いまからはじめよう!愛犬の脳を若々しく保つ3つの習慣
人間と同様に犬も歳をとると、身体だけでなく精神や認知の機能も衰えてきます。
注意力や学習能力が低下したり、記憶が曖昧になったりと言った症状が出てくるのは人間と同じです。
人間の場合、手先を使う作業や「脳トレ」などのゲームが、脳の認知機能を保つのに一役買うことはよく知られていますが、犬の場合も日頃の生活の中でできる対策があるのでしょうか?
今回は世界各国の研究から、愛犬の認知機能低下を緩やかにするために何歳からでもできる3つの習慣をご紹介します。
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若さの秘訣は日常的なトレーニング
犬の脳の老化や認知機能の低下については世界各国の科学者が研究を続けています。2017年にはウィーン獣医科大学の犬の認知研究者が、犬の加齢と認知機能について心強い内容の発表をしています。
この研究のための実験には185頭の犬が参加し、目の前でおもちゃを動かす、人間がジェスチャーを見せるなどの刺激に対して、犬が反応するスピードと反応の持続時間が観察されました。
犬の年齢が上がるほど刺激に対しての反応が遅くなり持続時間も短くなったのは予想通りだったのですが、同じ年代のシニア犬同士を比べた時に興味深い違いが観察されました。
その違いとは若い頃から何かしらのトレーニングを継続して受けていた犬たちは、トレーニング経験のない犬たちよりも刺激への反応が速く反応持続時間が長かったというものです。
トレーニングはアジリティやディスクなどのスポーツ系、トリックやダンスなどのエンタメ系、ノーズワークなどゲーム系、狩猟や牧畜犬などの職業系など種類はさまざまですが、生涯にわたってトレーニングを続けている犬は脳の認知機能の低下が緩やかだったそうです。
また2つ目の実験として、犬が実験者とアイコンタクトをするとトリーツがもらえるという簡単なクリッカートレーニングが実施されました。セッションは各犬5分間だったのですが、初めてクリッカートレーニングを受けるシニア犬でさえ5分の間にアイコンタクトを覚え数回のうちに上達を見せました。もちろん若い犬よりも時間はかかるのですが、歳をとってからでも新しい学習ができることが示されました。
報酬ベースの楽しいトレーニングはシニアになってからでも脳に良い刺激を与えてくれるということですね。
毎日の散歩が認知機能障害のリスクを減らす
アメリカのワシントン大学では2018年から『ドッグエイジングプロジェクト』という大規模な飼い主参加型の調査プロジェクトを続けています。2021年にはこのプロジェクトから犬の認知機能障害のリスク要因についてのリサーチ結果が報告されました。
1万5千人以上の犬の飼い主に愛犬の身体と認知の健康状態についてのアンケート調査を実施したところ、年齢の他に認知機能障害を発症しやすい高リスク要因がいくつか明らかになりました。
健康状態では、過去に目や耳の神経系疾患の病歴がある場合、発症のリスクが約2倍になっていました。
また犬種グループではテリア、トイ、ノンスポーティンググループの犬は他の犬種グループよりも認知機能障害のリスクが約3倍になっていました。
過去の病歴や犬種を変えることはできないのですが、ありがたいことに犬と私たちが一緒に取り組めるリスク低下要因も示されました。
それは毎日の運動です。飼い主が「活発」と称した犬たちは認知機能障害のリスクが6分の1以下だったということです。毎日の散歩を継続させることの大切がよく分かります。
愛犬の脳を若々しく保つ3つの習慣
犬の認知機能の衰えを防ぎ、心も身体も若々しく保つために大切なことをまとめてみましょう。
- 若いうちから継続してトレーニング
- 歳をとってからでも年齢に合ったトレーニング
- 毎日の運動
ここで言うトレーニングとはしつけではなく、人と犬が一緒に何かをするものです。身近にトレーナーや教室が見つからない場合、オンラインで受けられるセミナーやクラスを活用するという手もあります。犬の生涯を通じて続けることが大切なので、人も犬も無理せず楽しめることが第一です。
散歩の時にも安全な場所でトリーツやおもちゃで宝探しをしたり、毎日のコースに変化をつけたり、可能ならジョギングをしたりと散歩を楽しいものにすることが大切です。犬の最も大切な感覚である嗅覚をしっかりと使うことは脳へのとても良い刺激です。散歩中に犬が安全に匂い嗅ぎを楽しめるよう、よく観察しながら歩きます。
愛犬が散歩に行きたがらない時には無理強いせずに、家でできることを工夫します。庭やベランダでボール遊び、犬用のバランスディスク、家の中のあちこちに小さいトリーツのカケラを隠して宝探しなど、人も一緒に楽しむことで愛犬とのつながりも強くなります。
犬用の知育おもちゃもどんどん取り入れましょう。市販のおもちゃの他にトイレットペーパーの芯の両端を折ったもの、逆さまにした紙コップ、空き箱、紙袋などにトリーツを隠して「取り出してごらん」と思う存分破壊させるのも心身両方の運動になります。
「大切なこの子のために!」とあれこれ考えて工夫することは、人間の脳にとっても良い刺激になりそうですね。
おわりに
犬の認知機能についての過去の研究から、歳をとってからの認知機能障害を予防したり機能の低下を緩やかにするためにできることをご紹介しました。
英語の表現では、晩年のことをゴールデンエイジと呼ぶことがあります。犬生が金色の黄昏時にさしかかった犬の耳が遠くなったり、刺激への反応が遅くなるのは、晩年を穏やかに過ごすためのギフトとも言えます。
けれど認知機能が低下して不安を感じたり、大好きな人のことを忘れてしまうことは防ぎたいですね。
犬の脳に刺激を与える工夫は同時に犬との絆を強くします。全ての年齢の犬の認知機能を一緒に楽しく鍛えてあげてください。
《参考URL》
https://doi.org/10.3389/fnagi.2017.00100
http://hdl.handle.net/1773/47530
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