2019.09.13一緒に。もっと、

なぜ犬に「選ぶ自由」を与えることが大切なのでしょうか?

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おもちゃくわえた黒ラブ

犬のトレーニングとして懲罰方式や犬に行動を強制する方法をとる人はかなり少なくなってきた感があります。またそれらに代わる方法を伝える言葉や説明も、以前に比べて分かりやすく、犬を尊重するものが増えて来ています。
犬を尊重することを説明する言葉として、この数年よく目にするようになったものに「チョイス、選択」があります。
「あなたの犬に選ぶ自由を与えていますか?」「犬が自分で選ぶことが大切です」と表現される、犬が選ぶということについて考えてみたいと思います。

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選択の自由を取り上げることはトラウマになる

伏せをするパグ
犬が何かを自分で選ぶということについて、私が以前とてもショックを受けた言葉があります。
それはアメリカのミネソタ州で活動しているドッグトレーナー、サラ・ロイシュ氏の言葉で次のようなものでした。
「どんな哺乳動物でも心にトラウマを植え付けるのに手っ取り早い方法のひとつは、全ての選択肢を取り上げてしまうことです」
犬にとっても自分で選ぶということはそんなにも重要なことなんだ!と、それまでそんなことを考えたことがなかったのもショックを受けた理由の一つです。
生活の中の何も自分で選べない、全てが他者によって決められるというのは、確かに自分に置き換えてみると大きな苦痛であることがわかります。

人と暮らしている犬の生活の中の選択は、ほとんどが人によって行われます。何を食べるのか、いつ散歩に行くのか、いつ遊ぶのか、留守番の時間の長さ、暑さ寒さの調節などは人間が決めなくては仕方ありません。
それなら、その他の人間が決めなくても良い部分は犬に選ぶ自由があるのがフェアというものです。

例えば、散歩中に分かれ道で右に行くのか左に行くのか、どのおもちゃで遊びたいのか、夜はどこで眠りたいのか、家族と一緒にいたいのか静かに離れていたいのか、そういう小さい選択の積み重ねを犬に任せることは、犬の精神の安定のためにとても重要です。

犬に選ぶ自由を与えられるトレーニングやアクティビティ

匂いを嗅ぐヨーキー
犬のトレーニングの一環で、最近よく見聞きするようになったハズバンダリートレーニングというものがあります。

日本では、動物園や水族館などで、動物たちの健康管理のための訓練として広く普及しています。例えば、麻酔で無理やり眠らせて健康診断をするのではなく、こちらが指示する姿勢になってくれたらトリーツなどの良いことがあると学習してもらうことで動物に負担をかけない診断をすることができます。

訓練の手法は「望ましい行動をすれば良いこと(トリーツなど)がある」と学習することで望ましい行動を増やしていくというものですが、これも言い換えれば動物に選ぶ自由を与えるということです。

犬の爪切りのトレーニングを例にとりましょう。
まずは爪切りのことは忘れて、犬の大好きなトリーツを持って犬から少し離れたところに座ります。
犬がこちらに近づいてくることを選択すればトリーツを与えます。
犬の足に手を伸ばして、犬が逃げないことを選択すればトリーツ。逃げた場合にはその選択を尊重します。
段階を踏んで、犬が足に触られること対してOKと選択すればトリーツ。触らないで!NO!を選択すれば、何もしないで引き下がる。トリーツもなし。
各段階で犬がOKの選択をすれば「良いこと(トリーツ)」が待っていて、NOを選択すれば犬にとって嫌なことが起こらない、これを繰り返していきます。

ハズバンダリートレーニングは、爪切りやトリミングなどのイベントに参加するか否かを犬自身が選び、人間は犬の選択を尊重しながら参加を選んでもらえるよう根気よく条件付けをしていくものとも言えますね。

ノーズワークも広義の意味で、犬に選ぶ自由を与えるアクティビティです。他のトレーニングや競技と違って人間の指示で動くのではなく、嗅覚を使って自主的に動くというのは次の行動を自分で選択して行くことの連続です。
嗅覚という犬にとって最も大切とも言える感覚を使うことに加えて、選択を繰り返していくという点でもノーズワークの有効性がわかります。

【関連記事】ノーズワークに関する記事はこちら

選ぶことは、自分に環境を変える力があるという自信につながる

見上げる犬
「犬に自分で選択なんてさせるとワガママになってしまうのでは?」と思う方もいるでしょう。
けれども実際には、選ぶ自由があって何を選べば楽しいことがあるのかを学習し、どんな選択をしても人間がそれを受け入れることを経験していくと、犬は自分の周りの環境を自分で選択できる=自分には環境を変える力があるということを知っていきます。
それは自信につながり、攻撃的にならなくても人間は嫌なことをしないという信頼にもつながります。
自信のある犬は、ストレスを溜め込まず、何かに怯えることも少ないので、人間にとって問題だとされる行動も減っていきます。

犬に選ぶ自由を与えることは、犬の生活の質や福祉向上のためにも、人間のためにも大きなメリットのあることなのです。

おわりに

走る白チワワ
犬が自分で何かを選ぶということについて、なぜそれが大切なのか、どういう意味があるのかを考えてみました。

一昔前ならば一笑に付されたかもしれないテーマです。現在でも眉をひそめる人もいるかもしれません。
でもパピーミルなどで繁殖に使われている、寝る場所も運動も排泄も一切選択の余地がない犬たちを思い浮かべると、選択できることの大切さが身に沁みる気がします。
家庭で飼われている犬でも、外の小屋につながれたままで散歩は近所をワンブロックほど回ってくるだけという状態では、犬が何かを選択することなどないし、自信も信頼も築かれることはないでしょう。

前述のサラ・ロイシュ氏の言葉に衝撃を受けてから、私も意識して我が家の犬たちに自分で何かを選ばせるようにしています。自信をつけたのか、信頼関係が強くなったのかはあまりよく分かりませんが、自分で何かを決めた後の犬たちは明らかに楽しそうで満足した様子です。
犬が自分で選ぶ自由、まだの方はぜひ一度試してみてください。

《参考URL》
https://paws4udogs.wordpress.com
https://positively.com/contributors/choices-do-you-offer-them-to-your-dog
https://www.psychologytoday.com/intl/blog/animal-emotions/201905/dogs-need-together-time-and-alone-time-just-us

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ガニング 亜紀(ガニング アキ)

ガニング 亜紀(ガニング アキ)

南カリフォルニアにて、12歳のドーベルマンミックスと11歳のミニピンと暮らしています。2011年から6年間ブログメディアdog actuallyに執筆しておりました。 アメリカのユニークなペットフード事情や、犬の心と体のケアに関する情報の中から日本の犬たちにも役に立つものをお伝えしていきたいと思います。