねになっていきます。
犬に選択の余地はありますか?
「犬の社会化のために」と考えて何かをする場合、常に犬の状態を最優先するつもりでいなくてはなりません。「嫌がっているけれどせっかく車で遠出してきたのだから、ちょっと我慢してもらおう」とか「初めて会った犬を怖がっているけれど、もう少し飼い主さんと話がしたいのでちょっと待って」という態度は悪影響になります。
優先するべき自分の都合がある場合、犬にはおうちで待っていてもらいましょう。
また心に留めておきたいポイントとして、ある行動を犬が自主的に選べるかどうかという点があります。
初対面の人や犬にあいさつする時、ドッグランに行った時、ドッグカフェに入った時、犬にはその場を離れるという選択の余地があるでしょうか?
新しい経験を快適で楽しいと感じさせるためには犬自身に選択肢が与えられていることがとても大切です。嫌だと思ったらその場を離れることを選べる安心感、それに応えてくれる人への信頼感は犬との関係の基本です。
新しい経験は犬にとっては挑戦でもあります。社会化の目標は犬が「挑戦に成功した」と感じられるようにすることです。犬のキャパシティを超えた挑戦は逆効果になってしまいます。
犬のキャパシティがいっぱいになっているかどうかがわからない時には「おすわり」など基本的で絶対にできることのキューを出してみます。ソワソワしてできなかったり、できても目が泳いでいたりといつもと違う様子の時にはキャパシティを超えていると判断してその場を離れます。そのためにも自宅など安全な場所で簡単で基本的なキューをマスターしておく必要があります。
おわりに
犬の社会化という、身近なようでいて少々とっつきにくいテーマについて考えてみました。
社会化は全ての犬にとって必要です。けれど今目の前にいる愛犬にとって「今どのくらいの量の社会化が必要なのか」を間違えないようにしなくてはいけません。自動車教習所に通い始めた初日に、高速道路で車線合流の練習をしないのと同じです。
具体的なトレーニング方法を勉強する際にも、ドッグトレーナーに依頼するとしても、社会化の目標とするところや基本的なポイントを知っておくと迷いや悩みが軽減されるはずです。
《参考URL》
https://www.avma.org/resources-tools/animal-health-and-welfare/socialization-dogs-and-cats
https://www.avma.org/resources-tools/literature-reviews/welfare-implications-socialization-puppies-and-kittens
【関連記事】【犬との暮らし】都会の犬たち17~子犬を迎えたら必ず行いたい「社会化」について
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