2022.06.10一緒に。もっと、

「反省顔」の本心は?犬の表情が伝える本当の気持ちを理解しよう

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「反省顔」の本心は?犬の表情が伝える本当の気持ちを理解しよう
犬はとても表情豊かな生き物ですよね。しかも彼らは眉を上げたり上目遣いをしたりと人間と同じような表情をすることも多く、私たちにより一層の親しみと愛らしさを感じさせてくれます。

犬の豊かな表情はしばしば擬人化の対象にもなり、人間はそこに自分達に馴染みのある感情を結びつけようとします。けれど犬の顔に浮かぶ表情は本当に人間が想像するようなものでしょうか?

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そもそもなぜ犬の表情は豊かなのでしょうか?

「反省顔」の本心は?犬の表情が伝える本当の気持ちを理解しよう
犬は他のイヌ科の動物と比べて表情のバリエーションを多く持っています。2019年と2022年に発表されたアメリカのデュケイン大学の研究では、犬とオオカミの顔の筋肉を解剖学的に比較分析しています。

犬とオオカミの顔面筋の構成を比較したところ、目の周りの筋肉に大きな違いがありました。犬は瞼を持ち上げるための筋肉を持っていますが、オオカミの顔の同じ位置の筋肉は結合組織に囲まれて自由に動かすことが困難です。犬が眉をキュッと上げたり目を大きく真ん丸に見開くことができるのはこの筋肉のおかげです。

もうひとつ犬とオオカミの違いは、犬の顔の筋肉には速筋繊維が多く、オオカミには遅筋繊維が多いことです。速筋繊維は素早く収縮する瞬発力があり、遅筋繊維はゆっくり収縮しますが持久力があります。犬が瞬時にパッと表情を変えることができるのは速筋繊維の働きで、オオカミが長時間にわたって遠吠えができるのは遅筋繊維の働きによります。

顔の筋肉の構成にこのような差が生まれたのは、犬の家畜化の過程で人間が表情の分かりやすい個体を選択的に繁殖させて来た進化の結果だと考えられています。

その犬の「笑顔」は本当に笑っている?

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このように犬の顔面筋の構成はオオカミとかなり違っており、速筋繊維が多い点などはむしろ人間に近いものです。私たち人間が素早くニッコリ笑顔を作ることができるのは速筋繊維のおかげです。犬も笑顔の表情を作ることがよくありますね。

しかし気をつけなくてはいけないのは、一見笑顔に見えるけれど本当の意味は私たちが考える笑顔のイメージとは違う場合もあるということです。
簡単に分類すると目元が柔らかい雰囲気で顔の筋肉(特に口元)がリラックスしている笑顔は「嬉しい」「快適」の笑顔です。

反対に、笑顔に見えるけれど実はストレスを示す表情もあります。目は大きく見開いて白目がのぞいている(クジラ目)、または顔の筋肉がギュッと後ろに引かれて目が細くなっている。口元の形は笑っているように見えるけれど口角にギュッと力が入ってシワがよっているなど、顔の筋肉全体が緊張しているのが特徴です。

白目がチラ見えする丸い目もギュッと上がった口角も可愛らしく見えますが、ストレスや恐怖を感じている時にそれを理解されないことが続くと信頼や愛情は崩れてしまいます。馴染みのない犬の場合、ストレスの表情を笑顔と勘違いして不用意に近づくと攻撃を誘うこともあるため注意が必要です。

「反省」や「ごめんなさい」に見える表情が意味すること

「反省顔」の本心は?犬の表情が伝える本当の気持ちを理解しよう

SNSや動画サイトに溢れている犬の表情の読み間違いの代表的なものは、何か「悪いこと」をした犬が反省や謝罪の表情を見せるという場面です。

例えば飼い主が外出から戻ると犬がゴミ箱の中身を散らかしている、あるいは家具が壊れているのを発見。犬は飼い主から視線を外し、耳をペションと倒し頭を低くして部屋の隅っこに座っています。目は筋肉に引っ張られて細くなっているかクジラ目になっているかもしれません。これらは全てストレスや混乱を示す表情や行動です。

「ダメでしょう!」と叱ると、自分の唇を舐める、あくびをするといった行動をするかもしれませんが、これは自分自身または飼い主さんを落ち着かせようとしているシグナルです。
犬は散らかったゴミ箱と飼い主さんがいつもと違う様子になっていることの因果関係がわかりません。なんだかわからないけれど目の前の飼い主さんが怒っているので混乱してしまったり、落ち着かせようとしていると考えられます。

犬に反省や謝罪に近い感情がないとは言い切れませんが、今のところそれを裏付けるような証拠はありません。犬を叱っても行動は変わりませんから、問題になるような行動を起こさないための工夫が重要です。

おわりに

「反省顔」の本心は?犬の表情が伝える本当の気持ちを理解しよう
犬は目の周りの筋肉が発達しており顔面筋の速筋繊維が多いために、人間のように素早く様々に表情を変えることができます。その表情の豊かさが人間とのコミュニケーションに役立ち、犬と人間の特別な絆を作り上げて来ました。

一方で、犬が見せる人間くさい表情のために必要以上に擬人化してしまう場合があり、犬の本当の感情がないがしろにされてしまうことも起こりがちです。

犬は言葉を話すことはできませんが、表情や仕草でコミュニケーションを取ってくれます。人間側の誤解や思い込みで犬を混乱させたり信頼関係を損なってしまっては、こんなに残念な事はありません。より良いコミュニケーションのためと思えば、犬の表情や仕草のサインを勉強するのも力が入るのではないでしょうか。

《参考URL》
https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.1820653116
https://phys.org/news/2022-04-reveals-science-irresistible-puppy-dog-eyes.html

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ガニング 亜紀(ガニング アキ)

米国カリフォルニア州在住。2005年から犬との暮らしをスタートして2匹の犬をそれぞれ15歳で見送りました。犬たちとの16年間で知識が増えると犬との暮らしが楽になることを痛感しました。自分が「へ〜!」と感じたことを堅苦しくなくお伝えしていきたいと思っています。