2018.11.06一緒に。もっと、

犬は思っているほど賢くないなんて誰が言ったの?

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ボーダーコリー

今年の9月に、犬に関するある論文が発表されて、雑誌や新聞などのメディアでそのことがたくさん取り上げられました。

メディアで取り上げられた時の見出しの多くが、犬を愛している人なら「ちょっと聞き捨てならない」というもので、各メディアのサイトのコメント欄ではちょっとした炎上騒ぎがちょこちょこ起きていました。

どんな内容の見出しだったのかと言いますと、サイエンス関連のメディアでは冷静な論調で、以下のようなものでした。

「犬は特別に賢いというわけではないが、彼らは特定のスキルを持っている」
「他の動物に比べて、犬が“例外的に知的”というわけではない」

しかし一般的なメディアはもっと刺激的でパッと目を引く見出しを付けたがるものです。
(かく言う私がこの記事につけているタイトルもそこを狙っているとも言えますね。)

前述したような「ちょっとした炎上騒ぎ」が起きた記事の見出しは次のようなものでした。

「あなたの犬は鳩よりも賢いわけではないかもしれない」
「あなたの犬はあなたが思っているよりバカかもしれない」
「犬は今まで科学者が考えていたほど知的ではない」

これは確かに犬に対して失礼な感じですね。
論文の内容をご紹介しつつ、犬と他の動物を比べること、動物の知能について考えてみたいと思います。

他の動物と比較した犬の能力

トピックの論文はイギリスのエクセター大学とカンタベリー・クライストチャーチ大学の研究者により、過去に発表された犬や他の動物の認知能力に関する300以上の研究を再検証して、犬と他の動物を比較した結果が発表されたものです。

テーマに上がった認知能力は『総合的な学習能力』『視覚、聴覚、嗅覚などの知覚機能』『空間認知能力』『他者の意図や性質を理解する社会認知』『自己認識』です。

犬の総合的な学習能力については、一定の条件と結果を関連付ける能力を示す数多くの研究があります。一方、犬以外の動物でも野生動物から家畜動物まで条件付け学習が成立した例がたくさんあり、犬だけが例外的に学習能力が高いという証拠になる研究はありませんでした。

知覚機能では、犬の嗅覚や聴覚が優れていることはよく知られていますが、他の動物にも同じ程度の能力が数多く認められ、犬だけが特別な知覚機能を持っているというわけではありませんでした。

動物が、自分が置かれている位置を理解するための空間認知能力も犬は優れていますが、他の動物でも同様の能力を示す研究結果がたくさんあります。

他者の意図や性質を学んで理解し働きかける社会認知では、犬と同等かそれ以上の社会認知能力が研究によって確認されているのはオオカミだけだそうです。

しかし犬の場合、全く異種の生き物である人間の行動や表情を読み取るという点では特別と言えます。

社会認知では、他者への理解を利用して他者をあざむいたり共感を示すかどうかという、より複雑なテーマがあります。犬はこの点で高い能力が認識されていますが、チンパンジーは犬よりもさらに複雑な感情を処理するより高い能力が認められています。

自己認識については、犬や他の多くの動物は鏡に映った自分の姿に反応を示しませんが、イルカやチンパンジーは鏡に映っているのが自分であるという認識を示すことがわかっています。

つまり、過去の様々な研究を再検証すると、犬が持っていると認められる高い能力は他の家畜動物や野生動物にも認められており、犬の能力が他の動物に比べて例外的と言うわけではないことが改めて分かるということです。

どうして多くの人が「犬は特別」だと考えるのか?

人のために働く犬

このように、発表された論文の内容は「個々の認知機能について犬は高い能力を持っている。そして他のさまざまな動物にも犬と同等またはより高い能力があることがわかっている」ということでもあります。

前述した一般メディアの見出しのように「犬は思っているよりバカかもしれない」とは誰も言っていません。

メディアの煽りはさておき、他にも高い能力を持つ動物はたくさんいるのに、なぜ人間は犬を特別だと考えがちになるのでしょうか。

それはやはり、犬と人間の距離の近さのせいでしょう。何万年にもわたって人間の側で暮らしてきた犬たちは、先に書いたように全く異種の生き物である我々人間の行動や表情、そして言葉までも読み取って人間のために働くという行動をします。

チンパンジーやイルカが犬よりも高い能力を持っていても、人間は彼らと一緒に暮らすことはできませんものね。

人間にとって犬が特別だと考えることはある意味では当然なのですが、他の動物もそれぞれに高い能力を持っているということを再認識して尊重する気持ちを持ちたいものです。

「犬と○○はどちらが賢いの?」と比べること

犬と猫のツーショット

今回紹介した論文は、犬以外の動物の高い能力はすでに認められていて、犬だけが例外ではないことを改めて知らしめるという大きな意義があります。

けれどそれとは別に「犬と猫はどちらが賢い?」「犬と馬はどちらが利口?」という話題はよく目にします。

そもそも知能や能力にはいくつもの種類があり、生き物はそれぞれの生きる環境の中でそこに適応した能力を発揮しています。全く違う環境で生きる動物の能力を比べる事には意味がありません。

環境学と進化生物学の教授であるマーク・ベコフ博士の言葉を借りると
「犬とサルはどちらが賢いかという問いは、カナヅチとノコギリはどちらが優れた道具かと問うようなものだ」ということです。

他の動物との比較に限らず、巷で見かける「頭のいい犬種ベスト5」などのテーマも同じです。
犬は人間が選択して繁殖してきた生き物なので、それぞれの仕事に適した能力を持っており、皆それぞれに賢く犬種別に順位をつけるのは無意味なことです。

おわりに

先だって発表された、犬と他の動物の認知能力を過去の研究から比較した結果「犬だけが例外的に優れた認知能力を持っているわけではない」という論文と、それに対するメディアの反応から感じたことをご紹介しました。

犬を深く愛している私たちだからこそ、全ての犬、全ての動物を尊重すること、それがそれぞれの動物の福祉を向上させ、住みやすい世界を作ることにつながるのだと心しておきたいものだと思います。

【参考URL】
https://link.springer.com/article/10.3758%2Fs13420-018-0349-7
In what sense are dogs special? Canine cognition in comparative context

すくすく子犬BOX

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ガニング 亜紀(ガニング アキ)

ガニング 亜紀(ガニング アキ)

南カリフォルニアにて、12歳のドーベルマンミックスと11歳のミニピンと暮らしています。2011年から6年間ブログメディアdog actuallyに執筆しておりました。 アメリカのユニークなペットフード事情や、犬の心と体のケアに関する情報の中から日本の犬たちにも役に立つものをお伝えしていきたいと思います。
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