2022.12.05一緒に。もっと、

北欧スウェーデンの子犬育て③~ブリーダーと交わす契約書!~

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北欧スウェーデンの子犬育て③~ブリーダーと交わす契約書!~

Photo by Eusebio Perdiguero
文と写真:藤田りか子

本シリーズでは、スウェーデンにおける子犬探し&子犬育て事情について紹介します。全てが日本の状況にマッチするわけではありませんが、子犬をめぐる環境が少しでもよくなるよう、本シリーズがその参考になれば幸いです。

子犬を迎える日がやってきた!

前回からの続きです。いよいよ子犬を迎える日がやってきました。車の荷台の部分に木製の箱を置いて、フカフカの毛布を敷いて車の旅の用意完了。我が家の車は当時スウェーデンの犬飼い主の間で人気があったボルボ・エステート245。こちらでは「庶民のコンテナ車」などと呼ばれ、本当にコンテナのごとく長方形の箱のような車、間取りが広々としています。これだけ広さがあれば、大型犬のでっかい子犬も余裕!

犬舎GのブリーダーMさん宅につくと、まずはフィーカの時間となりました。フィーカというのはスウェーデン語でいわば「お茶をする」という時間。最近では日本でも聞く言葉ですね。スウェーデンではたいていコーヒーを飲みます。そしてシナモンロールやマフィンがともに出てきたりします。お茶がでてきたらケーキ、という日本の感覚とほぼ同じ。我々も車で4時間の運転をしてきたので、このような一服タイムはありがたいです。とりあえずこうやって一息つかせてもらえるのも、スウェーデンらしい「ゆったり感」です。

ブリーダーと交わす契約書

フィーカをしながら、子犬をめぐっての今後についていろいろなアドバイスをもらいます。次の予防接種をする時期、あたえるべきフードの銘柄、犬の保険の加入、さらにはトレーニングなどなど!そしてフィーカが終わり、「では始めましょう」とテーブルに書類があらわれました。

「子犬の購入契約」
と書いてあります。これは、ブリーダーから子犬の購入者に対して子犬が売られました、を約束する契約書です。スウェーデンケネルクラブが出しているもので、ケネルクラブで公認を受けたブリーダーは、商業的ブリーダーあるいはホビーブリーダーであるかに関係なく、この契約書を子犬の買い手と交わすことを義務として課されています。

ここには、いくつかのブリーダーとしての責任も記されています。まず子犬を譲渡する7日以内において獣医による健康診断を受けているか、ワクチン接種は済んでいるか、IDチップ(当時は耳のタトゥーでしたが)がついているか、について記されています。ところで譲渡時には一見健全に見えたものの、実は子犬に隠された疾病があったりすることがあります。それが3歳になるまでに発病した場合、ブリーダーは医療費を負担する、ということも記されています。そのためにブリーダーはこのリスクを回避するための保険に必ず入っています。

さてMさんは、私に渡すべく子犬を仰向けにしてお腹を見せてくれました。
「ほら、ここ、出べそになっているでしょ?でも多分、大丈夫。おそらく気にするべくものじゃないと思うのよ」
いわゆる臍(へそ)ヘルニアの可能性をMさんはあらかじめ説明してくれたのだと今になっては思います。実はこれも、ケネルクラブの決まりにありました。購入者が購入前に知っておくべき子犬の特徴や欠陥について知っているにもかかわらずブリーダーがそれに言及しなかった場合、そしてもし後に悪性のものに変わっていった場合、ブリーダーはたとえ隠された疾病ではなくとも賠償責任を負う可能性があります(故意に欠陥動物を売ったとみなされるため)。

このような情報ももちろん契約書の「特別な情報」という項目にチェックをつけて、きちんと記されるものです。

北欧スウェーデンの子犬育て③~ブリーダーと交わす契約書!~

これがMさんと交わした契約書。この契約書のフォーマットはスウェーデンケネルクラブから提供される。

当時の契約書には、犬が何らかの理由で飼えなくなった場合、ブリーダーが買い戻しをする、というチェック項目もありました。ここにチェックがついていたら、買い手は勝手に犬を他人に売ってはいけないということになります(ただしこの項目は7年前に削除されています。しかし、ブリーダーがそれを望めば、契約書に記すことができます)。

このような売買契約書は、おそらく日本のペットショップと買い手の相手との間になら交わされているのかもしれません。とはいえ、実は子犬は健康ではなかった、ということが家に連れてしばらくしてから判明するなど、ペットショップと飼い主とのトラブルが日本では決して珍しくない、と聞いています。スウェーデンの場合、前述したようにホビーブリーダー、商業的ブリーダーに関わらず、同様に多くの責任が求められています。よって契約書を交わすことで、ブリーダーも飼い主もどちらにとってもメリットがあるという状況になっていることがわかるでしょう。

もう一つこの契約書の優れている点は、ブリーダーが一旦犬を売ったら、それは飼い主のものであり、契約書に記されていない限り、あれこれとブリーダーが制約を押し付けることはできないということ。そのために、もしブリーダーが売った子犬を将来繁殖犬として使いたい場合は、その旨を記した契約書をあらたに作る必要があります。これらいずれの書類もケネルクラブのウェブサイトから、ブリーダーが無料でダウンロードすることができます。

契約書にサインをして、さらに今後私が引き継ぐべき犬の保険会社への申込書をもらい、いよいよ子犬を家に連れて帰ることに!

この続きは次回までお楽しみに〜。

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藤田 りか子(ふじた りかこ)

ドッグ・ジャーナリスト。レトリーバー二匹と自然豊かなスウェーデン・ヴェルムランド県の小さな村に在住。スウェーデン農業大学野生動物管理学科にて修士号を得る。犬の繁殖管理や福祉の先進国スウェーデンはじめ北欧の犬情報はもとより、ヨーロッパ各地の純血種の知識に詳しい。著者に『最新世界の犬種図鑑』。 現在ノーズ・ワーク(嗅覚を使うドッグスポーツ)に夢中、コンペティターでもある。